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ならば私は、頑張らない倶楽部

大丈夫倶楽部、という漫画を読んだ。

花田もね、会社員、彼女の部屋がグッチャグチャになっているところから物語は始まる。部屋がうまく片付かず、てんやわんやしているところに現れる芦川と共に「大丈夫」にしていくのが大丈夫倶楽部である。

ハビタブルゾーンという言葉が、この本に出てくる。地球や火星くらいの、生命が活動できる可能性がある範囲のことを言う。自分の周りを住みよい形にする取り組み、それが、大丈夫倶楽部なのである。あと画力がすごい。芦川さんのデフォルメのされ具合と、花田さんが同じ画角に違和感なく収まっている。

デフォルメの度合いが全く違うキャラクターが収まっている漫画として「よつばと」がある。背景や服をしっかり描き込んでいき、顔や手でデフォルメ具合を調整して一つの画角に収める技術がなにかあるのかもしれない。別々の漫画に出てきそうな人物が一つの枠に収まって会話している。すごい技術だ。

そんな中にあって、書き込みの凄い方、花田さんは、学生時代ハビタブルゾーンに絡めて周りを生きやすくする活動「ハビタ部」を作ろうとして頓挫する。ここは、学校活動系の漫画においてすんなり作れたりするが、大丈夫倶楽部においては結構しっかりと頓挫する。先生が話をしっかり聞いてくれた上で、部活動になれない理由を諭される。

しかし、社会人となった花田は芦川との出会いによって再び、名を「大丈夫倶楽部」と改めて活動を始めるのだ。

という漫画を読んで私は思った。

「あれ、私全然大丈夫じゃなくないか?」

部屋、散らかってる。仕事、頑張りすぎ。睡眠は浅く、食事は進まず、更には最近ゲームとか全然できていない。

妻に相談したところ「じゃあ、頑張らない倶楽部でも作る?」と言われた。頑張らなかったことを評価していく倶楽部らしい。妻と私が一つ屋根の下で暮らすにあたり、私が一方的に大切にしているのは「楽に豊かに」という標語である。楽になって、豊かになるなら良いじゃない。というものだ。

そこで本日、頑張らなかったことを発表していきたい。

その一、散歩。これは頑張らなかった。特に今日は妻が「お外に行こう」と言ったが、私は布団に埋もれていた。頑張らなかったポイントとして計上していいだろう。

その二、掃除。これも頑張らなかった。トイレ掃除はかなり適当にやった。床の掃除もそうだ。すぐ疲れてしまい寝転がった。

……このぐらいだろうか。え、これだけか。もっと他に頑張らなかったことがあるように思えるが、休日の今日、頑張らなかったことが二つしか無い。もっと頑張らない活動に気合を入れていかないと、体が持たなくなってしまう。

例えば今私は、座りながらスマホで文字を打っているが、寝ながら書くとか。

ゴロン。ヨガマットの上に寝転んだ。

あ、思い出した。

その三、ランニングしたいところをバーピージャンプで済ませた。運動が大事だということは分かっているのだが、とりあえずぴょんぴょん跳ねることでお茶を濁したのは頑張らなかったポイントだろう。

天井を眺めた。シーリングライトが眩しいので、体を壁に向ける。

先日、再就職したのだが、それから一ヶ月と持たずに長期休暇に入ってしまった。頑張りすぎらしい。頑張れる人もいるのに、私の体は駄目らしい。それが悔しい。高い壁を登るときに、いきなり登ろうとして息が絶え絶えになっているそうだ。何段かに分けて登ればいい、でも私はその段を割る作業も頑張ってしまう。壁にピッケルを突き刺してカツンカツンと突っついて登ろうとする。登れるときもある。時間をかければ大抵登れると思っている。

ただ今回は落ちた。滑落した。普通に朝起きて、仕事して、帰るだけなのに、滑り落ちた。

手持ち無沙汰な時間が不安だ。

何ボーッと立ってんだよ。と、自分で思う。

なにかしなくちゃと、焦る。しかし、特にやることもなく、ただただ時間が流れていく。自分の存在意義が消えていくような、ジットリと湿った時間が怖い。それを必死に埋めていたら、それはどうやら自分の抱えていたカバンに全部詰め込まれていったようで、のしかかって落ちた。

手持ち無沙汰って、どうすればいいのだろうか。うまくサボることができればいいのだが、私はまだその技術がない。適当に過ごす方法や、うまいサボり方については本を読んで参照する。頑張る人ばかりの本を読んできたので、サボる方法についてはあまり学んでこなかった。

頑張りながら大丈夫な状態になる方法を探りつつ、手持ち無沙汰を雑に解消できる方法もどこかで見つけていきたい。力みすぎてうまくいっていないのだ。

環境の、というより、私が私を許してあげられる心地よさを見つけていきたい。

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