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のらねこ雑記帳《エアコンクリーニング 後編》
エアコンクリーニング当日、やってきたのは、ややロン毛の横分け、メガネのひょろっとしたお兄さんでした。
ハキハキと礼儀正しいそのお兄さんは、脚立やポリタンク、床に敷くシート、周りを養生するビニールシートと機材の入った大きなバッグを持ち込み
「外したフィルターとかを洗うので庭の水道の場所を教えてください」と言いました。
『外で洗うんだ、マンションとかだと、どうするんだろう?』と思いながら
「裏に水栓があります。ホースが繋がっているので、ひねれば表でも水が使えますよ」と告げると
「ありがとうございます。ホースは持参しているので大丈夫です」と笑顔で答えました。
とりあえず、買い置きのペットボトルのお茶を1本お出しして、トイレの場所を教えて、私は2階に引っ込みました。
お昼前、いきつけのマッサージ屋さんから両親が帰ってきたので、入れ替わりに私は近所のコンビニにお昼を買いに行きました。
出かける時、正面の庭でお兄さんがエアコンのフィルターやカバーを水でガシガシ洗っていました。
よく見ると、ニット帽を被っていて
『野外作業は寒いから?それとも風が強くて長い前髪が邪魔になるから?』と思いました。
おまけに、北向きの庭は完全に日陰になっていたので、本当に寒そうでした。
なので、コンビニでHOTの缶コーヒーとどら焼きを買って、差し入れました。
居間で両親にコンビニで買ったお昼を渡すと父が
「作業の人、2人か?」と聞いてきました。
どうやら、中で作業をしている人と外で帽子を被ってフィルター洗っている人が別人と思ったようで、
1人だと知ると
「1人で、あんなに大掛かりにエアコン分解して、
洗っているんだ!」と、驚いていました。
10時から始めて1時過ぎに1台目が無事に終了し、次に2階の父の寝室をやってもらうことにしました。
「お昼休みは…?」と私がたずねると、お兄さんは
「あ、大丈夫です。先が長いのでこのまま続けてやっちゃいます」と元気に答えました。
『先が長いんだから、お昼取ったほうがよくない?』と思いましたが
『さっさと片付けたいんだろうな』と、私は夕飯の食材を買い出しに行きました。
『2台目以降はお掃除ロボットの1台目より分解は、楽なハズだから、2時間で2台目終わるかな?』と予想を立てて、私は2時間後に買い物から帰ってきました。
すると、お兄さんが父と話していて、私に気がつくと、お兄さんは何やら慌てた様子で、私に説明し始めました。
早口だったので、最初は何のことか分からなかったのですが、要約すると
「2台目を終了して、3台目のエアコンの事前チェックをしたところ、ちょっと暖まり方が悪く、ガス漏れかもしれないので室外機を調べたいのですが、どこにありますか?」とのことてした。
室外機は屋根の上と、答えるとお兄さんは
「屋根の上は2人で作業しなければならない決まりなので確認出来ないですね」と、悩ましそうに温度の数値などを出してあれこれ説明してくれましたが、要するに
『確定は出来ないけど、いずれは壊れそうなので、クリーニングするよりは、買い替えた方がいい』と受け取れました。
確かにこの冬はエアコンつけても暖かくないなと思っていたので、私の部屋のエアコンクリーニンはキャンセルとなりました。
思いがけず早めに作業が終了したお兄さんは、気が楽になったのか作業終了の書類を作りながら、2階に飾ってある私が高校時代に描いた油絵、特にルノアールのイレーヌ嬢の模写について、あれこれ聞いてきました。
彼自身は描かないようですが、印象派とか興味があるようで、私がルノアールの模写は大変だった話をすると
「モネだったらまだよかったかも」と言われました。(モネでも難しいと思いますが…)
こうして、わが家のエアコンクリーニングは概ね終了しました。
代金は町の電気屋を通じて請求されます。
新しいエアコンのカタログと共に。