炭山アキラ

自作派オーディオライターとして、音元出版や音楽之友社で試聴記事並びにスピーカー工作記事…

炭山アキラ

自作派オーディオライターとして、音元出版や音楽之友社で試聴記事並びにスピーカー工作記事を執筆しています。2024年2月に閉局した衛星ラジオのミュージックバードで、オーディオみじんここと荒川敬さんと一緒に、「オーディオ実験工房」という番組のパーソナリティを、まる9年間務めました。

最近の記事

「オウサマペンギン」補遺〜その2〜

■大口径フルレンジの高域は使えない!?  長岡鉄男氏が亡くなられたのは2000年の5月だった。それから程なくして、フォステクスのFEはFE-Eシリーズにモデルチェンジし、オリジナルFEの中高域にいつも存在していた雑味、ガサつきが消え去った。同社のエンジニアとしても、長岡氏に音が聴かせられなかったのは痛恨だったろうし、私たち長岡ファンにとってもそれは同じだった。  そのFE-Eにしても大口径、特に20cmはトゥイーターなしで使用する気にはちょっとなれなかった。オリジナルFE

    • 「オウサマペンギン」補遺〜その1〜

       月刊ステレオ2024年10月号で発表した、フォステクスFE203Σ-RE搭載の鳥型バックロードホーン(以下BH)「オウサマペンギン」は、3ページの紙幅にはとても収まり切れない内実を有する。それで、膨大な補足を私のnoteを用いて行うこととした。 ■見た目の平凡さにダマされるな!  まず、FE203Σ-REの解説から補足しようか。振動板素材については誌面でも触れたが、この針葉樹未晒しパルプ(NUKP)というのが、今作の音質形成における、非常に大きな要素となっているのではな

      • アキュフェーズDF-75をもうちょっと追試する

         アキュフェーズのデジタル・チャンネルデバイダーDF-75の返却期限が近づくに連れ、どんどんやりたいこと、「ここはこうすればいいんじゃないか!?」というひらめきが続出している。手元にある間にやれる実験はやり尽くしてしまわねばならない、という勢いで、締め切り真っ最中だというのにこんなことをやっている。 ■ミッドバス・ワイドレンジ化計画その2  今回の思いつきは、またしてもミッドバスだ。そもそもこのミッドバス・キャビネットは、前にも解説したが「逆ホーン型」というもので、理想的

        • アキュフェーズDF-75をさらに追試する

           前回はアキュフェーズのデジタル・チャンネルデバイダーDF-75を追試すると称して、季刊オーディオアクセサリー第194号に掲載した記事の補遺を行ったわけだが、このDF-75というマシン、実に奥が深くて次から次へとやりたいことが出てくる。今回は短文になるが、新たに発見したチューニングを書き留めておくこととする。 ■ミッドバスをより広帯域に活かす方法  前回ボヤいた、ミッドバスに使用しているフォステクスFE168SS-HPをごく狭帯域にしか活用できていない件だが、同ユニットの

        「オウサマペンギン」補遺〜その2〜

          アキュフェーズDF-75を追試する

           発売中の音元出版オーディオアクセサリー194号(2024年秋号)で、アキュフェーズのデジタル・チャンネルデバイダーDF-75を、わが家の4ウェイ・マルチアンプ・スピーカー「ホーム・タワー」で使ってみる実験を行った。 ■「限界マルチ」だが結構な実力派のスピーカー  ご存じない人のために、わが「ホーム・タワー」の陣容に触れておこう。もう製作してからずいぶんになるので、残念ながらすべてのユニットが生産完了となってしまっており、このまま皆さんに追試していただけないのは心苦しいが

          アキュフェーズDF-75を追試する

          イタリア人の作ったネットワーク・プレーヤーにノックアウトされた話

          ■縄文時代のネットワークオーディオ!?  いろいろなところで恥を忍んで書いているが、私のネットワーク環境はまったくもって貧弱の極みだった。パイオニアのユニバーサルBDプレーヤーBDP-LX58のネットワーク再生機能を、何の工夫もなくそのまま使っているだけだったのだから。  何といってもBDP-LX58、スマホやタブレットをリモコンにすることもできず、PCモニターをつながなければCD/SACD再生以上のことが何もできず、モニター上で操作しようにも本体リモコンは実に気が利かず

          イタリア人の作ったネットワーク・プレーヤーにノックアウトされた話

          思いがけず始まった犬とヘッドホンとの同居

          犬と同居するリスニングルーム  唐突な話で恐縮だが、わが家に家族が増えた。といっても、当年取って17歳の老犬だ。ちょっと可哀想なやつで、これまで2人の飼い主から手放され、わが家へやってきた。もちろん、先代2人にはそれぞれ事情があるため、一概に責めることは適当ではないが、少なくともこの犬には何の罪もない。私は少年時分に実家が犬を飼っていて、まぁそれなりに犬との付き合い方も心得ているから、妻の反対を押し切って、それじゃうちで面倒を見るよ、と大見得を切ってしまい、それでわが家へや

          思いがけず始まった犬とヘッドホンとの同居

          ムジカノートと廉価ケーブルの一方的コラボ

          共感する点の多いムジカノート  非常にエッジの立ったモノづくりを展開されているムジカノートの山本雄一代表が、noteでも情報を発信しておられる。ローコストで高音質のシステムを構築するための、自作やオペアンプ交換を含めた提案が進んでいる。ご本業でもいろいろ面白い機器を開発なさっているし、その上noteまでとは、本当にフットワークの軽い人だと敬服するところだ。 MusicaNote 山本雄一 https://note.com/musicanote707  そんな山本代表の最

          ムジカノートと廉価ケーブルの一方的コラボ

          中高年アナログファンへの福音!

