「あつあつな価値」を届けるためにデザイナーがやれること。|キッチハイクごはん談義 vol.1
地域創生事業を「食と暮らし」の領域で発明・実装するキッチハイク。
食べることが大好きなメンバーがみんなで食卓を囲み、おいしいごはんを楽しみながらさまざまなアイデアやコミュニケーションが活発に交わされるのが会社の日常風景のひとつです。
今回はキッチハイクのインハウスデザイナー 狩野真由子さんと業務委託デザイナー小木曽槇一さん(どちらも食いしん坊)が、湯島にある「鉄鍋荘」にて、あつあつの鉄鍋を囲みながらキッチハイクのデザインチームのあれこれを語り合いました。
人物紹介
キッチハイクのデザイナーとは?
こぎそ:今日はキッチハイクのデザインチームについて、半年前にジョインしたぼくの観点からいろいろと聞いていっちゃいますね。既においしそうな料理がテーブルを埋め尽くしているので気が散りそうですが、ごはんも楽しみながら話しましょうね。
かの:よろしくお願いします。気が散らないように精進します。
こぎそ:この数ヶ月見てるとかのさんってキッチハイクの中でデザイン領域のみならずいろいろやっている感じがありますけど、具体的にどんなことをやっているか聞いてもいいですか?
かの:今の業務のメインとなっているのはキッチハイクが開発している自治体向けに関係人口を分析・可視化するSaaS「つながるDX」におけるデザイン業務です。UIデザインをはじめ、ユーザーヒアリングや機能要件定義も行っています。またクライアントに向けたプロダクトの活用提案、企画の運営といった業務もさせてもらっています。
こぎそ:なるほど。プロダクトを作るだけではなく、ユーザーに提案したり、活用に向けて伴走したりするところにも関わっているんですね。
かの:そうなんです。あとキッチハイクは社内に複数の事業が存在しているので、各事業で人手が必要になった場合に飛び道具的に動くこともあります。LPのデザインディレクションだったり、EC事業の社内管理システムの設計・実装だったり。
肩書きとしてはデザイナーなんですけど、スタートアップ初期のデザイナーのような、肩書きにとらわれない役割で経験を積ませてもらってます。
職種に縛られない自立自走なデザイナー像
こぎそ:デザイナーとして幅広い範囲に関わるのみならず、デザイナーの範疇を飛び出していろいろやっている感じなんですね。なぜそのような動き方になっているんですか?
かの:社内で行っている事業を推進することを考えて動いたら自然とそうなっていたという感じかもしれないです。デザイナーだからこの領域をやるという考え方ではなくて、事業の成長に求められている領域で自分でもできそうであればすかさずやる... といった感じですかね。
こぎそ:いいですね、僕の所属している会社でも「デザイナーは自身の責務(インターフェース品質への責任)を果たすためなら、どんな成果の出し方をしてもよい」というミッションのもと、職能に囚われずデザイナー各人がそれぞれのやり方で事業にコミットしていってます。
個人としても、デザイナーだからと役割を閉じずに、どうやって事業に貢献していくかを常に考え、動く必要があると感じていますが、「事業推進」という観点でデザイナーが動けるのはすごく良いと思いました。
かの:キッチハイクには自身の職種や肩書きといったものに縛られず柔軟に動いて事業にコミットしている人が多いイメージがあります。「大きな方針さえ合っていて、その実現につながるならばどんなアイデアでやってもOK」という会社のカルチャーがあるので。
例えばこの鉄鍋のお店で、「世界一の鉄鍋を作って客に喜んでもらう」というチームとしてのゴールがあったとします。その場合、仮に自分がシェフじゃなくとも、最もゴールに繋がるインパクトが出せるのであれば、自分の職域を超えて食材調達、下準備、調理、盛り付け...どの工程にコミットしてもいい。隠し味を加えたり食事の場を盛り上げたり…といったスタンドプレーも歓迎されるイメージです。
個人のスタンドプレーが歓迎されているということは、全員が結果に適切な責任をもつ裏返しだとも思っています。アクションが結果にコミットする精度や、アクションによって何が得られるかを常に意識する土壌がしっかり根付いている印象がありますね。
特にデザイナーはデザインとして具体的な「アウトプット」を作りやすい職種だと思うのですが、つくったものが「アウトカム=数字」に本当に繋がるのか、妥当性を常にはっきりさせておかねばと思っています。
