学校に居場所を失くした少女の前で鏡が光る。 通り抜けると謎の城。 集められた七人に見つかる共通点。 しかし、新たな謎が解けないまま事件は起こる…… (以上は短く一言だけの簡潔版のあらすじ。もう少し詳しい長めのあらすじはこのページの下の方にあります) 小説『かがみの孤城』(辻村深月作)については、すでに、作品論『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(2023年1月、彩流社刊)を出版していますが、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』は、あくまで、小説読了後または映画鑑賞後にお
【あらすじ】 花火大会の夜、僕は、屋台の店の前で見知らぬ少年が怪しい男にチケットのようなものを渡して花火のようなものを受け取るのを目撃する。不審に思った僕は、少年を追って、テントの中の不思議な街に入り込み、懐かしい駄菓子屋さんや「さやちゃん」の姿を見る。少年が落としたチケットはテントの街の駄菓子屋さんのチケットでもあり、病院の外出許可証にもなり、テントの中のステージの上では、僕は、いつのまにか出演者にもなってしまう。謎が謎を呼ぶ中、僕は、「使ってはいけない」コインを持って、駄
2月25日(23年)に投稿したエッセイ「映画『かがみの孤城』、原作と比べると」の中で、原作のラストが、映画ではラストにならず、リオンの転校シーンの前におかれていたことと、映画のラストになったリオンの転校シーンでリオンにかなりはっきりとした城の記憶が残っているようにしたことについて、「残念な点」、「賛成できません」と書きましたが、この2点について、もう少し、書き加えておきたいと思います。 まず、映画でリオンに城の記憶がはっきりと残っているようにした点ですが、まずは、このことで、
小説『かがみの孤城』(辻村深月作)の21年発行のポプラ文庫版では、17年発行の単行本から、喜多嶋先生とこころの初対面シーンでの「それ以降、会話が途切れた」の一文が削除されていることは、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(北村正裕著、23年1月、彩流社刊)でも触れましたが、その一文の削除の意味について、少し、書いておきたいと思います。 まず、『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』第二章では、次のように書きました。 こころが母親に連れられて初めてフリースクール「心の教室」
『「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生』(北村正裕著、2023年1月、彩流社刊)の第一章では、小説『かがみの孤城』(辻村深月作)が、2013年~2014年の「asta*」連載では完結せず最初から書き直した上で連載版とは矛盾さえする当初の想定外の結末を持った物語として生まれ変わって2017年の単行本が出版されたという経緯を紹介しましたが、連載という書き方について、『Another side of 辻村深月』(辻村深月著、2023年3月、KADOKAWA刊)に掲載されている辻村深月
映画『かがみの孤城』は、原作小説と比較し違いに着目して、アニメ映画という表現手法の特徴をうまく生かせた部分、そして、約600ページの大作を2時間にまとめなければならなかったこと故に原作の良さが生かしきれなかった部分もあると思いますが、それぞれ、少しずつ記しておきましょう。 アニメならではのうまい表現ということでは、終盤の光の階段を挙げたいと思います。×マークがこころの手の中にはいったり飛んでいったりと大活躍だったのもアニメ映画ならではの表現ですね。そして、大時計の内部の映像
「夕焼け雲」(北村正裕作詞・作曲・歌・絵) 2011年8月25日、御茶ノ水KAKADOでのライブ音源使用。 アルバム「宝石の作り方」収録の音源とは別の音源です。
その年の夏は、特別な夏だった。「悪い病気が流行っているから」と、どこにも遊びにいってはいけないと言われていた。でも、特別だったのは、それだけではなかった。 僕は、毎年、家族で出かける河原に、ひとりで行くことにした。誰にも言わずに。 「今年は特別だから」 そう言われても、僕は、納得できなかった。 来年の春には、遠くへ引っ越してしまう。 だから、あの大好きな河原でのバーベキューや水遊びも、今年の夏が最後なのだ。 それなのに。 行けないなんて寂しすぎる。 昔は、近所の家族とも一緒
『夢の中の第3村-「エヴァンゲリオン」「まどかマギカ」と「かがみの孤城」の芸術論』(北村正裕著、2022年1月、Kindle版電子書籍)は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を含むアニメ『エヴァンゲリオン』シリーズ(庵野秀明総監督)と『エヴァンゲリオン』の強い影響を受けて生まれたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(新房昭之総監督)、そして、『まどかマギカ』によって定着したパラレルワールドの考え方を土台にし、『エヴァンゲリオン』と同様に、居場所を求める孤独な少年少女たちの物語でもあ
小説『かがみの孤城』(辻村深月作)は、雑誌「asta* 」の二〇一三年一一月号~ 二〇一四年七月号と二〇一四年九月号~二〇一四年一一月号に連載された後、大改訂されて二〇一七年に単行本が出版されたという経緯があります(二〇二一年の文庫版は、二〇一七年版とほぼ同じ)。そして、十七年版での感動的なラストは、連載版にはないばかりか、連載版の内容は、十七年版の結末とは矛盾してしまうものになっています。連載版は、後の十七年版の途中までの内容になっていて、連載は、終了というより中止と言った