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自作派ライター還暦前の再挑戦

皆さん、こんにちは。オーディオライターの炭山アキラです。はじめましての人も多いかもしれませんね。私、炭山アキラは、音元出版の季刊「オーディオアクセサリー」、同「アナログ」、また音楽之友社の月刊「ステレオ」などの雑誌で、オーディオ機器の試聴記事や読者訪問記事などを執筆しています。

 私は「自作派オーディオライター」を自称しており、といってもスピーカー工作が主となりますが、「ステレオ」誌をメインに時々作例を発表しています。

 その昔、共同通信社から季刊「オーディオベーシック」という雑誌が発売されていました。私はその雑誌の前身というべき「AV FRONT」という月刊誌へアルバイトで潜り込むことからオーディオ業界のキャリアをスタートさせ、働きながら仕事を教わって編集者となり、隣の隔週刊「FMfan」誌のオーディオ担当者となりました。そこで亡くなられたオーディオ評論家の長岡鉄男氏の担当編集者、いわゆる"長岡番"記者となり、氏が亡くなられるまでの6年間、試聴記事に読者訪問にスピーカー工作にと、数々の取材へ立ち会い、ページを編集してきました。

共同通信社・刊「オーディオベーシック」Vol.64最終号。別冊FMfanからAV FRONTを経て小休止、「はじめてのオーディオ」というムックを挟んで創刊したオーディオベーシックは、16年後にその看板を下ろすこととなる。


 ところが2000年の5月に長岡氏が急逝され、当時のわが仕事は完全に瓦解しました。FMfanの他に衛星放送情報誌のBSfan、前述のオーディオベーシックでも長岡氏とともにいろいろな企画をやってきましたが、それらが一斉になくなってしまったわけです。

 収入面での打撃もそれはそれは大きなものでしたが、それより何よりオーディオの、そして人生の師匠を失ってしまった精神的なショック、そして「書いてくれる人」という編集者にとってのタッグ・パートナーを失ってしまったことが、あまりにも大きな痛手でした。おかげで2~3カ月、まるで仕事が手につかなかったくらいです。

共同通信社・刊「開拓者 長岡鉄男」。長岡氏の追悼ムックで、自分が所属していた編集部が作ったにもかかわらず、炭山は当時放心状態で1文字たりとも参加できなかった。おかげで、明らかに長岡氏の製品テストへ参加したことのない人間が作ったと丸分かりのページもあり、出版されてから頭を抱える仕儀となった。


 でも、長岡氏と一緒に氏が一生取り組み続けられたスピーカー工作の世界まで下火にさせてしまっては、私も泉下へ旅立った後、師匠に合わせる顔がなくなります。それで、「火を消すな!」を合言葉として、ステレオ誌で「今月の変態ディスク選手権!」をともに連載するわが相棒・高崎素行さんや、オーディオビジュアル評論家の市川二朗さんたちと、ジャンルを分担しつつ細々ながら氏の衣鉢を継ぐ活動を続けてきた、という次第です。

 私は専ら、バックロードホーン(BH)を中心とする自作スピーカーのジャンルを受け持ってきました。オーディオベーシック誌で必ず1号に1本以上、多い年は季刊誌だというのに年間10作以上のスピーカーを掲載したこともあります。BHに共鳴管、TQWTに逆ホーン、もちろんバスレフやダブルバスレフ(DB)、密閉型も数々作りに作りました。


オーディオベーシックで作ったスピーカーはもう大半を人手に渡してしまったもので、手元に残っているのはこの作例を含めごく僅かだ。これは掲載時に確かペットネームをつけなかったが、搭載ユニットが伊SICAのZ002320ゆえ、構造からして「ジェネリック2320」ということになる。


 そのオーディオベーシック誌は2012年に同社の季刊PCオーディオfanと統合し、Gaudioという名で新創刊を果たすのですが、何たることか3号で休刊となってしまったではないですか。1970年代の初頭頃に創刊された別冊FMfanから、僅かな休止期間はありましたがほぼ連綿と続いてきた共同通信社のオーディオ雑誌の命脈が、ここで完全に絶たれたということになります。

こちらが新創刊のGAUDIO第3号。即ちこれにて文字通り一巻の終わりとなった号である。この号で私は高級ユニットを使った2ウェイ・バスレフ型の作例を発表しているが、雑誌は潰れるわその後すぐに採用ユニットもディスコンとなるわ、散々の目に遭ったものだ。


 それまで、自作スピーカー系の記事を載せる雑誌は前述ステレオ誌と誠文堂新光社の無線と実験誌、そしてオーディオベーシックの3つがありました。ステレオには浅生昉(あさお・あきら)氏、無線と実験には小澤隆久氏、そしてオーディオベーシックには私と、それぞれメインのスピーカー工作記事担当ライターがいる、という状態でしたね。

 ところが、わがメインフィールドたる雑誌がなくなってしまった。オーディオベーシックではそれ以外にもライターとして結構仕事をしていたし、財政的にもかなりの痛手でしたが、やっぱり一番キツかったのはスピーカー工作の現場が失われたことでした。それでステレオ誌へお願いに行き、時々は作らせてもらうという状況で、とりあえずの小康を得たという次第です。

月刊ステレオ2017年12月号。この号から2号にわたり、私は現時点の個人的最高傑作というべき鳥型BH「ハシビロコウ」の製作記事を連載した。もちろん今もわが絶対リファレンス・スピーカーの位置は揺るがないし、今後これを超える作品を作ることができるかと自問自答している。


 しかし、先方にはやはりメインライターがおられるし(浅生氏はご引退のようですが、ワイエスクラフト佐藤勇治氏が引き継いでおられる模様です)、あまり無理をいうわけにもいきません。でも、スピーカーユニットの大手フォステクスや輸入元の横浜ベイサイドネット、六本木工学研究所などが応援してくれることもありますし、何より私自身やりたい実験が溜まっちゃって、もう身動きが取れなくなってきたというのが実情です。

 そこでこのたび、製作動画をYouTubeで上げつつnoteで図面と文章を発表し、スピーカー工作の記事を作っていくことにしました。多くの人に読んでもらいたいので基本的に無料ページですが、図面を掲載した回のみ100~500円くらいの有料記事にさせて下さい。

 雑誌記事の取材・執筆で忙しい時期はどうしてもアップする頻度が下がりますし、年間何本の工作記事が挙げられるかは分かりません。還暦手前のくたびれた男が1人でどこまでやれるかも全く未知数ですが、長い目で見守っていただけると幸いです。





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