Spotifyのご機嫌うかがい
AIの仕組みが全くわからないのだけど、特にSpotifyが自動でおすすめしてくる曲に対して「検索結果からの推測ならまだしも、あなたわたしの話を聞いていたでしょ」と思うことがある。「考えていたことも読んだでしょ」と思うこともある。
たとえば、新しいコピーライターが当社の応募に来たとき。すごくかっこいい大人の女性だったので、私たちは採用検討中その人を「姐さん」と呼んだ。姐さん、ほかのところも受けてるって言ってたっけ?姐さん、営業の仕事もちょっとできそうじゃない?
その日、Spotifyのおすすめリストを聞くと「どうぞ」とSHOW-YAが流れてきた。おケイさん(ボーカル・寺田恵子。あだ名は姐さん)の話をしていたわけじゃないんだよ。おケイさん営業に来たら胸のバラばっかみちゃうでしょ。でも「NAONのYAON」ていうネーミングは秀逸だよね。
モデルでありデザイナー/KIKUNOさんの話を車の中で夫にしていたら、Spotifyはいそいそと井上順とゴダイゴを続けて流してきた。そこはやっぱりまずマチャアキ(KIKUNOさんのお父さん)じゃないかな。どうしてあたしよく知ってますよ感出してくるかな。
最近、知人女性から「Mちゃんとつないで。あとらに子のSNSで見るOさんの店に連れていって」という連絡が来た。ちょっといつかくるとは思っていたが。
Mちゃんは、最近文芸誌のお仕事などもはじめたイラストレーターで、Oさんは著名な人も訪れるバーのママだ。両者とも彼女が好きそうな感じではあある。なんというか、鼻がきくのだ。彼女は基本的に人に対して失礼な人で、これまでも紹介した人から「なんであの人と仲がいいのか」と聞かれ続けている。私の方もその質問への答え方がだいぶ練られてきてしまったくらいなので、やわらかく、でもしっかりと断った。Oさんにはもしかしたらお店に単独で突撃するかもしれない旨を伝えた。(どんと来い、と阿部寛風に言ってくれた)
そんなことでちょっとモヤモヤしていた春の朝、Spotifyが流してきた曲はこれだった。
荒神さま ハンバートハンバート
おめえ さんざんたらふく食って お礼も言えねえのか
おめえ さんざん贅沢して 働きもしねえで
おめえ 食うもの食って ごろごろして 殿様気取りか
黙っておれば このごくつぶし
いや、わたしそこまでは思ってないよ!
でもなんとなくすっきりして、枝ばかりの銀杏並木を見ながら会社に向かう。