スポットライト
動画サイトの更新が60回を越えた。
街のキラリと輝く方を取材し、動画で撮影して地道にアップロードするサイトだ。元々は北海道の札幌で行われていたものを、私の先輩が札幌へ飛び、暖簾分けしてもらってきた。何をするかと言えば足立区で活動している人を電話をかけたり、時にはナンパして捕まえては「取材させてください!!」と押し掛けて、20分くらいの動画を撮らせてもらう。それを学生数名で回している。デジカメと三脚とスケッチブックを持って、わっせわっせと取材した。もはや、ディレクターなのかADなのか解らない格好で走った。
インタビューを続けているうち、取材を受けてくれたゲストさんが、次のゲストさんを紹介してくれるようになった。気分は笑っていいとものテレフォンショッキングだ。おかげで電話やナンパをすることは少なくなった。そうして、友達の友達を紹介してもらいながら、取材は続いた。
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こんなことをしているくらいなので、私はプロデュースが好きだ。
めちゃくちゃ売れてる人より、ひっそり頑張ってる人を応援するのが好き。誰からも見つからないような人を見つけて、盛り立てるのが好き。王道より、邪道が好きだし、横道にそれながらも王道を目指す人が好き。へこたれない人を見つけて、そこにスポットライトを当てたくなる。足立人図鑑は私にとってプロデュース活動の一つだ。
取材を続けて、友達の友達を渡り歩くと、ドンと個人的に呼んでいる人に当たる。キラキラして、夢が今とリンクしている人。そう言う人たちは、活動の場や人の集まる場所を持っていて、その人の周りには夢を持つ人がいっぱいいる。
ドンと知り合うと、足立人をたくさん教えてもらえる。水源に当たったかのように、たくさんの人に繋がる道が広がっていき、企画は明後日の方向に流れ、一緒に協力して町おこしをしたり、ボランティアをしたりする。おかげさまで、いろんなところへ出かけたし、学生主催のお祭りにも、たくさん協力してもらった。大人ってすげぇな。と、何度も思った。大人が本気で好きなことをやり始めると、規模が違ったものになる。
そして、その輪の中にいると、日が射すみたいに、スポットライトが現れる瞬間がある。その光の当たるところに、ささっと、人を滑り込ませるのが楽しい。ついこの前、私はドンのイベントに足立人図鑑で紹介したHさんを誘った。イベントはチャンスだ。そこにいると突然可能性が広がる、ボーナスタイムみたいなもので、出展できたらたくさんの人の目に触れる。Hさんには出展者募集をいち早く伝えるくらい、もう、とにかく出てほしかった。出展者説明会にその人はやってきた。あとは、ドンのプレゼンテーションと、Hさんがマッチするかどうか……。ほとんどが、ドンの身内の中、私からはHさんの背中しか見えず、どんな表情を浮かべているか解らなかったのが本当に不安だった。
しかし、不安と反してHさんとイベントはぴったりマッチした。小さなお店が、ちょっとしたイベントに出展して、新しい繋がりを生み出していくのは、本当に見ていて最高にハッピーになる。
小さくても、少しずつ続けていると、いずれ日が射すことがある。時々日の出るところが解ると、こっちこっちと手を引いて「はい、ここで、いつものようにお願いします」と、言って隠れる。しばらくして、光が差し込むとステージの上に立ったように、私の応援したい人に注目が集まっていく。それを間近で見られたときは、大げさでなく生きててよかったと思える。
へこたれない人たちのネットワークに繋がっていると、自分もへこたれなくなる。大の大人が、人生をかけて泥まみれになって、笑っているのを間近で見た。それに比べれば、私の悩みは大したことないなと思えてくる。大したこと無いなと思えるけど、落ち込むときは落ち込む。それはもう仕方ない。しょんぼりする。ただ、一回寝そべると立ち上がるのがすっごく大変なのは引きこもり生活から学んだので、お尻が床に着きそうになりながら何とか踏ん張る。腰を屈めながらも、つま先で頑張って立とうとして、プルプルしながらバランスを取る。時々倒れちゃう。それはもう仕方ない。そしたら、叫ぶ。
「誰かああああ、いませんかあああ、すいまっせええええん、倒れちゃって起きられないんですうううう」
たまに誰かいる。そのときはラッキー。バランスを取るのを手伝ってもらう。いないときは、仕方ないから起きあがらずに何かする。立てないならしかたない。指でも動かしてnoteに記事の一つでもあげてやらねば。そう、私は今、絶賛倒れている真っ最中である。ベコベコに凹んで自己嫌悪の念に駆られながら、ピコピコと記事を書いている。
それでも、プロデュースが好きだ。こんなぐでんぐでんになっても、プロデュースが好きだ。寝っ転がって瀕死でも、腕と口が動けば「あの人すごいんですよ」くらいはきっと言える気がする。人が虫の息の状態でもなお推薦したくなる人って、ちょっと見たくなりませんか。
なりませんか?
……そうですか。
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それでも、取材は続く。寝っ転がってはいたけれど、ピコピコ打てればメッセージは送れる。「取材させていただけませんか」、送信。プロデュースするのは私なのに、その人生や決断にドキドキする。私は初めて会う人達の生き様に手を捕まれ、うんとこしょ、と起こしてもらって生きている。
「今日はありがとう、応援してるよ」
一番かけたい言葉を、かけられ続けている。応援したいのは私なのに、気がつけば応援されていて。返す言葉が見つからずに、こつこつとへこたれない人が、自分の道を進んでいく。その背中を私は見送って、また別の道を進む。泥だらけで、ちょっとバランスを崩すと、また倒れそうだ。
「道、ないじゃん」と笑った。それでも、進む人がいる。私は、そんな人を見つけたい。
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