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blender 4.2 アニメーションと実写を合成する

以前の記事で、VFX合成と、かんたんなアニメーションの作成を紹介しました。それらを組み合わせ、ここでは、実写の静止画像と、ソフトボディシミュレーションによる風船の動画を合成してみました。


環境 Blender 4.2.0 , Mac Mini M1 OS 14.4



完成動画


作成のイメージを確認してもらうため、事前に完成動画を添付する。

若干のカラー補正と、サウンドトラックの追加を行っている。はじめてのアニメーション - ビデオエディター 参照


風船


風船は ICOS 球から下のようにかたちを変更し、物理演算プロパティから、「ソフトボディ」を適用した。

重さ 0.1 辺 > 押す 0.999 辺 > 可逆性 1.0

ソフトボディは、やわらかい物体の動きをシミュレートする機能。辺 > 押す、可逆性を大きくすることで、風や障害物などの影響をうけた際に、もとの形状を保ちやすくなる。
また、今回の動画は 300 フレームとするため、キャッシュ > 終了 も 300 としている。

風船のマテリアル。シェーダーエディター 粗さ 0.0

オブジェクト情報の「ランダム」から接続することで、風船の数を増やしたときに、カラーランプ内のカラーからランダムに色が変わる。カラーの追加は、カラーランプの + ボタンから。


セットアップ


背景のビルディングは、背景画像に合わせ、形状をかんたんにモデリングした。風船は、Option(Alt)+ D で複製し、適宜配置。

風船をすべて選択し、オブジェクト > トランスフォーム > ランダムトランスフォームから、画面左下のプロパティ画面で回転などをランダム化させると手早い

左に配置されているのは、フォースフィールド > 乱流(Turbulance 強さ 10) 、右の 2 個は、フォースフィールド > 風(Wind 強さ 2)。この力によって、風船がやや不規則に、右から左へ流れる。

カメラ視点 ビルは背景画像にあわせパースを合わせた


ベイク


今回の動画は 300 フレームで作成するので、タイムラインエディター画面の「終了」を 300 に設定。プレイボタン、あるいはスペースバーを押し、シミュレーションの動きを確認する。

風船のいずれかを選択し、物理演算プロパティを表示

動きに問題がなければ、風船オブジェクトの物理演算プロパティ > キャッシュ の「ベイク」ボタンを押し、シミュレーションのデータをベイクする。

ベイクとは、シミュレーション結果をデータとして保存すること。PC の環境にもよるが、ベイクデータがないと、アニメーションとしてレンダリングする際、一部コマ落ちすることがあるようだ。


合成レンダリング


まず、背景画像と、風船のアニメーションのみのシンプルな合成を行ってみる。

  • レンダープロパティ フィルム > 透過 にチェックを入れる

レンダーエンジンは EEVEE 透過以外はデフォルトのまま
  • ビルオブジェクトは、レイの可視性の「カメラ」のチェックを外す。

この設定で、風船以外は、PNG透過画像のように透明になり、背後の背景画像と合成できるようになった。

ビルオブジェクトはカメラには映らないが、風船がぶつかって止まる、などの物理的な挙動は保たれる。

レンダープレビュー 背景はすべて透過

なお、照明は青空の HDRI 背景(環境)光のみ。設定については、HDRI 照明の記事を参照ください。

コンポジット

コンポジットワークスペースに切り替え、ノードを使用 をチェック、以下のノードを組む。

カラー > ミックス > アルファオーバー

Shift + A 入力 > 画像ノードを追加し、 building.jpg (1920 x 1264)を指定した。画像は、pixabay より入手した。

出力設定

出力プロパティの設定は下の通り。出力 のフォルダアイコンで動画の出力先を指定する。

ファイルフォーマット FFmpeg動画 コンテナ MPEG-4 
  • メニューの、レンダー > アニメーションレンダリング を選択する。

動画の「解像度」は背景画像サイズと同一に(1920 x 1264)。こちらの環境では、 1 フレーム 1 秒ほどでレンダリングされ、5 分ほどで完成。動画は、上で指定したフォルダに、0001-0300.mp4 が保存される。

仮完成

仮完成した 13 秒の動画。単にオブジェクトによるアニメーションと背景画像を合成するだけならば、上の操作で完結する。

比較的、違和感も少なく、EEVEE によるレンダリングなので、レンダリング時間も短い。



映り込みの追加


このままでも悪くはないが、背後のビルの窓に風船の映り込みがあれば、よりリアルになるだろう。
ただ、EEVEE では映り込みの精度もやや低く、必要なオプションがないため、時間はかかってしまうが、cycles でレンダリングを行う。

レンダープロパティ 
レンダーエンジンを Cycles に変更 レンダー > ノイズしきい値 0.1

映り込みもレンダリングするので、ビルオブジェクトのレイの可視性 > カメラはチェックを入れる。

なお、ビルのマテリアルは、伝播 のウェイトを 1.0 とし、IOR を 30 と非現実的な値とし、映り込みを強調させた。

 cycles レンダープレビュー。ビルオブジェクトに風船が映り込んでいる。

ビューレイヤー

レンダリングから映り込みのみを抽出するため、ビューレイヤープロパティ ライト > 光沢 > 間接照明 にチェックを入れる。

ガラスなどへの映り込みは、光沢のある表面に間接光があたってできるものなので、その光(レイ)のみを抽出する。

コンポジットノードを下のように変更する。

レンダーレイヤーは、GlossInd から接続する。
カラー > ミックス > カラーミックスノード(スクリーン)

レンダリング

メインメニュー、レンダー > アニメーションレンダリング 、を実行。

こちらの環境では 1 フレーム 20 秒ほどで、約 2 時間弱かかった。

完成した動画。ファイル名は「onlyreflection.mp4」とした。


合成


映り込みのみの動画が完成したので、上記の背景画像に代えて、完成した映り込み動画を、風船のアニメーションと合成する。

  • レンダーエンジンを「EEVEE」に戻す

  • ビルオブジェクトの「レイの可視性 > カメラ」をふたたび、OFFに

入力 > 画像ノードに、上の onlyreflection.mp4 動画を指定。フレームは 300
  • レンダー > 「アニメーションレンダリング」を実行


完成


風船のアニメーションと、背景および映り込みの動画が合成された。

このレンダリングは EEVEE で行っているため、こちらの環境で、約 5 分ほどでレンダリングを完了できた。


まとめ


cycles による、ガラスへの映り込みも合成したため、レンダリング時間も、手数もすこし長くなりましたが、アニメーションの合成じたいは比較的シンプルにできますし、EEVEE だけで用が足りるならば時間もさほどかかりません。
本格的なアニメーションを作るには時間もリソースも必要ですが、かんたんなアニメーションに画像などを合成し、クレイアニメーション風なものを作るのも楽しいかもしれません。参考まで。


映画好きのかたはご存知かと思いますが、Le Ballon Rouge(1956)「赤い風船」というフランス映画があります。タイトル通り、風船がある意味主役で、浮かびながら、まるで意思をもっているような動きをします。当然、CGなどなかった時代で、いったいどのような方法で撮影したのか不思議なのですが、監督は頑としてそれを明かさず、いまでも謎に包まれたままのようです。

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