ポテトサラダ
白い馬
転勤族だったわが家は、引っ越しを十数回繰り返してきました。その引っ越しのたびに、実家の両親は遠くから駆けつけて、娘家族のために喜んで力を貸してくれたのです。私にとって両親は何より心強い存在でした。
そんな引っ越し作業のなかで、忘れられない思い出があります。それは、残っている食材を使ってのポテトサラダを作ったときのことです。
買い置きしてあったジャガイモがたくさん残っていたこともあり、ニンジン、キュウリ、そして冷蔵庫のなかの残り物の食材を使ったポテトサラダは、皿に盛りつけると山盛りでした。その皿をテーブルに置いて食卓を囲むと、父は、「うまいなぁ。ホントにうまいなぁ……」と言いながら食べてくれたのです。娘の手作りが良かったのか、それとも、よほど空腹だったのか……。
荷造りに追われるなかで、慌ただしく作ったポテトサラダを「おいしい」と言う父の笑顔を見て、私はとても嬉しくなりました。そして、父の「おいしい」という言葉で、残っている食材やある物だけでつくる「あるものご馳走」が私の密かな自慢となり、毎日の食事づくりの原動力になっているように思います。
あれから20年以上の歳月が流れ、両親はこの世を去りました。しかし、いまは両親を偲び、命日はもちろんお彼岸やお盆には、必ずポテトサラダを作ってお供えをします。すると、「うまいなぁ」と言いながら、ポテトサラダをほおばる父の笑顔がまざまざと浮かんできます。
「お父さん、お母さんのおかげで、幾らかでもひと様に手を差し伸べられる私になれました」と手を合わせると、私の胸に温かなものが溢れてくるのです。
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