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威厳のない神として駆ける

さて、今回はゲームについてだ。

展開についても記載されているのでネタバレを避けたい方は今すぐ閉じていただきたい。

大神(おおかみ)というゲームをしている。物語はこうだ。かつて、ヤマタノオロチと戦ったイザナギは、戦いの中で窮地に陥る。そこに颯爽と現れたのは、白野威(しらぬい)という狼だった。二人は力を合わせてヤマタノオロチを封印する。

そして、世界に平和が訪れてから百年ほど経過したある日。ヤマタノオロチ封印に使われていた剣を、肝試し感覚で来た男が試しに引っ張ったら引っこ抜いてしまい世界に混沌が訪れる。

そして、石像として眠りについていた狼、改め大神はすっかり腑抜けた顔で目覚めた。ほぼ犬、強いて言えば好きなときに太陽を昇らせる程度の能力を持った異常気象を発生させる点においては確かに人知を超えた力を持つ神として復活した。

しかし、百年前の出来事など伝聞だ。私も知る限りヤマタノオロチを倒したのはスサノオである。イザナギは、イザナミと共に日本を作ったのではなかったか。とにかく、そのくらい情報が混濁し、あくまで言い伝えになってしまった。なので、アマテラスも道端では「シロ」とか「ワン公」と呼ばれ、威厳が一切無い。

強いて言うなら、かつて共に闘った神々たちは、封印を解くと小難しい言葉で敬意を示してくれる。その時は、アマテラスは神様なのだと思えるが、本当にそのくらいである。他の場面では変な白い犬として扱われている。

また、旅先で動物たちと出会う。私は動物たちにエサをやるシーンが大好きで、常に餌を動物の好みに合わせて準備している。その動物たちも、アマテラスが見つめる中、無心で餌を食べている。餌をくれたことに対する感謝よりも、お腹が一杯になった幸福を表現してくれる。彼らがそれでいいなら良いが、スズメや虎など多岐にわたる動物たちが黙々と餌を食べる。アマテラスは座ってそれを見ている。私は、返事がないと分かっていながら動物たちに話しかける。

「やっぱ、豆が好きな感じ?」

「村ってどっちか知ってる?」

「一緒に食べる的なことは無いの?」

どれにも返答はない。ご飯を食べる動物たちを見る。そのために広場を駆けずり回っていると言っても過言ではない。

一応友人から聞いた話では「信仰を取り戻していく話」とのことなのだが、現状ナメられまくっている。しかも、当のアマテラスが全く気にしていない。長い話や解説が始まると、なんだか眠そうにしてうずくまっている。本当にこいつは神様なのだろうか。

また、ヤマタノオロチによって妖怪による環境汚染を解消していくのだが、物語が進むに連れどうにも腑に落ちない部分が出てくる。例えば、能力は13個と聞いている。そして、その力を与えてくれるのはアマテラスに仕える神々だ。その姿は、龍、鼠、猿、ときた。アマテラスを1として残り12個、12で龍、鼠、猿とくれば十二支である。

しかし、話はそう単純ではないようだ。十二支の動物たちと出会いながら物語を進めているうちにふと思ったのだが「アマテラス」は狼なので、正確には犬ではない。しかし、犬だとすると、アマテラスも含めて13種類になる。多い。

それでも、これまで培ってきたRPGのパターンとしては、最初に手に入れた力ともう一つ新たな力を加えて見事13個の力が開放されるのではないかと思っていた。しかし、その仮説も打ち砕かれる。神々に仕える動物の姿をした化身たちと出会う中、猪や猿とも出会い、順調に思えた。そんなとき、また新たな化身と出会った。それが、二匹目の猿であった。猿からはもう力をもらったのに、新たに別の猿の化身が来て力を授けてくれた。

完全に計算が狂った。子丑寅卯辰巳午未申申(申?)酉戌亥で、14種類になる。いや、このまま申が二匹で終わってくれれば良いのだが、果たしてどうなることやら。そうした、モヤモヤと考える時間を与えてくれるのが、フィールドの端々にいる動物との触れ合いタイムである。

猿に餌をやりながら「どう思う? 君のところの神様だと思うんだけど、三匹いるって噂とか聞いたこと無い?」もちろん返事はない。しかし、こうした探索の休息時間に、こちらに一切関心を持たず餌にがっついている動物を見ながら話しかける。

確か現実世界においても、テディベアに今抱えている問題を話すことで解決の道を見つけ出すような手法があったはずだ。やっていることはそれに近い。

モシャモシャと、餌を食べる動物とそれを見つめる犬、アマテラス。それを見る私。それが今の大神である。

ゲーム実況としては、プレイングにもたつきがあったり、仕様をあまり理解していない部分がある。しかし、それらを少しずつ読み解きつつ「……なんか聞いたことあるな」と思ったことについて調べる。また、エリアマップが覚えられないがネタバレを踏みたくないので、日本地図を手元に置いた。今回は日本神話がモチーフということもあり、場所を都道府県に振り分けて移動先について説明する試みだ。

でてくる登場人物は、神話に加えておとぎ話の名前を冠する人々もいる。私はひとまず、そのへんにいる動物たちにエサを振りまき「大神、またの名をアマテラスをよろしく」と選挙活動のようにして布教活動に勤しんでいる。

この世界では神様は形骸化しているが、しかし確かに存在する。それでも、信仰を高めるには兎にも角にもまずは与えて与えて与えまくり、そのへんにいる妖怪から金を巻き上げて経済を回す。そう、世界を動かすのは神であり経済である。

と、まぁ、偏った思想を持ちつつ、できるだけサイドクエストをこなして進むことにする。なので、今週発売予定のポケットモンスターについては、もしかすると入手に時間がかかるかもしれない。

今は大神となって、日本にいる動物たちにエサを振りまき、人間はともかくとして動物たちからの支持を得て、禍々しいものを取り去ってから再び眠りにつこうと思う。

この世界における神とは、今ところ頼まれごとをこなす何でも屋である。祈られてお願いされることだけは変わらない。そして、そんな都合のいいものはいないと決めている人間は、アマテラスが人知れず問題を解決しても「自分の祈りが届いた」とか、なんだかんだで自分の手柄にしている。人とはそういうものだ。

私は動物たちと仲良くさせてもらう。人間とは愚かなものだ。愛すべき愚かさを持っているが、なんとなく頼まれごとをして世界を進む神としては「めんどっくせぇなーー」と思うこともあるだろう。それでも、やはり、キャラクターの愛らしさや憎めない部分に魅力を感じて許してしまう。

とにかく、人間たちはその辺にいる犬の手も借りたいくらいには切迫している世界なのだ。犬の手も貸してやろう。しかしこの世界については、もう少し私も日本神話への理解を深めて行きたいと感じる。

スサノオノミコトやアマテラスは、伝わっている伝聞において何をしたのか。それらを理解してから進むのもまた悪くない。

さて、今はまた、お使いを頼まれている。明日はまた、そのお使いをクリアする旅へと出かけるのだ。

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