見出し画像

試験に出ない blender の英単語

blender では、とくに設定値などに専門用語が頻出して、英語でも日本語訳でも、結局、どちらも意味がよくわからない、あるいはわかっているようだけれどわかっていない単語が少なくないかもしれません。

そこで、ここではすこしわかりづらい英単語を整理し、blender の機能をより「わかりやすく」理解できるよう試みます。


環境 Blender 4.3.0 , Mac Mini M1 OS 14.4



Object

[もの、物体]
blender など 3DCG ソフトウェアの多くは、シーンを構成する、立方体や球、ライト、カメラ、テキストなどのさまざまな要素を「オブジェクト」と呼ぶ。


Mesh

[メッシュ]

もとは生地などの網、網の目。blender では、オブジェクトのなかでも、頂点や辺、面(ポリゴン)で構成された立方体や球などを指し、メッシュオブジェクトとも呼ばれる。また、デフォルトで用意された球などを、Mesh Primitives [基本的な、原始的な] と呼ぶ。

Mesh Primitives Cube, Cylinder, Torus


Polygon

[多角形]

メッシュオブジェクトを構成する面のこと。blender のポリゴンの基本は四角形で、三角形を trigon(トリゴン、トライゴン)五角形以上を ngon(エヌゴン)と呼ぶこともある。

trigon ngon


Geometry

[幾何、ジオメトリー]

blender では、立方体、球などメッシュオブジェクトを構成する、頂点、辺、面の幾何学的な配置、そのデータを指すことが多い。とくに、それらの配置、接続にとくに注目することを Topology(トポロジー) と呼ぶこともある。


Instance

[インスタンス]

意味の広い単語だが、blender ではオブジェクトの仮のコピーのような存在を示す。ジオメトリデータを持たないので、オリジナルよりデータが少なく、大量のオブジェクトを生成する際の処理軽減に使われる。インスタンスから本来のオブジェクトに変換することは、Realize Instances(インスタンス実体化)

配列モディファイアで生成されるコピーはオリジナル以外、すべてインスタンス。


Asset

[アセット]

一般的な意味は「資産、財産」のこと。3DCG では、ライブラリに収納して配布したり再活用できる、3Dモデルやマテリアル、テクスチャなどのデータ群を示すことが多い。


Normal

[普通の、平均的な、正常な]

通常の意味では、ノーマルなひと(普通の、変でないひと)のノーマルだが、3DCG では、Normal Vector(法線ベクトル)の「法線」のこと。法線とは「曲線上の点における接線に垂直な平面ベクトル」のことで、いわゆるオブジェクト面の向きを示す。

各面の Normal 。Mesh Edit mode Overlay




Modifier

[変更、修正(Modify)を加える(もの)]
モディファイア。blender では、オブジェクトの形状に変更、修正を加える機能。


Boolean

[ブーリアン、ブール演算]

左の円がA,右の円がBならば、下図の右の計算結果は、A AND NOT B で、B円によってくり抜かれたA円が表示される。ブーリアンモディファイアでは下図のいずれも可能だが、おもにAND NOT演算でオブジェクトに穴を開けることに利用されることが多い。

Understanding Boolean Search and Boolean Operators


Solidify

[凝固させる、強化する]

ソリッド化。blender では、平面のオブジェクトなどに「厚み」をつけるモディファイアで、オブジェクトを「ぺらぺらではなくしっかりさせる」というような意味なのかもしれない。


Lattice

[ラティス、格子、空間格子]

もっとも一般的な意味は、ガーデンなどにある木製の格子柵のこと。blender では、化学等の用語の、空間格子、結晶格子のことで、Lattice オブジェクトの格子にしたがって、別のオブジェクトを変形させる機能。


Mask

[マスク]

もっとも一般的な意味は顔を覆う「マスク」だが、blender や画像ソフトなどでは、マスキングテープのように、一部を覆い隠す、という操作に使われる。

マスクモディファイア。ウェイトで、オブジェクトの一部をマスキング。


Decimate

[滅ぼす、殲滅する、削減する、間引く]

すこし殺伐とした言葉だが、blender の「デシメート」モディファイアは、確かに形状を「損ないながら」、ポリゴンを削減する機能。

デシメート前後。ポリゴン数 左 : 2772 右 : 240




Material

[素材、素地]
マテリアルは、金属、液体、ガラスなど異なる素材の質感のこと。


Shading

[陰影、隈取り]