こぎそ:わかります。アクションを起こした先の状況を常に意識する必要があって、アクションを求められている背景と目的を見定めた上で、何をすべきか考えないといけない。
僕たちプロダクトデザイナーがつくりたいのって単に美しい・きれいなデザイン.. という訳ではないと思うんですよ。それを意識できる環境は、めちゃくちゃいいことですね。
「矛盾を両立させる」全く新しい価値を、どう伝えるか
かの:さきほど会社のカルチャーのお話をしたんですけど、他にも語録としてたくさんメンバー内に浸透してるものがあって。その中で私が好きな文が、「トレードオフに考えない」「矛盾を両立させる」という価値観です。
一見「Aを叶えようとするとBを諦めることになってしまう」というトレードオフに見えても、捉え方やアプローチ、議論の前提など様々な視点を変えることを通して、「そもそも片方を諦める必要あるんだっけ?どちらも叶える方法ってないんだっけ?」をとことん考え尽くすという姿勢です。
ただ、これまでずっとトレードオフだと思われてきたことを全く新しい切り口から解決する提案になるので、すごい発明と捉えられるか、よくわからないアイデアと捉えられるかは、実は紙一重だと思っています。考え方をそのまま説明しただけだとわかりづらさ・近寄りがたく感じられてしまうこともあります。
過去の学びとして、キッチハイクがやっていた事業の中には「一度体験すれば価値に気づけるけれど、その価値を他の人にどう伝えればよいかわからない」という声があがっていたなとも振り返っています。
一方で、今のキッチハイクのメイン事業である「保育園留学®️」は、これまで二項対立で語られやすかった「子育てと仕事」を両立させる仕組みが事業となっています。家族で地域に中長期滞在でき、自然豊かな地域で子どもに思い切りのびのびできる経験をさせながら、自分も十分リモートワークができる、というトレードオフが両立している価値が適切に伝わり、利用者が利用者を呼ぶ成長の仕方をするほどターゲット層の共感を得られている成功例もあります。
とても素敵な発明なのに、「うまく伝わらない」だけで価値浸透が止まってしまうのはもったいない。自分達のサービスの価値の真髄を、いかに社外の人々にも届けるか。そして社外の人にも自分ごと化してもらって伝播していってもらうか。
一目みるだけで「そういうことか!」と思える伝え方・伝わり方をデザインできることは圧倒的にデザイナーの強みなので、キッチハイクのデザイナーの腕の見せ所だ!と思っています。
こぎそ:これまでのトレードオフを両立させる全く新しい価値と、それをサービスという形で受け取る顧客の間に立って、価値の伝え方を設計する。そこに貢献できる人こそ、キッチハイクのデザイナーだということですね。
顧客からの反応を直に感じられるキッチハイクデザイナーの強み
こぎそ:ちなみに、キッチハイクって、クライアント(自治体)の方々にとても近い状況にあると思うんですよ。現に、かのさんもクライアントとのミーティングに参加していると話していましたよね?
かの:そうですね。サービスを実際に使っていただいている自治体担当者と直に話す機会は多いです。それだけではなく、導入を検討する商談の場に参加させてもらうことも多いのでとても勉強になります。何が顧客の本当の課題なのか?実際に自分が作ったデザインがワークしているか?何をすれば一番インパクトにつながるか?毎日のように解像度が上がっていますね。
こぎそ:それができてるのってコンパクトなチームで、一人一人がいろんなことができるから、という面もあると思うんです。すごく大変なことではあるんですけど、事業に直に貢献したいと思っているデザイナーにとてもいい環境ですよね。
かの:確かにフィードバックをもらえる機会は多いですね。ちなみにデザイナーでなくエンジニアも、クライアントとのミーティングに一緒に参加しているんですよ。
こぎそ:距離がほんと近いですよね。ある程度大きな会社だと分業されたり、そこの距離を近づけようとしてもなかなか遠くなってしまう。それができるのはすごくチャンスだな...と思いますね。
あつあつを、あつあつのまま届ける。価値が「伝わる」インターフェースづくり
こぎそ:今ぼくが所属しているSmartHRのプロダクトデザイングループの持つ役割は「インターフェース品質に対して責任をもつ」ことなんです。言い換えると、インターフェースに対して最も価値貢献ができるポジションにあります。キッチハイクの中で、デザイナーが価値貢献できるのってどんなところだと思いますか?
