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文系の blender 4.0 マテリアル | ケーキ
CGでフォトリアルなたべものを作るというのは、すこし難題で、丁寧な設定なしでは、なかなかCG感を拭い去ることができません。
これは、モデリングの良し悪しにもあるとは思いますが、鍵は、よりマテリアルにあると思っています。わたしなりに、これまでのノウハウを動員し、ケーキ周りのマテリアルを作ってみました。
レンダリングはすべて cycles 。なお、生成テクスチャの作成の基本については、怖くない生成テクスチャを参照してください。また、サンプルはほぼ原寸大。
環境 Blender 4.0.2 , Mac Mini M1 OS 14.2
ストロベリーショート
クリームのマテリアルが意外にむつかしいので、主役のイチゴを効果的にみせることができるかどうかがキーのようだ。
以降の、イチゴやベリー等のマテリアルについてはマテリアル | フルーツで紹介しています。
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クリーム
やわらかい印象を出すため、ここでは、サブサーフェス(Subsurface)とシーン(Sheen)を多めに適用した。
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スポンジ
パン表面の画像をベースカラーに適用し、そのモノトーン画像から細かなバンプ(凹凸)を生成した。また、ストレートのラインはCG感を生むので、手動でのモデリングで、ラインにランダムな起伏をつけている。
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サブサーフェス(Subsurface)はひとの肌など有機物質内での光の散乱を表現する。上では、やや細かいが、スポンジの端がやや半透明(内部から光が放射されている)で、光の透ける感じが出る。
またシーン(Sheen)は絹などおもに布素材の独特の光沢と色彩の変化を表現し、上では、クリームにホワイトの光沢が混じる。どちらも、マテリアルのやわらかい雰囲気を出すために有効。
クリームチーズ
本体はもう少し工夫の余地があるかもしれない。ベリー果汁のシズルが存在感があるので丁寧にモデリングし、また、光沢を増やし強調している。
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クリームチーズ本体
本体には実際のケーキ表面の画像を加工し、ベースカラーと、バンプ(凹凸)に適用した。また、すこしやわらかな雰囲気を足すため、サブサーフェス(ランダムウォーク)を 0.3 適用した。
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ベリー果汁
ノイズテクスチャで表面の色と起伏にすこし変化をつけている。加えて、伝播(Transmission)で液体の雰囲気を、スペキュラー(Specular)とコート(Coat)で表面の光沢感を増している。
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伝播(Transmission)は、通常はガラス素材の表現に用いられるが、液体にも使える。
スペキュラー(Specular)では、表面の鏡面反射を増減することができ、上では紫のチント(反射光色)を加えている。
コート(Coat)は、表面のコーティングを表現する。上では、同様に紫のチントを加え、かんぜんになめらかで光沢の強い膜層を表現した。
ビスケット
土台のビスケット。ノイズテクスチャをディスプレイスメントに接続し、ジオメトリ(形状)じたいを変化させ、砕かれたビスケットの大きめの凹凸を表現した。
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ディスプレイスメントはオブジェクト表面の起伏を擬似的に表現する機能。ただし、マテリアルプロパティの設定により、ジオメトリに直接変更を加えることができる。
詳細については、blender 4.0 テクスチャマップの設定 5. Displacement, Height を参照してください。
チョコレート
ベリーは比較的フォトリアルなので、多めに。上面のチョコレート層もモデリングにすこし手間をかけ、光の反射も強めに設定した。
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本体
スポンジとクリームの層は、波テクスチャを利用した。表面の細かな凹凸はノイズテクスチャで表現し、バンプとディスプレイスメントを併用し、起伏の強さは可能なかぎり強くした。
UVマップ側にすこし変化を入れ、層のラインを不揃いにしている。
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ベースカラー、バンプ、ディスプレイスメントすべてに使いまわしている
チョコレート
マテリアルとしては、粗さゼロの光沢の強いプラスチックとほぼ同じ。起伏はモデリングの手作業と、ノイズテクスチャで表現した。
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シュガーパウダー
チョコレートの上面に、同じくノイズテクスチャでパウダーの粒を合成した。
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まとめ
食品のような有機的なマテリアルは、手をかけないと、プラスチック製のサンプルのようになってしまいますので、サブサーフェスなどの要素の追加の他、ひらすら表面に適切なバンプ(細かな起伏)を、テクスチャや手動で加えることが、フォトリアルでは大事な工程になります。
素材によって、細かな数値一つで印象もおおきく変わるので、クリームならこれ、といった正解も見いだせませんでしたし、また、そのような正解は一律にはないのかもしれません。
あくまで参考のひとつとして。
唐突ですが、いつか未来に、自由にどの惑星にも行けるようになったとき、その星に過去に文明があったかどうかを見極めるには、幾何学的な直線や形状をさがせばよい、自然はそのような線を生まないから、ということを読んだことがあります。
同じように、ひとの目はどこかにきれいな直線をみると、それは人工的なものだという判断を直感的にしているようです。そのため、有機系のオブジェクトのCG感を薄めようとするなら、そのような直線をひらすら排除するのが近道のようです。手間はかかりますけど。