シェーディング。もともとは絵画などで陰影(シェード)を施すこと。CG では、オブジェクト表面の各画素に、光の影響によるカラーや暗さに変化を与える処理。そのアルゴリズムを、Shader (シェーダー)と呼ぶ。

Metallic shader, glass shader


Texture

[テクスチャ、テクスチャー]

本来は、生地そのものやその肌触り感。食感、メロディの印象なども指すことがある。3DCG では、オブジェクトの表面に貼付する画像や模様のこと。blender では、数式等によって生成される各種パターンが多く用意されており、それらを Procedural Texture (生成/プロシージャルテクスチャ)と呼ぶこともある。

Procedural Texture


Bake

[ベイク]

一般的には、パンや陶器を「焼く」こと。3DCG では、おもに、照明による光の影響や影を、オブジェクト表面に画像データとして貼付する(焼き付ける)ことを指す。フレームごとの再計算が省けるので、ゲームなどのリアルタイムレンダリングに多用される。
また、オブジェクト表面の模様や色、凹凸の情報などを画像データとして保存すること(Texture Bake、テクスチャベイク)、あるいは、物理シミュレーションの計算結果を保存(固定)すること、を指すこともある。


Roughness

[凹凸、起伏]

ラフネス。一般的には「ラフ」プレーなどの荒々しさだが、blender では、オブジェクト表面の凹凸の程度、なめらかさ、「粗さ」を表す。


Transmission

[(光・熱・力などの)伝達、透過]

blender では「伝播」と訳されているが、すこし専門用語的なので「透過」でよいのではないか。ガラスなどの素材内部での光の屈折を含む伝わりかたを表す。


Subsurface

[表面下]

サブサーフェス。CG ではおもに、素材の表面下で、光が吸収、散乱する性質を再現する際に使われる。


Volume

[容積、体積]

ボリューム。CG では、おもに霧や雲など、微細な粒子が充満した空間のこと。

Volume Scatter


Weight

[重さ、ウェイト]

blender では、「重み付け」と訳されていることがあるが、重い軽いの「重さ」ではなく、なになににウェイトをおく、のウェイト。ウェイトの値が大きいほど影響が大きい。
たとえば、オブジェクト表面の各エリアに異なる「ウェイト」を設定し、それによって、パーティクルオブジェクトの生成密度を調整する際などにも使われる。

赤いエリアがウェイトが大きい。


Threshold

[しきい値、閾値]

blender のさまざまな設定値で頻出するが、どちらの言語でもわかりにくい。値の操作での影響が出る出ないの境目の値を示す。たとえば、ひとのからだで、暑くて汗が出始める温度を、発汗の「しきい値」温度、という。
blender でのレンダリング Noise Threshold では、発生ノイズがその設定しきい値を下回ると、自動的にレンダリングが終了する。


Ray Tracing

[レイトレーシング]

3DCG でのレンダリング方式のひとつ。Ray は X-Ray(X線)などの(光)線のこと。Trace は、ペーパトレースなどのトレース。光の経路をトレースすることで現実に即したリアルなレンダリングを行う。blender では、cycles に、 EEVEE では4.2以降の一部で採用されている。なお、EEVEE でのメインは、Rasterize(ラストライズ)方式と呼ばれる。


Sampling

[サンプリング]

おおまかには、レンダリングの計算に使われる光の数(量)のこと。値が大きいほどレンダリング画像は精密になるが計算時間は多くなる。値が小さいほど計算時間は少ないが、ノイズ(処理が十分に行われていない画素)が増える。


Denoise

[デノイズ、ノイズ除去]

処理が複雑なシーンやマテリアル、サンプリング数が足りない場合などに生じるノイズを、隣接する画素を平均化するなどして除去する機能。 Noise reduction とも呼ばれる。 

cycles 12 sample 右 : Denoise ON


Clamping

[制限]

制約、遮断すること。たとえば、blender のEEVEE レンダー設定では、反射の強い表面に当たる光の強さを値によって制限し、ノイズの軽減に役立てる。値が大きいほど、計算が正確ではなくなる代わりにノイズは減る。


Global Illumination

[環境光]

