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2024/5 東北旅行記 ep12:むつ「民宿 小向」に泊まる 強烈な色使いと異様なボリュームに四苦八苦(むつ)


前回のあらすじ

いろんな最北端を巡って恐山に行った。

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本編

●レトロとデジタルが混在した「民宿 小向」に泊まる

旅行もいよいよ最終盤。宿に泊まるのも、最後である。その最後の宿に選んだのが、むつ市の「民宿 小向」。不必要にメルヘンなカラーリングと外装をした、異様に目立つ民宿である。

とにかく目立つ

予約時にインターネットで外観は見ているので色味は理解していたが、実物を見るとやっぱりどぎつい色である。車を止めて中に入ると、いきなり検温マシーンがお出迎え。「マスクをしていません」みたいなことを機械音声に言われて若干ピリつく。指名手配犯のポスターが張ってあるのも緊張感の高まりを助長している。

レトロなんだか今風なんだか分からない受付
Wi-Fi完備なのはうれしい。電波もちゃんとしていた

いつまでたっても誰も来ないので、呼び鈴を鳴らした。すると声の高い女将さんが2階から登場。しっかりとマスクをしている。宿帳へ名前を書くように指示される。レトロである。宿帳なんて生まれて初めてかもしれない。

書き終わるや否や、暖房をどうするか聞かれる。どうもエアコンをつけるには暖房費として別料金が必要らしい。特に厳しい寒さの日でもなかったため、不要と答えてカギを受け取り、部屋にチェックイン。ドアを閉めると「就寝時は消灯」「出かける際はエアコンテレビ照明をオフにせよ」といった掲示が目に入る。小規模経営のため、こうした細々した節電が重要なのだろう。あと「寝タバコ禁止!!」のインパクトもすごい。

部屋はこんな感じ

●絞っては拭き、拭いては絞る無限ループ

チェックインは17時30ごろ。食事は18時半だったか、時間を指示されたのでそれまでに風呂を済ませる。風呂は男女別で、男性は受け付けや食堂のある本館、女性は別館。

男湯はシャワーが確か2つか3つ。シャンプー類がおざなりなアメニティ系ではなく、市販のものをいくつかそろえていたのは好感。一方で、過度に汚いということはないが、浴槽のフタにさびなのかカビなのか分からない汚れがしっかり目についていたので、清潔感を何よりも求める人には気になるかもしれない。

湯加減はやや熱め。烏の行水を終えて脱衣所に戻り、事件が起こった。

備え付けのバスタオルがないのである。ま、考えてみりゃ当たり前だ。先日男鹿で宿泊した同じく民宿の亀屋旅館はバスタオルがあったので勘違いしたが、1泊当たりの料金は向こうが倍で1.2万ほど。一方のこちら、民宿 小向は6000円ほど。いわゆる民宿としては、こちらの小向の方がスタンダードな価格帯である。

当世風の宿・ホテルに甘やかされてバスタオルなぞもってきていないので、仕方なく部屋にあった小さい手ぬぐいタオルを駆使して体の水分を拭きとっていく。ちょっと拭いてはタオルを思いっきり絞り、また拭く。

しかし完全にはタオルの水分を絞り切れないので、若干濡れたまま拭くことになり全然体が乾かない。もっと若ければ、肌が撥水してくれたのに。何度諦めようかと思ったか。10分くらいかけて何とか拭き切った。ちなみにこの手ぬぐいタオルも、素泊まりの場合にはもらえないらしいので要注意。夜にチェックインした他のお客さんが嘆きの声をあげていた。

バスタオルはないが、ドライヤーはある。共用トイレのところにある洗面スペースに数台置いてある。風量はまあまあ。共用トイレは男性用の小便器がある半個室が一つ、あとは洋式水洗個室が3つ。この3つの個室、確かウォシュレットのメーカーがそれぞれ違い、一番奥がTOTOだった気がするがおぼろげな記憶なので間違えていたらすみません。

