富士山になんて二度と登るか!ボケ!!…でもまた登りたいかも…後編(記録シリーズ)
富士登山、続きである。
人間には二通りある。富士山に登ったものと登らなかったものが!(超適当なこと言ってみた)
というわけで続きである。前編からぜひご覧ください。
https://note.com/kitahararirure/n/nbf1cd2dd239d
うまく眠ることができず、外に出てタバコを吸っていた。山から街の夜景を見下ろす。ぼくは滅びてしまうのなら人類、滅んだって構わないだろう、と思っている節がある。でも、この夜景を眺めていたら、「悪いもんじゃないかもしれない」と思えてきた。不思議なことだ。生活は、きらきらと輝いている。
さて、二時から頂上へ向かって歩き出す。ゆっくり歩いてちょうど夜明けってところらしい。みんなのヘッドライトが光の道になっている。遠い。立ち止まったり座り込んでいる人々。自分もまた、ときどき休憩しながら頂上へ一歩一歩。歩いていけばゴールに辿り着くことができる。なんか昔学校の先生に言われた気がする。そして、それは正しいことだと思う。
そしてついに、到着。よくやったぜ! 自分!
「Aちゃんがいなかったら富士山登ろうなんて思わなかったよ! 友達になってくれてありがとう!」
「俺もだよ〜」
なぜかお互いを讃えあうオジ二名。疲れは人をキモくさせる。
雲で隠れて御来光は難しいかも、なんて言われていたが、見えた! ああ、やりとげた。御来光を見たから運が良くなるとか夢が叶うとかってわけじゃないけど、なんだか、感動していた。そうか、こんなふうに意味もなにもなく、感動ってできるもんなんだなあ、とぼんやり思った。美しいというのはそういうものなんだ、と。
わざわざ朱印帳を持ってきた甲斐があったというものだ。あと、「頂上守」なんてのも買って、自分への富士山土産にした。
「なにか食べようず〜」ということで山頂の店に入る。ラーメンを頼む。なんか登ってる間、カレーとラーメンばっかだな! しょうゆラーメンを一口食べたときこれは…「サッ○ロ一番!」とまるでテレパシーでお互いの気持ちを交信したかのように目を見合わせ、頷く俺たち。人生で一番うめえサッポロ一番だったかもよ。
Aちゃん曰く、「浅間大社奥宮に行くのが目的」とのこと。さすがスピリチュアル! Aちゃんは寺社仏閣巡りが趣味なのだ。
「どう?」
「いや〜すごいいい空気だねえ〜」
いや、そりゃそうだろうけど!
横に郵便ポストもあり、五号目で買っておいた絵葉書を自分宛に送る。家族に送ろうとしたら「いらね」っていうからさ。いや、そりゃ別にいらないかもだけど、さ。
写真スポットと化している場所にて並んで写真撮影。海外のみなさん、大学生らしきばりっとキメたスタイルの若者たち、みんなとにかくやり遂げた、ということテンションが高い。なんとなく同志感すらある。こういうことってなかなかないよね。
お鉢廻り(火口を一周する)はしないでいいかも〜なんて登る前は思ってたけど、もうこないかもしれない、と思うと欲を出して(?)疲れた足でめぐる。しかしすごい風! 吹き飛ばされそうだ。身体ごと持っていかれそうな突風。そして時折落ちたらやべ〜って道やらとんでもない坂道(詰んだ、と思った)やら。マジでなんとか整備してくれよ! いや、これが最大限なのかもしんないけど!
帰りは超楽って誰が言った!? 二時間で五号目戻れるって言ったやつ、出てこい! 倍以上の時間をかけて帰還。ずるずるとくだっていくのだが、とにかく足にくる。そして陽が上り始めて暑いったらない。風は強く、ときおり小さな竜巻が起こるし、顔の穴という穴に砂が入ってくる。だるすぎる。マジで辛すぎる。五号目に到着して改めて見てみると、顔と腕は真っ赤だった。安堵からかいきなり焼けた痛みが! とにかく、なんとか戻って来れた。
「帰りに温泉とかごはんでも」なんて思ってたけど、ただぐったり帰路。なにはともあれ、打ち上げはまた今度。Aちゃんとはどうせまたいつでも会えるし。
「なんかさ、宇宙エレベーターみたいのがさっさとできて、すぐ山頂まで行けたらいいのにね〜」
自分で言っておいてなんだが、いや、絶対宇宙エレベーターってそういうもんじゃないだろう! なんだよ宇宙エレベーターって。なんか昔スピ業界で聞いたんだけど。
「次どこの山行くよ」
「え、マジで?」
「なんか、みんなみたいにオシャレなアウトドアグッズ揃えようかな」
「買い物したいだけじゃん」
なんとなく、また山に登ってやっても(?)いいかな、と思えるのが不思議だ。でも帰りが怖い!
そして家に到着して、どさりと倒れた。とりあえず、這って風呂場まで、シャワーを浴びて、そのまま布団に入る。とにかく成し遂げた、そしてなにかが終わり、またなにかが始まった、そんな気分だった。いまはただ、安心して寝よう。
目を覚ましてスマホを見ると、浅原ナオトくんの訃報がきていた。