かの:その人の強みや得意とする分野によってその人なりの貢献ができる… という価値観が根底にあります。じゃあ今自分自身は何で貢献できているかを考えると、サービスを運営するにあたって生じる様々なインターフェースを最適化し、価値を受け手にしっかり届けて成果を生むことだと思っています。
たとえばアプリケーションの画面や、商談やミーティング時に使う資料やトークスクリプト、さらには社内メンバー同士のコミュニケーションも事業を進めていく上で生まれるインターフェースなので、それらをどんな形にして事業推進に繋げていくかに力を発揮できると思っています。
先ほどの「発明の価値を伝える」の話とも通ずるのですが、サービスとして・プロダクトとして良いものを作っていたり、会社として良いカルチャーをもっていたりするのに、ちょっぴりコンテキストが深いだけでなかなか伝わらないことってあるじゃないですか。言うなれば「蓋をあけて味わってみないとその価値がわからない」状態のものってあると思うんです。
こぎそ:鍋の蓋をあけないと中にどんなおいしい具材が入っているかわからない... といった感じですね。こんな感じにね。
かの:そうそう!そうなんです。(笑)
事業を行うにあたって商品やサービスの価値を伝えようとしたとき、伝え手が「伝えたいこと」と受け取り手が「知りたいこと」ってイコールにならないことが多いと思うんですよね。
伝え手の意図や伝えたい価値を汲み取ったうえで、届けたい相手が知りたい情報に翻訳して届けて、そして実利用に繋げるのがデザイナーの役割のひとつだと思っています。
こぎそ:情報伝達における「摩擦を減らす」といった感じでしょうか。ぼくの経験値で話しちゃうと普段携わっているサービスは、いわゆる業務アプリケーションなので、業務を円滑に推進して、顧客の課題を解決することが第一なんですよね。
「デザイン」と聞くと日本ではビジュアルを整えるといった意味合いがまだ強く残っているかもしれないんですけど、顧客がもつ課題に対してどれだけサービスの価値を最大化できるかを考える役割をもつものだと思うんです。その「最大化」という点で「摩擦を減らす」という考え方はかなり近いのかな?と感じました。
かの:おっしゃるようにプロダクトデザインの分野でも同様のことが言えると思います。ある目的で使われるサービスがあって、その体験の中に画面操作が含まれるのであれば、画面インターフェースはユーザーが目的までに達するための道のりです。そこをいかに歩きやすいものにするかを考えて、目的達成まで滑らかにユーザー体験をつなぐかがプロダクトデザインの役割だと思っています。
すごくよく設計されているものって、もはやそこにあると認識されないくらい自然に場に馴染んでいる一方で、しっかりとユーザーの目的達成を後押しするものだと考えています。そんなデザインができるようになったらいいなと思っていますね。
こぎそ:おいしいお鍋を、食べ手にあつあつの状態で届けるために、なんでもやるといった感じですね。ちなみに真面目な話をしすぎていますが、もう僕らは飲んで食べてます。(笑)
こぎそ:料理の量が多くてこのままだと冷めちゃうのでそろそろシメにはいりましょうか。(笑)かのさんから見て、キッチハイクはどんなデザイナーに向いている環境だと思いますか?
かの:デザインが「事業」の枠組みの中でいちばん価値を発揮するには?を真剣に考えられますし、それを自分が得意な形で実践できる環境です。自分なりの「デザインの力」で会社の事業に貢献したいと思っている人にはおもしろい場所だと思っています!
こぎそ:ありがとうございました。では、心置きなくお鍋いただきましょう!
かの:ありがとうございました!
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