●民宿の醍醐味、夕飯は期待をはるかに上回る量と質

髪も乾かし、夕食の時間を待つ。なお、まだ八戸の朝市で買った唐揚げは残っている。しかし夕食をいただく前に唐揚げなんか食ったら大変なことになるので手を付けられない。困った。

時間になったので、食堂へ。私共のほかには、近隣の工事かなんかを担当していると思われる会社の人たちが7~8人ほど。さすがに10卓ほどあるスペースに夫婦2人だけで食事するのは寂しいので、他の宿泊者がいて良かった。

品目が多すぎる

宿に泊まる上で最上級の楽しみである夕食。その期待に応えて、いやそれ以上にボリュームのあるラインナップが並んでいる。ふきの煮物みたいなのにポテサラ、ちくわきゅうりとたこ&もやしのナムル、山芋いくら。前菜的ポジションだけで盛りだくさんである。

さらにメインは焼き魚にとり天、ほたてとタコ刺し身に加えて、青森名物のホタテの貝焼味噌。これはホタテの貝殻に野菜やホタテ、エビが乗っており、卵を溶いて熱していただく。

貝焼味噌
ごっついアラが入った味噌汁

この他に、たらの身やあらがたっぷりと入った味噌汁と、ご飯。ちなみにここのご飯は自家製米を使っており、おかわりも自由。これだけおかずがあったらどれだけ米があっても足りないので助かる――と思ったのだが、調子に乗って何倍も山盛りでおかわりしたので死にかけた。

あまりに品目が多すぎて、かつおそらく女将さん一人で支度しているので焼き魚が冷めてしまっているのはご愛嬌といったところだが、どれもうまい。いくらもホタテもタコも、こんなにたらふく食べられるのはうれしい限りである。なお私は性格が悪いので卓上にあった調味料の賞味期限をチェックしたが、まだまだ期限には遠く、しっかり管理されていることがうかがえる。

他の宿泊者たちは連泊なのだろう、私たちとは異なるメニューで複数人で鍋をつっついていた。そちらもうまそうだし、かなりのボリュームがあるように見受けられた。中には焼酎を持ち込んで、同僚に振る舞っている人もいるなど民宿生活を楽しんでいるようだ。

食べられる量にはかなり自信がある方で、しっかりとコンディショニングしたうえで着席したが、スーサイドおかわりでかなりダメージを食らい、完食までかなり時間がかかり、這う這うの体で平らげた。調子こいて廊下の自販機でビールを買ってちびちび飲んだのも効いた。

しかもこの日の夕飯はこれで終わらないのである。そう、朝市で買った唐揚げが私に食われるのを今か今かと部屋で待っている。そのプレッシャーも、夕飯時の私にかげを落としていた。腹パンで部屋帰着即布団インして、そのままふて寝しようかと何度思ったか。それでも唐揚げを裏切るわけにはいかない。何とか気力を振り絞り、寝る直前にパクっと行った。これが美味いんだ。また八戸行ったら買おう。

●ビビッドな朝食

いよいよ最終日の朝を迎えた。朝食もしっかりした量が出てきた。ホッケに温玉、刻んだ山芋に漬け物。切り干しにコロッケ、ベーコンに加えて珍しいのが、菜の花のおひたしである。前日に訪れた菜の花畑を思いながらいただく。

朝食の顔ぶれ

それにしても菜の花の黄色に漬け物のビビッドな赤、ベーコンのピンクと色とりどり過ぎやしないか。建物の色といい、鮮やかな色づかいを見せてくれる宿である。そういや『ビビット』って朝の情報番組があったな。何で真矢みきがMCだったんだろう。

夕食と違い、野菜系が多いのでこちらはあっさりと平らげられた。昨晩の反省を生かして、米を控えめにできたのも大きかったと思う。

部屋に戻り、布団を畳んで今日は青森駅へ向かう。お世話になりました。何もかも忘られないよ。

本日はここまで。そろそろこの旅行記も終わりが見えてきた。

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