2024/5 東北旅行記 ep6:おっさんと根比べ(山形市内観光)
前回のあらすじ
馬の股間、ロングサイズ
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本編
●文翔館を閲する
馬の股間を見て、どら焼きを食って、まだまだ山形観光は終わらない。次は「文翔館」なる山形県の郷土館へ。もともと県庁舎・県会議事堂だったという建物。
こういう昔の建造物を残して、中を見学できたり、歴史資料があったりする観光施設は結構ある。その中でもこの文翔館は、結構広く、そして展示内容も面白かった。
例の水前寺清子的な、3つ学んで2つ忘れる脳の働きにより文翔館で学習した内容は忘れてしまったものの、明治期以降の何やらかんやらがいろいろあって、私の興味は明治よりこっちにあるので、興味を失わずに閲できた。
特に私の興味がある(といっても詳しいわけでは全くない)昭和初期~戦中戦後辺りの資料もチラホラ。「進め!一億火の玉だ!」という伝説級のバカ標語とともに、「一億が同じ苦労だ親切感謝」だとか「この一戦何がなんでもやり抜くぞ」とか非常にばかばかしい標語が並んでいる。全くこんな時代の狂気性を感じざるを得ない。
●山形で科学を楽しむ
文翔館を一通り見たら、七日町など山形市内の中心部へ。それにしても百貨店の規模が小さかったり、(平日の昼日中とはいえ)街中に人が少なかったりとうら寂しさを感じざるを得ない。
そんな山形タウンで気を吐いていたのが、霞城セントラルなる施設である。山形駅直結で2001年にオープンした地下2階、地上24階からなる建造物で、とにかく活気があった。それもそのはず、ゲームセンターに映画館、ホテルに飲食店、最上階には展望室と、かなりのエンタメ要素がそろっている。夕方に訪問したこともあり、学校帰りの学生も多く賑わいを感じた。
特に面白かったのは、山形県産業科学館。無料で入れて、県内企業の技術紹介や、社会科見学にうってつけな、サイエンスを身近に体験できるさまざまなアトラクション的なものがある。フーコーの振り子があったり、手漕ぎ発電機を使ったミニチュアカーレースがあったり、でっかいシャボン玉に入れるマシーンがあったり。
●「山形おしょうしな」「五十番飯店」で飲み食い
童心に帰ってサイエンスの世界を楽しんでいたらあっという間に時間が過ぎた。この日は18時だか18時半だかに店を予約していたので、向かう。
訪問したのは「山形おしょうしな 総本店」。これでもかと地酒の看板を集めた外観が壮観な店である。
店内は奥に細長く、入り口近辺にカウンター、奥はテーブルいくつかと座敷席。天井から照明とともに日本酒の空き瓶がぶら下がっている。落ちてくるはずはないが、そうはいっても何となく不安。思えばこのスリリングなインテリアのおかげで、そこそこ飲んだものの正気を保っていられたかもしれない。
まず飲み物を注文したら「お通しです。おかわりも無料です」と、キュウリににんじん、大根の野菜スティックが供されてたまげた。しかも塩だけでなく、マヨネーズや自家製の肉みそ付きときたもんだ。
その他、刺し盛りに芋煮、揚げ物に焼き物などをたらふくいただき、地酒もいただいた。地酒は「鯉川」「三百年の掟破り」。いずれも満足であった。
おにぎりで〆た後は、宿への帰りしな「山形五十番飯店」で〆直し。チンタオビールと冷やしラーメンでダメ押しをして、帰投した。冷やしラーメンってなんでこんなにうまいのか。フーフーする必要がないのもいい。できたて・アツアツ信仰に対抗する心構えがいい。
小学生のころ、よく父親と行っていた幸楽苑で、夏になると食べていた。あの頃の思い出がよみがえる味だった。
●おっさんと根比べ
例のごとく鯨飲馬食して本当はすぐ寝たかったのだが、この日はコインランドリーを使いたかった。しかし、運悪く宿に戻って確認すると、2台とも使用中。224の客室に対して2つだけって少なすぎやありませんかね、ホテルメトロポリタン山形さん。
ただ、不幸中の幸いか、10分後に終了する1台あり。この好機を逃すわけにはいかない、とテレビにかじりついて待ち、時間が終了したのでコインランドリーへ向かうも、まだ取りにきていないのでいったん部屋へ戻る。
しかし、テレビでリアルタイム状況を確認していてもず~~~っと「使用不可」の状態が続く。いつまでたっても洗濯物を取りにきやがらねえのだ。ナメてやがる。2つしかないコインランドリーで、多くの人が宿に帰ってくるであろう午後10時ごろ。どんな神経をしていたら放置できるのか。
とイラだっても何も解決しないので、フロントに連絡。いったん中のものを回収してくれるらしいので、よかったよかったと思って再びコインランドリーに向かったら! 先客がいた。
このときのやるせなさたるや、ない。だって私がフロントに連絡したのに。それなのに、このままでは、自らこの局面を打開しようとせず、ただ受動的に首を長くして待っているだけのこのおっさんが僥倖なだけになってしまう。そもそもさっき最初にここに来たときは誰もいなかった。だから順番でいえば私の方が先のはず。でもどうしようもない。はあ。
とか思っていたら、何とこのおっさん、終わりのない耐久戦と見て怖気づいたのか、帰った。そしてほとんど入れ替わりに、フロントの人が来て、飼い犬の糞を回収するかのように、厳重にポリ袋を裏返しして、ホカホカの洗濯物を取り込んでくれた。
この間、生きた心地がしなかった。なぜならさっきのおっさんが再び襲来して「俺の方が先に待ってたんだけど」とか言い合いになりかねないから。
果たしておっさんは戻ってこなかった。その代わり、洗濯物を放置していた不逞の輩がヘラヘラしながら来た。舌打ちの一つでもしてやろうかと思った。しなかった。ミスは誰にでもあるから。洗濯物より一足先に、私の心は安堵感に漂白されていた。
今回はここまで。次回は山形~秋田編を予定。