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のらねこ雑記帳《着物リサイクル前編》
「着物、全部売っちゃって!」と、母から許可が出たものの、このミッションにはいくつかの問題がありました。
造り付け収納の一番奥にある着物タンスの扉の前に整理タンスが置かれているのです。
母曰く
「あそこに入っていた着物は、全部手前の洋服タンスの下の引き出しに移したから大丈夫」とのことでした。
確かに引き出しからは、訪問着や留袖、袋帯などが出てきましたが
『いやいや、これだけではないはず…』と、私は
力まかせに、整理タンスを移動させて着物タンスを開きました。
予想通り、羽織や浴衣、幅の狭い帯、帯紐、襦袢、腰巻、足袋、ひもなどなど、出るわ出るわで
「どうしよう…これ」とちょっと途方にくれました。
どうやら母は高かった着物だけ移動させて、あとは封印して忘れ去ったようでした。
引き出しの他にも買った時の箱に入ったまま、一度も着ていない訪問着と帯のセットがあって
「これウン十万円したのよ(40年前)」と言う母に開いた口が塞がらない私でした。
今回は駅前商店街にある着物専門のリサイクル店に持ち込むつもりでした。
うちには車がないので1人で運べる量しか持って行けませんが、どう見ても1回では済みそうにありませんてした。
また、そのお店ではウールの着物は不可とHPに書いてありましたが、私にはどれがウールかもわからなかったので、とりあえず引き出しに移動していた着物と帯を一軍として持って行って、他にどんなものを買取ってもらえるか確認しようと考えました。
いつもフリマに行く時に使っている高さ60cmのキャリーバッグにパンパンに詰めて、更に箱に入ったままの訪問着セットを持ってバスで駅前に向かいました。
そのお店は1階が販売、2階が買取コーナーで
急な階段を重い荷物を持って上がるのが一苦労でした。
2階は、座敷の作業場のようになっていました。
入口で
「買取お願いします」と声を掛けると、3人のベテラン風女性スタッフさんが
「そこの椅子におかけください」と言って、私から荷物を受け取ると慣れた手つきで次々と着物を取り出し、すごいスピードで仕分けし始めました。
仕分けが終わった頃に、奥からこのお店の店主らしき白髪の男性が出てきて、着物のリサイクルについて丁寧に説明してくれました。
中古着物の市場があり、そこで取り引きされる値段を元に査定しますが、しみや汚れがあると値は下がり、着物としては取り引きできないものは、素材(布)として30〜50円ぐらいになると言われました。
「他にどんなものを買取ってもらえるんですか」と私がたずねると、浴衣や兵児帯、半衿や帯紐など着物に関するものは何でも買取ってくれるとのことだったので、後から出てきた2軍も持ってこようと思いました。
そして店主さんによる査定が始まりました。
店主さんが着物や帯の種類や色柄、そして値段を口頭で告げて、スタッフさんが伝票に書き込んで行きました。
結果は、着物、帯、半衿など19点持ち込んで
約9000円でした。
母がウン十万円と言っていた訪問着と帯は、合わせて2500円でした。
なにか『もののあはれ』を感じました。
でも素材扱いになったのは2点だけで、買取ってもらえないものはなかったので、良しとしました.。
(後半に続く)