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読書会0110 「High and dry (はつ恋)」よしもとばなな


「読書会やっててよかったな〜」とミナちゃんが言った。なんとなく話したいというだけでzoomつなぎましょうっていうの、少しハードル高いもんね。楽しいね。にこにこ。

今年第1回目の読書会、私がオススメした本はこちらでした。


なんとなく、心が明るくなるようなかわいい恋の話をしたいな〜と思って選んだのだが、話しているうちに「そのキュウくんて…!ていうか男ってドイヒー」みたいな、男たちよ!論で盛り上がってしまった。登場人物・キュウくんの周りにはそれぞれに魅力のある3人の女性がいるのだが、女3人が束になってかからなければ、お母さんの愛に勝てないのか!ガッデーーム!という訳でもあるのである(3人でも無理だとおもう、実際のところ。かわいさにくるまれたリアルは、小説の大きな魅力です)。

3人のうち一人は中学生の夕子ちゃん。主人公です。絵画教室の先生であるキュウくんに恋をします。こんなにキュートでプラトニックな男女の関係が本当にあり得るだろうか?と、思う人はいるだろうか。私は、あると断言する。私は14歳の頃、夕子ちゃんとかなり似た経験をしていて、その人と過ごした何年かは自分の恋愛観と生き方に大きな影響を与えている。この本のようなカラフルさはなく地味な日常だったが、お父さんが単身赴任中の寂しさや、なんとなく居場所のない毎日や、だからこそ彼に会える習い事の日がキラッキラだったこと、パワフルで素敵な彼のお母さんに紹介してもらったこと、彼と話しているとぐんぐんと自分が伸びていく感じがするところ、自分でも自分の考えがいっぱいで混乱しているのに、彼と話すときは自分のことがよく理解できるような気がしたことなどなど、私は夕子ちゃんと即友達になれそうだと思った。週1回アイス食べていたところも一致(私のそのアイス屋が高田馬場だったところがなんか惜しい気がするが)。彼女の可愛さにビビったことも一緒。私は夕子ちゃんのようなかわいい性格ではなく、いまよりも頭のなかが言葉でいっぱいだった。私が大切に思っていた人はキュウくんよりずっと真面目で真面目すぎて、素敵な関係だった子ども時代を経て大人になったときに、もしかしてうまくいけばずっとうまくいくかもしれなかった私たちの間をぶち壊すように突然おかしな感じで距離を詰めてきて私たちは永遠に離れてしまった。あとからなんど考えても、どうやって一緒にい続けられたか分からない関係に少しずつ変わっていたからまあ、結果オーライなのだが、この小説の最後に、私はとても慰められた。最後の別れ方がどうだったとしても、あのキラキラした時間は本当だったんだと改めて思えたのだ。


読書会メンバーのミナちゃんは文芸誌の連載に挿絵を描いているイラストレーターで、そのとき自分がイラストを描いた柚木麻子さんの「Barきりんぐみ」という小説を紹介してくれた。キリングミーという名前だと思ったら幼稚園のママ友が集まる「きりんぐみ」でしたというBarの話。ははは!柚木さんの作品はなんだか凄みがあるというか、読んだ後謝りたくなることがあるのだが、これは面白そうだなと思った。

「書籍化するときにイラストがそのまま使われることはないの?」と聞いたらミナちゃんは「それはないよー。もっとね、キャッチーな感じの絵が使われるんだよ」と言ったあと「小説って挿絵とかないしね。表紙だけだもんね」とちょっとトーンダウンして言った。

ナイス…!もしかしてこの言葉に答えるために私は今日この本を選んだんじゃないかと思い、張り切ってこの本のカバーをめりめりはがし、zoomの画面を通じて見せた。

ミナちゃん見てコレ!

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挿絵だってあるのよ、かわいいのよ〜!

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