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半ドン技師は育てる担当#19

半ドン技師です。

私の家族は、妻と娘の三人家族です。
妻の働く病院は当直があり、その夜は娘と二人。
翌日も当直明けの妻を静かに寝かせてやりたくて、娘と二人でお出掛け。

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マザーズバックを持ちいざ公園に。
膝までやでと言っているのに、じゃぶじゃぶ池にダイビング。
全身ズクズクになって、こちらを向く娘の最高の笑顔が、今でも目に浮かびます。
何してるねんと怒ってはみるが、マザーズバックの中に着替えは常備されています笑
そして着替えさそうとスッポンポンにしたところで、大喜びで走り出す娘を追う私。
今から思えば微笑ましい光景ですが当時は必死。もう汗だく。

少し大きくなったらプリキュアです。
プリキュアの衣装を着させてもらえるイベントでは、更衣室はお母さんと女の子だけ。
おっさん一人・・・やっと着替えられたと思ったらトイレに行きたいと言う。
女子トイレから「パパ~どこ押したら流れるの~来て~」と大きな声が聞こえる。
いっそのこと女性になりたいと切望しました。

たまには妻に愚痴ってはみるのですが、私は産む担当、パパは育てる担当だからと、私の奮闘話を楽しそうに聞いています。
自然界でも、皇帝ペンギンはどうやら、タツノオトシゴはどうやら。なるほどと納得しそうになりますが、私は人間です!

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でも産む担当と言うだけあって、娘と出会うために凄く頑張ってくれました。
不妊治療を経てやっと出会えた子なんです。
不妊治療を始めるにあたり、色々な検査をしました。
特に、卵管の詰まりを見る、通水検査という検査が、すごく痛くてヒィーて感じらしく。そりゃ凄い勢いで狭い卵管に水を通すのだから痛いに決まっています。よく耐えてくれました。

色んな検査の結果、お互いに決定的な原因がなかったんです。
生理的に無理。女性にそんなこと言われたら男性はキツイですよね。
フーナーテストと言うのですが、顕微鏡レベルでそれが起きてたんです。
私を異物として奥さんが攻撃してくるんですね。瞬殺です。
頭だけ二個、転がってたかなぁ・・・

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そして不妊治療が始まりました。
排卵のコントロールのために、まずい点鼻薬や座薬。治療自体も辛いのですが、何より家が暗いんです。

治療をしていることを知らない人は、そろそろ子ども作ったら?いいもんやでと声を掛けてくる。
治療をしていることを知っている人は、授かりものなんだから、もっとゆったりした気持ちで構えてたら焦らなくても出来るよ、と言う。
悪気なんて一切ないし、逆に私たちの事を思ってくれる人たちばかりなのに、どんどん心を閉ざす。

家族が増えましたという年賀状にさえ、当てつけかと怒る。(のちに娘を前面に出した年賀状を妻も作っていました笑)
二人目不妊の方で、子供を連れて通院してる人にも配慮が足りんと怒る。

不妊治療の本当の苦しみは、ゴールの見えないところにあります。助成金が出るといっても費用もどんどんかさみます。

月経が来た日は、毎回妻の好きなケーキを買って帰りました。いいこともないとねって。そして妻に語りました。
「子供がいないから、99%しか幸せになれないわけじゃない。何か不足してるわけでもない。二人でもう100%幸せ。そんな幸せを二人占めするのは勿体ないから頑張ってるだけ。だから、そんなに苦しまないで。赤ちゃんがここに来たいとおもえるような明るい家庭にしようよ。」

いいこと言ってるでしょう?決まったと思いました笑
でも妻には、それこそ100%響かなかったです。チーンて感じ。

励ましや慰めや労い。それに救われ、頑張れるときもあります。
でもそれって、どこか他人事な感じがしますよね。
悔しい!僕も赤ちゃんに会いたい!
ただ、同じ思いで妻はいて欲しかったんじゃないか。
我が事だと思って欲しかったんじゃないか。
なぜ響かなかったか、今なら少しわかる気がします。

結果は、これが最後と二人で決めていた治療で授かることが出来ました。
でも、診察室を出るときは二人とも喜びを押し殺していました。
なぜなら、今も戦っている人たちが待合室にたくさんいるから。

妻は当時の事を振り返り、
確かにもっと赤ちゃんが欲しいと思って欲しかったけど、月に一回のケーキは楽しみにしていたし、一緒になって暗くならないでいてくれて助かった。同じ価値観だけがいいわけじゃないと言ってくれます。
あの時、そのセリフを言ってくれていたら、僕はもっと楽だったんだけどね笑


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