イベント報告〜10月5/6日コイズミ無線〜
■10月5日はフォステクス主催
去る10月5日(土)、東京は秋葉原のコイズミ無線店頭にて、私の設計したバックロードホーン(以下BH)「オウサマペンギン」の発表セミナーが開催された。「オウサマペンギン」について詳しくは、月刊ステレオ誌の2024年10月号と、本noteの補遺ページをご参照いただけると幸いだ。
「オウサマペンギン」補遺〜その1〜
https://note.com/kitamoriya_craft/n/n236b85c97fc2
「オウサマペンギン」補遺〜その2〜
https://note.com/kitamoriya_craft/n/nf230533ca999
■会場を埋めるお客様に深く感謝
午後1時の開始時刻はおろか、既に午前11時頃から椅子は埋まってしまい、お立ち見も店の半分以上を埋める勢いで、開始を前倒しすることに。いつもながら、熱心な自作派のお客様には感謝の他ない。
当日はフォステクスがアキュフェーズから機材を借り出してくれていた。SACDプレーヤーのDP-570とプリメインアンプE-5000という、贅沢な組み合わせだ。残念ながら私は物の整理が苦手なもので、2時間のイベントを埋められるCDを持参することがなかなか難しい。それでPCからUSB→DDC経由で、DP-570のTOS入力へハイレゾ信号を送り込む方式とした。
ユニットのFE203Σ-REと「オウサマペンギン」について解説しながら、まずトゥイーターを載せない状態で音を聴いてもらう。クラシック、ジャズ、ポップス、アニソン、変態ソフトとガンガンかけまくったが、私の耳には取り立てて音楽ジャンルの向き/不向きは感じられない。
■T90Aの威力は大したものだ
補遺の2で公開したf特では、10kHzから上がダラ下りになっていることが分かるが、それでも再生される高域の品位は高く、1発でも十分実用に堪えることがお分かりいただけたのではないかと思う。
しかし、ホーン型トゥイーターのT90Aを載せると、文字通り世界観が一変する。音場は澄み切って大きく広がり、弦はきめ細かく艶が上質となる。声も伸びやかで抜けが大幅に向上し、メタルパーカッションが炸裂するジョージ・クラム「星降る夜の音楽」は、もうまるで別物の演奏になってしまったような違いを聴かせる。
というわけで、限定のΣを先に買ってBHを作り、懐具合が整って、あるいは奥様の顔つきが穏やかになってからT90Aを追加購入するというのは、全く理にかなった道筋だと考える。
■プリメインでも"大砲"は鳴らせる!
E-5000は240W+240W(8Ω)という怪物プリメインで、結構広いコイズミ無線の店内いっぱいに、高崎素行さんが生録された戦車砲が轟き渡った。自宅では200Wもあればまぁまぁの迫力だが、店頭で同じくらいの迫力を味わってもらおうとすると、ここだけの話400Wくらい入っていたようだ。瞬間的になら、アキュフェーズがそれくらいの許容限度を持つという証明でもあるし、「オウサマペンギン」へマウントしたFE203Σ-REもそんな恐ろしい使い方に音を上げなかった。両者とも、本当に大したものである。
こういうことをして遊んでいると、2時間なんてあっという間に過ぎ去ってしまう。大砲や平野一郎「春夏秋冬の音楽」など、最前列のお客様が防音イヤーマフをかけられるような強烈変態ソフトもかけたが、それでもお客様が逃げ出すこともなく、無事終了することができた。これはひとえにお集まりいただいた皆さんのおかげと、心より感謝申し上げる次第だ。
■機材も人員も大幅縮小の日曜日だが……!?
明けて翌日、10月6日(日)にも同じようなことをやっていた。会場も同じコイズミ無線だが、何と日曜定休なのに古参の店員さんに1人出てもらい、午後2時30分〜5時の2時間半、セミナーだけの開店ということになった。
当日は、コイズミ無線から徒歩数分の損保会館で、無線と実験誌が主催する「MJオーディオ・ラボ」というイベントが開催されていて、フォステクスもそこへブースを出していた。そこでΣ-REの取説に掲載されたCW型BHを聴いたお客様へ、「オウサマペンギン」も聴いてもらおう、という算段である。
■たった2万円の手のひらアンプなのに!