グローバルイルミネーション。GI。シーンを全方向から一律に照らす仮想的な照明。現実的ではないが、時間のかかる間接光の処理の代わりを務める。ポイントやエリアライトなどによる照明は、Local illumination(ローカルイルミネーション)と呼ぶ。

EEVEE でのレンダリング。すべてポイントライト1 灯のみ。
中央は環境光ON 右はレイトレーシングON

左のポイントライトのみでは、光の直接届かない球の右側がかんぜんに暗い。環境光を加えることで明るくはなるが、物理的には正しくなく、右のレイトレーシングONでは、床からの間接光(床で反射した光が球を照らすこと)が反映され、より物理的に正しい明るさになる。フォトリアルを望む場合は、可能なかぎり環境光は抑えたい。※ EEVEE のレイトレーシングは 4.2 以降。cycles ではレイトレーシングは常にON。


HDRI

[High Dynamic Range Images、高ダイナミックレンジ画像]

画像形式のひとつで、JPEG などの通常の画像に比べ、輝度などに広範囲の情報を持つのが特徴。3DCG では、現実の屋外や屋内のHDRI画像(.hdr、.exr)を Environment Light(環境光)として用い、よりリアリスティックなライティングに活用されることが多い。


Ambient Occlusion

[環境、周囲の | 遮蔽、閉塞]

アンビエントオクルージョン。Ambient Music は「環境」音楽のことで、「環境」光などの、 Environment とほぼ同じ意味。Occlusion は塞がれた、遮られた(もの)を意味する。CG では、表面のくぼみなどに生じる影を擬似的に生成する機能。

右 : Ambient Occlusion

※ 4.2 以降、EEVEE レンダープロパティでの同機能の項目は廃止されている。機能じたいは処理速度を補うための旧式な印象があるが、シェーダーノードでは、同名のノードを使ったマテリアル作り(くぼんだエリアにノイズを加え経年劣化感を出すなど)に活用できる。



Simulation

[シミュレーション]

CG では、現実の物理法則に沿った空間内での物体、Rigid Body(硬い物体)、Soft Body(軟らかい物体)、Particle(粒子)、Cloth(布) などの動きをシミュレート(模倣)する機能。


Collision

[衝突、抵触]

コリジョン。シミュレーションで、オブジェクト同士がぶつかった際に、どの距離で「衝突」したかと判断するかを調整したり、衝突後の処理を調整する。クロスシミュレーションで、布が不自然に縮むことがあるのは、Self Collision(セルフコリジョン)の距離の設定が大き過ぎ、布同士の接触処理が正しく行えないため。


Friction

[摩擦、抵抗]

フリクション。オブジェクト表面の摩擦を引き起こす程度を表す。クロスシミュレーションで、布がコリジョンオブジェクトから滑り落ちることがあるが、それは、Friction の値が少なすぎるためだ。


Solver

[ソルバー、ソルバ]

さまざまな(専門的な)意味があるが、blender のシミュレーションでは、個体物理計算、を示す。たとえば、Liquid(流体)シミュレーションの、High Viscosity Solver(高粘度ソルバー)の値によって、液体にねばりけを与えることができる。


Cache

[保存庫、隠し場所]

キャッシュ。コンピュータ用語では、各種データを一時的に保存する仕組み。たとえば、ブラウザでいちど開いたページが、次回以降速やかに表示できるのは、ページデータをキャッシュとしてブラウザ内に保存しているため。blender ではおもに、物理シミュレーションの結果を一時的にデータとして保存し、同じシミュレーション結果を速やかに再現するためなどに利用される。



まとめ


これを書いていて、なんとなくわかっているような気がしていただけの単語がとても多いことに気づきました。
どれもこれも、意味がやや特殊で、試験や実生活には役に立ちそうにない単語ばかりですが、blender 習得的には、なんとなくわかっていたほうが役に立つこともあるでしょう。参考になれば幸いです。


文系なので、blender の訳語に出てくる、直訳すぎたり、すこし誤訳ぎみの単語がすごく気になります。とくに、ガラスマテリアルの「伝播(Transmission)」は、一般的にはそれがガラスの性質を表すものとは想像しにくい感じがします。財団に申請もできるようですが、どうして「透過」のほうがわかりやすいのか、非日本語圏のひとに説明できる自信がありません。


いいなと思ったら応援しよう!