朝焼けと共に、消える友達

夜だし、夢の話をしても良いだろうか。

目標の方の夢は口にすると叶わなくなるとも言うし、とにかく口に出した方がいいとも言う。

せっかく話しても叶わなくなるのはやっぱり怖いので、眠っているときに見る夢の話をしたい。だからこれは嘘になるのだが、私には一人の友達がいた。Kさんという。私のnoteにはよくKさんが出てくる。しかし、全員が同一人物というわけではない。今回のKさんは、初登場のKさんだ。

男の人みたいな、女の人だった。25歳くらいで、声は低かったし、髪は短くて、白衣みたいなロングコートを着ていた。私はそれがかっこよく見えて、そのKさんと同じくらいの歳になったときにふと思い出して似たようなコートを買った。Kさんはいつも、木の下のベンチに座って空を見ている。私が隣に座り顔をのぞくと「ん? なんだい?」と笑う。

それだけ。ただ、それだけの夢。この夢は何度も何度も思い出していて、しかし、夢なので実体はなく、当然のように改竄されているはずだ。次話すときは、また微妙に話が変わっているかもしれない。ちなみに、白衣みたいなロングコートは本当に買った。

とはいえ、このKさんとい人は私にとってすごく心地の良い人物だ。夢の中でそういう友達を生み出すというのは精神疾患を疑われるかもしれないが、今のところ普通に生活できているので心配には及ばない。

この夢を見る少し前に、私には恋人ができた。しかしその恋人は、付き合う前、私にとって一番の友達だった。それこそ、ベンチに座って本を読んで時々話しかけるような、ゆったりしたた時間をお互いに好んでいた。実行委員でも一緒だったし、小説を一緒に書いたりもしていた。その友達から告白され、友達は恋人になった。

そして現れたのが、この夢のKさんだった。Kさんの名前は、私と恋人が一緒に小説を書くときのペンネームと同じだった。

友達改め恋人との関係は最初から全然うまくいかなかった。どう接していいか分からず、話しかけるのを一度躊躇すると、もう次はどう話していいか分からない。付き合って早々に、疎遠になった。同じ実行委員などでなければ、とうに会話をしなくなっていたかもしれない。

業務連絡ばかりが得意な私は、改めてKさんの名前を使い、二人で小説を書いた。しかし、恋人と友達の差はそう簡単には埋まらない。長く、友達を失ったという気持ちと、恋人になろうとする気持ちがぶつかり続けた。

そうして、その失った友達と言う穴を埋めるために、登場させたのがこのKさんだった。

未だに、夢に出てくることがある。ただ、はっきりというよりは、薄ぼんやりと覚えている程度だ。逆に意識して話そうとすると上手くはいかない。現れるときは一方通行だ。目が覚めたら忘れてしまう、夢の中の友達の話。

おしまい。

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