アキ子

こんにちは、アキ子と申します。 道端に咲いている小さな花から、深く暗い湖まで。 どうぞお手柔らかに。

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彼女になりたくない物語(4)

酔っ払いの足は遅い。 麻友子さんは、左に私を、右に彼を従えて歩いている。 ヒールが不規則に地面を鳴らす。 夜のコンクリートはよく響き、なんだか不気味だった。 麻友子さんは彼と腕を組み出した。 性を全面に出していた。 苛立つ私を余所に、くっついて歩く2人。 疎ましい。 ひと回り下の私に勘づかれるような方法でしか、女を出せない彼女が痛々しかった。 でも、お酒の勢いでもなんでも、彼とくっつけるなんて羨ましかった。 私だって。 私も充分女だ。 まだお店が見える道路で彼が急に立ち

    • 彼女になりたくない物語(3)

      今回のお店は、私のお気に入りの創作居酒屋。 「先に始めちゃいましょうか」 と声をかけ、ドリンクを注文。 「麻友子さん、改めてご婚約おめでとうございます!乾杯」 音頭を取り、グラスの甲高い音が重なる。 彼はひと口ふた口、口をつけたくらいでグラスを置き、私に声をかけた。 「結ちゃん、もういいよね?」 公園で見つけた宝物を披露したい子どもみたい。 無邪気な様子が、心に刺さる。 だめだ。封印したはずなのに。 彼はどんなキスをするんだろう。 彼はどんなSEXをするんだろう。 …どんな顔

      • 彼女になりたくない物語(2)

        「もう1本吸ったら行こうか」 まるで、2人でいることが心地良いと言われたみたいで少しうれしかった。 電車の時間が迫っている。 足早に駅へ向かった。 彼は、誰かと連絡を取っているようだった。 肩越しに彼を見ると、器用に私の少し後ろをついてきている。 その様子がペンギンのお散歩と重なり、私はまた静かに笑った。 電車に乗り、2人がけの席に座る。 外はもう真っ暗だ。 窓に映る自分にピントが合う。 少し表情が固い私がいた。 車内は変な暖かさだった。 彼も同じように感じたのだろう。

        • 彼女になりたくない物語(1)

          ◎あらすじ SNSのコミュニティで知り合った私と彼。 とあるメンバーの婚約祝いで久しぶりに集まることになった。 私が幹事をすることになった。 「何かプレゼントしよう」 言い出しっぺは私だった。 彼と先に合流して、お花を見に行く予定を立てた。 顔も声も素敵な人で、笑った時にできるえくぼがすごく魅力的だった。 出会った時、彼には彼女がいた。 後から知った話だが、彼女は嫉妬深く、異性との交流を避けていたらしい。 正直、チャンスだと思った。 彼女になりたいとは思わなかった。 あ

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