          38歳で訪れた老眼に悩む  私は家系的に遠視の気があり、小学生の頃など右目2.0、左目1.5くらいは楽にあった。こういう人間はほとんど必然的に老眼の訪れが早く、初めて+0.5の軽微な老眼鏡へ頼ったのは確か38歳くらいだったと記憶する。  同居していた母方の祖母は裁縫の先生をやっていた人で、ほとんど家族全員の着物は祖母が縫っていたし、ちょっとした繕い物などは待っている間に仕上げてくれたものだ。  しかし、明治22(1889)年生まれの祖母ゆえ、私が幼い頃にはもう老眼鏡をか

          中高年アナログファンへの福音!

          見くびっていた! AT-ART7への詫び状

           わが家のアナログ周り、なかんずくカートリッジやシェル、クリーナーなどの周辺機器は、オーディオテクニカ製品が多くを占める。アマチュア時分から同社製品はいろいろ購入して使ってきたし、今の仕事を始めてからも購入したものあり、長期テスト名目で借り出したものあり。いつの間にかすっかりメイン・リファレンスとなった感が強い。 "片鱗"も見ることなく仕舞い込んだ名作  そんな中で、借り出したものの使いこなすことができず、リスニングルームの片隅でアクビをしていたカートリッジがある。1世代

          見くびっていた! AT-ART7への詫び状

          伸びしろ大! ネットワーク・オーディオで小実験

           わが家のネットワーク・オーディオ関連は至ってささやかなものでしかなく、あまり読者の皆さんへ胸を張って紹介できるような代物ではない。しかし、それでもハイレゾ音源の旨味をそこそこ味わうことができているようには感じられている。  陣容は、古いパイオニアのユニバーサルBDプレーヤーBDP-LX58に内蔵されたネットワーク機能を用い、I/O DATAのオーディオ用NAS「RockDisk」HLS-C1.0HFへ格納した音楽データを再生している。いずれもローエンド製品といってよいもの

          伸びしろ大! ネットワーク・オーディオで小実験

          ケーブルインシュレーターは面白い

           今出ている音元出版「analog」誌Vol.82の22~23ページに掲載されている読者訪問欄「レコード悦楽人登場!」は、私が訪問並びにリポートを担当した。詳しくは誌面をご覧いただきたいが、ご登場願った松田學さんは、とにかくスピーカーからラックからチェアから部屋に至るまで何でもご自分で製作され、しかもその出来栄えが完全に玄人はだしという、素晴らしいDIYスキルをお持ちだ。私もスピーカー自作派の末席を汚しているが、おそらく300年かけても松田さんの足元に及ぶことがないだろう。

          ケーブルインシュレーターは面白い

          プリを変更、劇的な音質向上にたまげる

           わが家のリファレンス装置は、スピーカーユニットにフォステクス、カートリッジはじめアナログ関連機器にオーディオテクニカ、そしてアンプ群にアキュフェーズがないと成立しない。このところ海外製品が多勢を占めるオーディオ界にあって、改めてわが家は日本ブランド製品が多いのだなと、今回の原稿を書くに当たって再認識した。  とはいえ、私は別に国産品愛好者というわけでもない。カートリッジにはオルトフォンやシュアといった海外勢もリファレンスに加わってるし、そういえばレコードクリーニング・マシ

          プリを変更、劇的な音質向上にたまげる

          訃報:ダブルウーファーズ会長 永瀬宗重先生

           それはゴールデンウィークが始まって程ない4月30日、季刊誌と月刊誌の締め切りが重なるタイミングで、ヒイヒイいいながら原稿を書いていたら、1通のメール着信に気が付いた。 ■人生の師、喪失を伝えた1通のメール  表題の言葉は、私には何を書いているのかしばらく判別できなかった。何度も見返してやっと分かったその一文には、「永瀬宗重氏、訃報の件」と書かれていた。何……、だと!  永瀬宗重(ながせ・そうじ)先生。わが地元、茨城県守谷市の地域医療を支える内科医にして、多分日本一活発

          訃報:ダブルウーファーズ会長 永瀬宗重先生

          【オーディオコラム 第1回】アナログ再入門ガイド補遺

          ■終了したコラムの続きをここで  ミュージックバードのウェブサイトには「オーディオコラム」という連載があって、当初は村井裕弥さん、鈴木裕さん、田中伊佐資さんのお三方で回り持ちされていた。ところが村井裕弥さんは2018年に急逝されてしまい、後任に私が起用されたという次第だ。今から4年前、2019年4月のことである。  それからちょうど4年間、毎月1回のオーディオコラムを担当してきたが、2024年の2月いっぱいをもってミュージックバードの会員向け音楽放送が終了することに伴い、

          【オーディオコラム 第1回】アナログ再入門ガイド補遺

          【北守谷スピーカー工房】Vol. 1「ジェネリック650」の製作

          スピーカー工作の記事は、「北守谷スピーカー工房」というシリーズでお届けしたいと思います。第1作は、前からどこかでまとめなきゃいけないだろうなと考えていた「ビギナー応援企画」としました。要は電動工具なしでスピーカーを作ることはできるのか? という疑問に答える製作記事ですね。結論からいえば、手動工具がいくつか必要になりますが、電動工具一切なしでスピーカーを作ることは可能です。 せっかくのビギナー企画なのだから、作るスピーカーがあまり大きくては入ってきにくくなるし、かといってオモ

          【北守谷スピーカー工房】Vol. 1「ジェネリック650」の製作