2024/8 中欧旅行記 ep19:最終夜、海底撈月
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白くまくん、お前もか
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本編
●ラスヅモ、どうするか問題
白くまくんの裏切りにより3日連続で灼熱の夜をエアコンなしで過ごすことが決定した。落胆している暇もない。晩飯を食いに行かないと行かん。腹減った。
もともと目を付けていたピザ店へ。しかし満席。目当てはここだけだったので、いきなり途方に暮れてしまった。どうしよう。まあ店は多い。取りあえず街を歩きながら探すことにする。
しかし、確たる「これが食いたい」という狙いもなく歩いていては店は見つからない。いや、店はあるのだがどれもピンとこない。今、何が食いたいか。脳内で会議を開いても答えは出ない。安パイは和食。いや、でも海外旅行の最終夜にわざわざそれを食うか?
そう、「旅行最終夜の飯」ということも頭を悩ます要因であった。もしここでとんでもない無駄ヅモをしてしまえば、この旅行すべての思い出が水泡に帰し、何というチョイスをしたのだという虚無だけが残る。そのプレッシャーもあり、なかなか決まらない。
●続々と減っていく牌、棒のようになっていく足
気が付けば1時間ほどは歩いたろうか。横丁的な店がいっぱい立ち並ぶ区画があるも、どれもピンと来ずスルー。ラーメンもスルー。正直、自分が何を食いたいのか本当に分からん。まあ、強いていえば肉を食いたいかもしれん。
そこで考えを変え、肉を食うことを基本軸に、コストパフォーマンスの高そうな店、という条件を加える。これまで別に価格を気にしたことはなかったが、あえて縛りを設けることで強制的に店をチョイスできるようにするわけだ。
というか、そうでもしないとヤバイ。最後の日ということもあり蓄積した疲労とともに歩き疲れで足はかなり限界状態。だらだら歩いて時間を空費してしまい、閉まる店もチラホラ出てきたため、このままだと無駄ヅモどころかツモれない可能性すらあると感じ始める。昨日のケバブの悲劇が脳裏をちらつく。さすがに2日連続で悲劇は起こせない。
ということで、歩いて探す的な情緒を全て抹殺して、天下のGoogleマップを駆使することに。その結果、歩いて5分ほどのところにParisi 6なる良さげな店を発見。やっとそれっぽい店が見つかった安堵感に胸を膨らませ、かつもし満席だったらどうしようという不安も抱え、歩を進める。まあ、こういうときのチョイスでチョンボしたことはほとんどないので大丈夫だろう。自分の嗅覚を信じるのみ。
●海底撈月、成る
着いた先は、やけにネオンが目立つ店。大丈夫かこれ? 東京基準だと外れっぽい。とにかく雰囲気があって安くて若者でにぎわってるけどめちゃくちゃ酒が薄い、飯も既製品っぽいのばっかりな店、みたいな。まあ入ろう。運よく席は空いている。
しかし、案内されたのが結構奥の方の席でなかなか注文を取りに来ない。目くばせしようにもこっちを見る気配がない。うーん、大丈夫でしょうかこれは。大きくなる不安を押さえつけて、何とか店員を呼んで注文。あまり観光客向けではなくジモティー用の店なのか、あんまり英語が通じなさそうに感じる。
頼んだのは、24時間だかなんだか忘れたけど長時間、低温調理した豚肉のグリルと、豆類のサラダ。そしてグヤーシュ。注文してからの待ちが長い。ただ、両隣の席に運ばれてくるメニューを見ると、めちゃくちゃ旨そう。
15分ほど待ったろうか、やっと到着して即座に食い始める。それほどに疲れ、腹が減っていた。豚はグリル感が香ばしく、そして長時間の低温調理ということで柔らかい。これはうまい。
豆のサラダはマスカットとかが入っていてかなり洒落仕様。いろいろと食感が楽しめる。グヤーシュは、ブダペスト2日目にジェルボーって店で食ったのに近いタイプで具沢山。これもうまい。やはり自分の嗅覚、ツモ運はまだ錆びてなかったようで一安心。さながら海底撈月。まだこの旅行で飲んでなかったトカイワインも1杯飲んで、大満足。
●ブダペストの小池百合子が情緒を大破壊
店を出て、ドナウ川辺へ。2日目夜のクルーズ後は精魂尽き果てていたので、夜景もへったくれもなくマッハでホテルに帰ったので、その埋め合わせとしてぶらぶらと歩きながら、最終夜の感傷に浸る。
――つもりだったのだが、国会議事堂が普通のライトアップではなく無駄にプロジェクションマッピングをしていたり、いきなりドローンを出して爆音を立てながら周囲を撮影する奴がいたりと滅茶苦茶だった。どこの国にも、不必要にプロジェクションマッピングをやろうとするやつはいるんだな。
ま、あらかた満足できた。何より最後のメシでミスらなかったのが本当に良かった。素晴らしい気分でホテルに戻り、白くまくんの裏切りによってあまりにも不快すぎる蒸し暑さの部屋に現実へ引き戻された。
窓を開けて寝ざるを得ないのに、ガッツリ大通り沿いなため、暑さに加えて騒音の二重苦。さらにベランダが横の部屋とつながっているので、隣の宿泊者が邪悪なお兄さんだったらどうしようという恐怖の三重殺。うつらうつらとしているうちに、朝を迎えた。
今回はここまで。いよいよ日本に帰ります。