なにもない日はお洗濯。
休日は洗濯をする。
あまり広いベランダでもないので、小さな二槽式洗濯機を使っている。一週間分の洗濯物を洗濯機に突っ込み、水を注いでグルグル回す。下着やシャツやズボンをそれぞれのジャンルに分けてからまとめて洗い、順番に干していくとすっかりベランダも埋まってしまう。毎日のようにこれをやっていた母はさぞ大変だったに違いない。
小さい頃は、家に帰ったらまず風呂に直行していた。泥だらけになって帰ってくるので、母としても汚れた服で部屋の中を動き回られるよりは、早く洗濯物としてまとめたかったのだろう。
しかし次第に習慣は乱れていき、着ていた服を部屋で脱いでしまうことも増えた。大学生になると、帰宅が遅くなったこともあり部屋に上がって風呂に入らず寝間着にだけ着替えて寝る事も多々あった。唯一残っていた習慣としては、一週間分の洋服をまとめて洗濯機に放り込むことだった。
下着から、シャツからズボンまで、全て一緒くたにまとめて放り込む。とにかく大きい洗濯機だった。
そんな習慣は一人暮らしになってからも残っており、一週間分の洋服を一箇所にまとめておいて、一気に洗濯するようになった。
上司と洗濯物の話になり、ふとそんなことを話した。
「ズボンとか、どれくらいの頻度で洗う?」
上司に聞かれ、頭の中で数をかぞえた。えー、ズボンが今四本あって、脱いでは着て、一週間に一回くらいで洗ってるから……。
「……二回履いたら、洗う感じですかね」
「えっ!? マメやなぁ、今まで聞いた中で一番マメやわ」
私自身は特段マメなわけではない。昔からの習慣で、なんとなく洗う頻度が決まっているだけだ。一週間分の洋服はまとめて洗う。と、当たり前のようにやっていただけだった。結果的に、あらゆる服を2回ずつ着回すローテーションになっているのかもしれない。
私は自堕落なので、気を抜くと本当に身の回りのことをしなくなる。でも、人と接する仕事なので洋服はできるだけ清潔にしておきたい。ちょっとした意地が、まだなんとか洗濯をする習慣を私の中にとどめている。
自分で洗うようになってから、段々と服の多い少ないが見えるようになってきた気がする。なんだか、全然上着を洗っていないなと思ったらそもそもの上着の数が少ない。あと、靴下もいつの間にか消えている。一人暮らしで、しかも脱ぐ場所は自室しかないのに小さなワンルームの中で魔法のように消えてしまう。
そろそろ、服を補充する時期が来たのかもしれない。冷蔵庫の中身を買い足すように、足りない服を買い足すのは、ちょっとオシャレとは縁遠い世界にいることを実感する。
せっかくなので、なんとなく干された自分の服を眺めた。コーディネートでも、意識してみようかと思ってやめた。自分のセンスはとことん信用していない。うーん、と頭を絞って「似合っているよ」と言われた服を思い出す。よく似た服を買えばいい。
あと一つ、めったに着ない色のズボンでも買おう。
よし、と、買うものをメモして家を出る。ちゃんとメモするあたりは、少なからずマメといえるポイントかもしれない。
外に出るともう春を感じる陽気だった。今は干したばかりの洗濯物も、家に帰る頃にはすっかり乾いているだろう。
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今回のテーマ「洗濯機」
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