文系の blender 4.3 トポロジーとは。または、トポロジカルに正しい球について
3D モデリングをしていると、ときおり、トポロジーということばを耳にすることがあります。わたしも記事のなかで、なにげなく使っていることがありますが、どこか理解が曖昧なままですので、いちど整理してみようと思います。
環境 Blender 4.3.0 , Mac Mini M1 OS 14.4
トポロジー?
トポロジー(Topology)とは、数学の用語でいえば位相幾何学のことで、それは、「図形を構成する点の連続的位置関係のみに着目してその性質を研究する学問」であり(Wikipedia)、文系的にも少なくともその歴史的な側面などは興味深いが、もちろんここでは、以降、数学は出てこない。ご安心ください。
blender 的に翻訳するとしたら、モデリングにおけるトポロジーとは、頂点とそれによって構成される辺や面がどのように置かれているか、つながっているか、を指すものといえるだろう。
なぜトポロジーが必要なのか?
トポロジーに敏感なのはとくにキャラクターモデリングの分野だろう。なぜなら、機械部品などにくらべて、ひとの表面、とくに顔は、有機的に変形させる必要があるためだ。正しいトポロジーで構成されていないと、どこかに破綻が起き、顔の表情などが自然にみえない。
正しいトポロジーとは
では、正しいトポロジーとはどのようなものか? さまざまな側面があり、簡潔な答えは必ずしもないが、一例として、次が考えられる。
必要に応じて、面が均一に配置されている
上のモデリングでも、面はある程度均一に配置され、また、細かくすべきエリア(眼の口の周囲など)は、面のサイズが小さく、あまりその必要がない頭頂部などは、大きい。目もとや口もとはよく動くし変形するが、頭部は変形する必要がほとんどないからだ。
適切に接続されている
これも上の例では、目もとの面を意図的に環状に接続し、眼を閉じた際などに面の変形が不自然にならないよう配置されている。
すべて 4 辺の面で構成されている。
上のモデルでは、5 辺以上や、3 辺の面は混在していない。すべて 4 辺の面で構成されている。面の接続がスムーズで、必要な場所にループカットが入りやすい、などのメリットがある。
当然、トポロジーは、レンダリングにも影響を与える。レンダリングとは、ある意味、オブジェクトの面に当たった光がどのように跳ね返りカメラに届くか、の計算結果であり、正しくないトポロジーのオブジェクトは光の反射を正しく計算できず、リアルな結果を得ることができない。
身近な例が、デフォルトの UV 球だ。本来、球の表面はどこも均一であるべきだが、上部と下部に面が集中し、しかも、3辺の面で構成されている。
つまり細かくいえば、デフォルトの UV 球は、「正しくない」トポロジーで構成された球であり、シェーディング/レンダリングにも悪影響を与えているということになる。
トポロジー的に正しい球の作り方
デフォルトの立方体にレベル 3 のサブディビジョンサーフェスをかけ、ジオメトリに「適用」する。
編集モードで全選択、メッシュ > トランスフォーム > 球状に変形 を実行
細かくみると、下の頂点付近のみやや表面の乱れがあるので、
選択後、選択 > 類似選択 > 隣接面の数 を実行(計 8 頂点が選択される)
S キーで、ごくわずかに内側に移動させる
すべて 4 辺の面が「ほぼ」同じサイズで均一に配置された、トポロジー的に理想に近い球ができた。
トポロジーの足し算、引き算
単純な球でさえ、正しいトポロジーで構成するのはすこし手間がかかり、キャラクターのようなより複雑な形状のオブジェクトでは、ある程度の熟練が必要だ。
ただ、そのようなモデリングでよくある、異なる数の辺同士を接続しなくてはならない場合でも 4 辺を保ちながら接続する方法を知っておくと役に立つだろう。
2 to 1 , 1 to 2
1 辺と 2 辺を接続。F キーで接続した後、K キーで下のようなカットをいれる。
3 to 1 , 1 to 3
5 to 3 , 3 to 5
これらの面はすべて、4 辺でできている。上の組み合わせで、すべての異なる数の辺間を「正しい」トポロジーを保ったまま接続できるだろう。
まとめ
「トポロジを取り締まる保安官はいません」(Alex Alvarez)
膨大な数のポリゴンからなるスカルプト系のモデリングをするひとならば、もちろん、面の適切な配置や、多少のトリゴン(3辺の面)の存在を気にするのは些末なことで、単なる時間の無駄に過ぎないといえます。また、ポリゴン数の少ないローポリー系のモデリングも同じです。
正しいトポロジーを必要とするかしないか、また、正しいとはどのようなトポロジーか、というのはモデリングの対象やスタイルによっても異なり、単純な正解はありません。ただ、モデリングをする上で、すこし頭のすみに入れておくのも決して無駄ではないでしょう。参考まで。