前日用いたアキュフェーズはMJラボのブースへ持ち込まれていたから、コイズミでは同店扱いの真空管+PWMハイブリッドアンプAIYIMA(アイワイマと読むらしい)のTube-T9Proを使った。メーカー希望小売価格2万2,366円(税込)という超廉価手のひらサイズアンプながら、100W+100W(4Ω)というオバケのような出力を発揮し、192/24対応のDACも内蔵、USB/RCA/TOSの入力に対応する、とてつもなく便利な代物だ。
ところが、残念ながらAIYIMAのUSBドライバが何故か解凍できず、前日と同じくDDCを用いてS/PDIFで入れることとした。
1時間ごとに行われるフォステクスのデモが終わるごとに、コイズミ無線でも炭山のセミナーをやっている旨、お客様へ伝えてもらっていた甲斐あって、延べにすれば十数人、常時10人近くのお客様が集ってくれた。実は前日、私が持っていくべき資材を自宅へ置き忘れ、やれなかった実験があるものだから、それを来場のお客様へ謝罪していたら、何と2日目にその実験を行うだろうからと、2日連続でお見え下さった人がおられ、恐縮至極だった。
■やっぱりレギュラーユニットと聴き比べなきゃね
忘れてきた資材とはほかでもない、FE203Σ-REと差し替えて音の違いを聴き比べるための、レギュラーユニットFE206NV2である。自宅で付け替えて音を聴き、補遺の2に記した個体そのものだ。
音を聴き比べて来場のお客様にどちらが好みかを伺ったら、見事に意見が割れたのが面白かった。NV2はΣ-REに比べて中高域が鈍いというか、歪みっぽい感じがするという人、NV2の方がハイスピードだという人、などなど貴重なご意見を頂いたが、Σ-REの方がコクが深く、NV2があっさりした味わいだというのは、ほぼ共通した印象ではなかったかと認識している。
ともあれ、自宅で実験した結果の通り、「オウサマペンギン」はレギュラーのNV2でも十分に駆動できることが分かった。もちろんΣ-REをご購入いただいた方が幸せになれる人が多数派であると信ずるが、生産完了後もこのBHの好ましさがずっと体験できるのは、設計者としてもありがたいところである。
トゥイーターT90Aは当初0.22uFのCXコンデンサーで鳴らしたが、やはり0.1uFのムンドルフへつなぎ直した方が、私個人は帯域バランスが整ったように感じた。感想を聞き忘れたが、クレームは出なかったので概ね正解だったのではないかと思う。
■若者よ、PWMアンプ+自作スピーカーを目指せ!
それにしても、AIYIMAのPWMアンプは凄い。ほんの2万円やそこいらで購入できる手のひらアンプが20cmBHを朗々と鳴らし、もちろん8Ωでは50〜60W程度であろうから、音量に限界は生じたが、高崎さんの戦車砲を結構な迫真力で鳴らしてみせたのだ。もちろんアキュフェーズと一緒にはならぬ。というより、そんなものなってもらっちゃ困るわけだが、私が学生時分に使っていたサンスイのプリメインアンプAU-D607より、ひょっとしたら駆動力は上回っているのではないかと驚かされた。
しかもこのTube-T9Pro、DACまで内蔵だから、PCからUSB接続で配信音源を鳴らすという装置を構築すれば、192/24までと結構な品位のハイレゾへ対応してくれる。最近になって、X(旧Twitter)上で昨今のオーディオ機器が高価すぎると嘆く大学のオーディオ研所属者の投稿が一部で話題となっていたが、最初はこんなアンプでいいじゃないか、と私は感じている。
■地方から参戦下さった皆さんに深く感謝
この週末は、2日とも地方からはるばるお見え下さったお客様が多かったことも、大変嬉しかった。名古屋のOさんとKさん、Oさんは大学教員で、学生さんも2人連れてきて下さった。奈良のYさんは9月の大阪は共立のセミナーへも参加して下さっていたそうだ。そして広島自作スピーカー界の重鎮Iさん。知己はあったものの、なかなかゆっくりお話できる機会がなくて、このたびはずいぶん話が弾んだ。新幹線は間に合われたろうか。
改めて、2日間に渡った前週末のFE203Σ-REと「オウサマペンギン」のセミナーは、大成功に終わったと申し上げてよいだろう。日程を調整し、機材を調達してくれたフォステクス、特に6日は定休日のところをわざわざ開けてくれたコイズミ無線、そして会場へご訪問下さった自作ファンの皆さまへ、心より感謝申し上げる次第だ。
■次もやりたいな、と考えてはいるものの……
こうなると、次も何かやりたくなってくるのが私の悪いクセで、しかし限定ユニットがそう再々出るわけもないので、ここは一つレギュラーユニットを使ってもどんどん作例を発表し、アキュフェーズは借りられなくともAIYIMAで何とかなると分かったから、コイズミ無線と相談して随時何かできればと考えている。
もっとも、還暦過ぎのくたびれた男のこと故、そう勢いよく量産するわけにはいかない。何かイベント・セミナーが打てそうなことになったら、当noteで告知するので、少し長い目で見守っていただけると幸いだ。