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フォノケーブルは奥が深い
前項でも紹介したが、AT-LP8Xには実に立派なフォノケーブルが付属している。単体で発売したら、1万円ではとても売れないんじゃないかというレベルの、太く作りの良いケーブルである。
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"オマケ"というにはあまりに立派なケーブルだが……。
■LINEとPHONOで音決めの要素が違う!?
これはあくまで私自身の実験的仮説でしかないのだが、フォノケーブルとLINE系のインターコネクト・ケーブルは、たとえ同じ両端RCAのタイプであっても、音の項目を決める要素が違ってくるのではないかと感じている。
具体的には、概してLINEでは芯線を太くした方が力強い音が出るが、フォノではむしろ音の機動力が失われがちで、生硬な音になることがある。また、シースでしっかり締め上げた堅めのLINEケーブルは、音もがっしりと締まることが多いが、フォノでは大丈夫かこれ、と思うくらい柔らかくヘナヘナのケーブルでも、意外なくらいパリッとした好ましい音を奏でることがある。電圧の強さが大ざっぱにいって100倍ほども違うのが、その理由ではないかと推測している。
■反則気味だが、細いインコネを使ってみる
もちろんエージングも未だしの感が強いし、このまま鳴らし続けるのが正解なのだろうとも思うのだが、全体に中高域が張った傾向の音は、ケーブル交換で解消させられるな、という手応えがある。
そこで、非常に廉価なものだがオーディオテクニカのLINEケーブルAT564Aにつなぎ直してみる。もちろんアースケーブルは付属していないから、付属ケーブルのアースをつないだまま、信号線のみをこちらへ変更するという格好だ。
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何年も前から廉価クラスRCAケーブルならコレ! と頼りにしてきたが、
入手できなくなってしまった。残念の極みだ。
AT564Aは最廉価クラスのわがリファレンスとして長く働いてもらっているもので、エージングが万全にできているという項目ももちろんあるだろうが、音質の変化は劇的なものだった。中高域にどことなく張ったような印象があった帯域バランスがスッキリと整い、細かな音がどんどん再現されてくる。前述の通り、細くてしなやかという項目がフォノにも上手くマッチしてくれたということではないか。
■好結果なのに、生産完了だと!?
1,000円ちょっとで買えるケーブルだし、最初の変更にぜひお薦めしたい、と書こうとしたら何たることか、このタイミングで同ケーブルが生産完了になってしまっているではないか。つい2~3カ月前にはラインアップへ入っているのを確認していたのだが。なじみの販売店に店頭在庫が残っていれば、ランチ1食分+αで購入できるケーブルだから、見つけた人はぜひ試してみてほしい。
余談になるが、個人的にまたこのクラスでちゃんと使えるケーブルを探す旅へ出なければならなくなった。まぁ諸物価高騰の折だけに、同じ価格で同等のケーブルを新発売することは、かのオーディオテクニカでも難しいだろう。少し値段が上がっても、こういう使いやすくビギナーが手を出しやすいケーブルの系譜を続けてほしいものではある。
■LINEケーブルを流用するならアースは自作で
この手のLINEケーブル流用フォノケーブルを実験する場合は、アースケーブルを用意せねばならない。昨今はアースケーブルも開発が進み、製品数が激増したのは歓迎したいのだが、廉価なLINEケーブルを実験するのに市販のアースケーブルを導入したら、下手をするとアースの方が高いなんて笑えない話にもなりかねないから、ここはひとつ自作へチャレンジしてみるのもよいのではないか。
アース線を自作するなら、単芯線の両端に小ぶりのYラグを取り付ければ立派なものだし、簡易的には先端1~2cmの被覆を剥き、アース端子へ巻き付けて締め込むだけでも当面は構わない。アース線で大いに音が変わることは、私自身何度も確かめているが、その実験はより高度なフォノケーブルを導入なさってからでもよいだろう。
オーディオテクニカのフォノケーブルは、現在は同社の最高峰EXCELLENCEシリーズ(冒頭写真がそれ)にしか存在しないようで、何とAT-LP8Xよりも高価についてしまうから、同社には申し訳ないが、他社製品から手頃なものを探し、実験を続けることとしよう。
言っても詮無いことながら、AT564Aフォノケーブル流用時の音を多くの読者へ実験してもらえなかったことが、残念でならない。本腰を入れて代替ケーブルを探そう。
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これが実にいい感じの再生音が楽しめる。
純粋にインコネとして単売してほしいくらいだ。
■付属フォノケーブルをLINEで使ってみたら
それでも、付属フォノケーブルがあまりにも立派なものだから、ディスクプレーヤーにつないで音を聴いてみたら、ワイドレンジで情報量多く高品位の素晴らしい再現を聴くことができた。素性は非常に良いケーブルのようである。しばらくディスクプレーヤーでエージングして、しっかりこなれたところで再びフォノケーブルの任務へ戻してみるか。