『プライバシーサンドボックス』:DXデイリーワード
用語
プライバシーサンドボックス (Privacy Sandbox)
分類
ビジネス/サイバーセキュリティ/ネットワーク
要約
ブラウザ上での広告やユーザー追跡の方法を安全に進化させるGoogleの取り組み。個人情報を守りながら広告配信を可能にする技術群。
解説
Googleが進める「プライバシーサンドボックス (Privacy Sandbox)」は、主にウェブブラウザ(Google Chromeなど)でのユーザー追跡や広告配信の仕組みを見直し、個人情報をより保護する新たな技術や規格を提案する取り組みです。たとえば、従来は閲覧履歴をもとに個人を特定しやすいサードパーティCookieを利用し、ユーザーの興味や行動を詳細に把握して広告を配信していました。しかし、近年は個人情報保護への関心が高まり、情報の取り扱いに対する懸念が強まっています。
「プライバシーサンドボックス」では、第三者がユーザーのブラウジングデータを直接取得するのではなく、ブラウザ自体が興味や嗜好をまとめた情報を大まかに生成する仕組み(Topics APIなど)を検討しています。こうすることで、企業(たとえば楽天やYahoo! JAPANなど)が「ユーザーの興味関心」を踏まえた広告を配信しやすくなる一方、個人を特定できるほど詳細なデータを渡さなくて済むようになります。
また、興味や嗜好をブラウザで処理することで、ユーザーのデータが他社に渡りにくくなるメリットがあります。その結果、ユーザーとしてはプライバシーが守られると同時に、企業側も広告の精度を保てるわけです。一方で、広告業界やウェブ媒体にとっては大きな技術的・運用的変化を伴うため、Googleはウェブ業界全体で協議を進めながら段階的に導入を試みています。
すでに「サードパーティCookieの段階的廃止」をGoogleが発表しており、例えばAmazonやFacebookといった大手プラットフォーマーも、プライバシーを考慮した広告サービスの改良を加速しています。今後は、広告技術だけでなく、データを扱うあらゆる企業に影響が広がることが予想されます。
関連トピック
「プライバシーサンドボックス」の実装には、ブラウザベンダーや広告関連企業間での調整が欠かせません。FirefoxやSafariなども、それぞれ独自の追跡防止機能を強化しており、ウェブ全体でのプライバシー保護が大きな潮流となっています。これにより、広告主やウェブサイト運営会社は、ユーザーのデータをただ取得するだけでなく、いかにユーザーの信頼を維持しながら広告効果を高めるかを再考する必要があります。
例えば、航空券やホテル予約サイトではこれまでサードパーティCookieでユーザーの行動を追跡し、適切なタイミングで広告を提示していました。今後は、こうした広告の出し方が変わり、ブラウザが生成するまとめられた興味情報などを活用する形へシフトすると考えられています。たとえば、あなたが旅行サイトをよく見るという情報が「旅行関連の興味」としてブラウザ内に保存され、広告配信を行う企業(旅行会社やホテル予約サービスなど)に利用されるイメージです。これによってユーザー一人ひとりを特定することなく、よりプライバシーに配慮した広告出稿を可能にします。
また、インターネット広告全体の仕組みの変革にもつながるため、ウェブ解析ツールや広告配信プラットフォームを提供する企業も対応を急いでいます。ディスプレイ広告やリターゲティング広告など、今までの業界標準が変わる可能性が高く、その対応策として「プライバシーサンドボックス」に即した新しい技術やサービスの提供が始まっています。
関連用語
サードパーティCookie: ウェブサイトとは別の第三者企業(例: 広告会社)が発行するCookie。ユーザー追跡などに利用される。
Topics API: Chromeが提案する新しい広告関連API。ユーザーの興味カテゴリをブラウザ側でまとめ、サイトや広告主と共有する仕組み。
リターゲティング広告: 一度商品やサービスを閲覧したユーザーに、追いかけるように広告を表示する手法。
ブラウザベンダー: Chrome(Google)、Safari(Apple)、Firefox(Mozilla)などブラウザを開発・提供する企業。
広告配信プラットフォーム: Google AdsやYahoo!広告など、企業が広告を出稿できる仕組みを提供するサービス。