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靴を捨てよ、車を買おう

夫がスニーカーマニアである。
子供の頃、新潟では手に入らなかったスニーカーを両親が東京まで買いに連れてきてくれたという。きっとそういう胸アツの思い出たちと結びついているのだろうと思う。とても愛された幸せな子供時代。小学生の頃ほぼ体育の授業に出られないくらい体が弱くて家で寝ていることが多かった夫は、なんでもひとりで完結する性格に育った。お酒は飲めるが、あまり人と集ったりしない。一番の趣味は買い物である。欧米で流行するスニーカーをネットを駆使して2足買う。1足は自分で履き、1足は日本で値が上がったら売る。その利益で焼肉に行ったり焼肉に行ったり、あと焼肉に行ったりしている私たちである。私たち夫婦にとってベジタリアンはエグザイルくらい遠い。

そんな彼が、数ヶ月前から猛烈と靴を売り出した。ぽいぽいと音がする勢いでクローゼットやキュラーズから靴が梱包されて家から出て行く。
「なにかの頭金を作ってるぜ、あいつ」私は思った。

はたして、夫はローンを組んで車を買った。私にはほぼ決定事項報告だった。気づいてたけど。住宅ローンとダブルローンである。ダボゥ・ローンである。こわいわ。あたしもっと働くわ。

でも、「車も買うし転職しよ!年収アップ❤︎」 と張り切っている夫を見ていたら「好きにしなはれ」と思うようになってきた。(藤子・F・不二雄プロに先日応募し落ちていた。ドラちゃんをこよなく愛する夫でもある)

スニーカーが家にあふれてます〜、という話をすると義母・はるみさんは「ごめんね、あたしたちが子供の頃買い与えすぎちゃって」といつも謝る。はるみさんは、私の夫にがんが見つかって医者に「もし、リンパに入っていたらステージ4です」と言われていた検査結果待ち期間に会ったとき、私に「ごめんね、不良品あげちゃったね。でもこの子運だけはいいから、大丈夫だよ」と泣きそうな(ほぼ毎日泣いていた)私の肩をごしごしなでてくれた。離れている自分の方がずっと不安だろうに。そして「もっと食べなさい!少食〜」と自分が頼んだ1.5倍ハンバーグを切って私に分けてくれた。私は普通盛り1人前を普通に食べてたんですケド。はるみさんは19歳で夫を生んでいるので、まだ50代だ。超食べるし、ふくふくしていて元気で明るい。お義父さんとしゃべるスピードも速い。ふたりが話しているのを見ていると、自分の両親が若くて、まだ夫婦だった頃を思い出す。

第一回目のドライブは、横浜で開催されている山口晃さんの個展に連れていってもらいたいと思っている。あと、絶対いやだと言うだろうけど、はるみさんを乗せてどこかに連れていってあげてほしいなと思う。



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