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宮本常一は、常民をどのように定義していましたか?

宮本常一(1907-1981)は日本の民俗学者で、柳田國男の弟子として知られています。彼の「常民」に関する考え方は、柳田の概念を発展させつつ、独自の視点を加えたものでした。宮本常一の「常民」の定義について、主要な点をまとめると:

1. 生産者としての常民:
  宮本は、常民を主に農民、漁民、職人など、自らの労働で生計を立てる人々と捉えていました。彼らは自然と直接向き合い、生産活動を行う人々でした。

2. 文化の担い手:
  常民は伝統的な生活文化を維持し、世代を超えて伝承する役割を果たす存在として定義されました。

3. 支配層との対比:
  武士や貴族などの支配階級ではなく、被支配者層に属する人々を指しました。しかし、最下層の人々とも区別されていました。

4. 地域に根ざした存在:
  特定の地域社会に深く根ざし、その地域の自然環境や社会環境に適応して生きる人々としました。

5. 「無名」の人々:
  歴史書に名前が残らない、いわゆる「名もなき人々」を指しました。しかし、宮本はこれらの人々こそが日本の文化と社会を支えてきたと考えました。

6. 自立的な生活者:
  外部からの支配や介入に対して、ある程度の自立性を保ちながら生活を営む人々としました。

7. 共同体の一員:
  個人としてだけでなく、村落などの共同体の一員として生きる人々を指しました。

宮本常一の「常民」概念は、単なる社会的階層や身分を示すものではなく、日本の伝統的な生活文化を担い、維持してきた人々を総体的に捉えようとするものでした。彼は、これらの人々の生活や文化を詳細に記録し、研究することで、日本文化の本質を理解しようとしました。

宮本の視点は、「常民」を単に受動的な存在としてではなく、日本の文化と社会を能動的に形成し維持してきた重要な主体として捉えた点で特徴的です。​​​​​​​​​​​​​​​