ビジネスモデルをエンジニアリングする視点をもってCTOをする
ビジネスモデルを動的に捉える
例えば、D2CビジネスをやっててSNS広告でLP見せてCVRは3%といった仕組みがもってる平均的な数字というのがあって、どんだけ頑張ってもそれが10倍の30%になったりとかはしないのを日々痛感してきました。
いわゆるビジネスモデルというやつです。
上場企業のIRを見れば同じビジネスモデルだと営業利益率は一定ですし、特殊なビジネスモデルであればあるほど営業利益率が特殊な会社があります。(オービック、信越化学工業、キーエンスなど)
ビジネスモデルは目に見えないし完成されたものとして静的に考えがちですが、ビジネスモデルには時系列が確実に存在しているし競合・自社・顧客の3C要素と組み合わせてエンジニアリングしていくものだと今は断言できます。
例えば、中古不動産市場ではSUUMOが圧倒的な存在感を持っている中で、どれだけビジネスモデルがSUUMOより良くても最初に不動産屋が掲載すらしてくれないといった市場参入における課題が発生します。既存の競争環境の中で満たされていない顧客ニーズを発見することは最低限として、段階的にビジネスモデルを完成させていくことが求められるのです。
机上の空論で良いプラットフォームを考えるのは簡単ですが、今ある環境の中で新しいビジネスモデルを成立させるために戦略的に参入して成長させていくのは別次元で難易度の高い作業だと思います。
プラットフォームで最高のマッチングとか、最新のアルゴリズムで・・・みたいなのは地に足が付いてないので個人的にものすごく嫌いです。寝転がりながら「あー彼女欲しいなー」くらいのことしか言ってません。
ビジネスモデルを生存させる
経営者の責務としては有限のリソースを使って、ビジネスモデルをより競争力のあるモデルにエンジニアリングすることだと考えています。スタートアップの文脈だと生存させるという意味の方が近い気がしています。
ビジネスモデルを生存させるために競争環境において一番顧客ニーズについて知る必要があると思います。
あわせて、顧客よりもニーズとソリューションについて知らなければいけません。ビジネスモデルを生存させるために顧客だけでも足りません。高い専門性やスキルを持った人材を採用しなければならないですし、高い専門性ではなく流動性が必要かもしれません。
労働生産性をあげるために組織カルチャーをエンジニアリングしないといけなかったり、競合や類似のケーススタディをして参考にできるケースから自社に取り込むべきものを考えたり生存という視点に立つと単にプロダクトがどうのではなく複雑に絡み合ったものを相手にしないといけません。
生存させるCTOの進め方
まずビジネスモデルを可変に捉えて、生存可能性が上がるにはどうすればいいかを学習するための検証が必要だということです。
全体の見積もりが6ヶ月で1億のシステムを作らないといけない状況で、作った後どういう成果が出てないと困るか?ものを作るのはどう転んでも先行投資になるので、CTOの責務としてはたとえ精度が悪くてもシミュレーションを入れる必要があります。シミュレーションにあたって不確実性の大きな要素を特定し、事前に不確実性を抑えられないかをまずは検討します。
toBで売れるかどうかは実際に顧客と事前に契約を結ぶことで不確実性を下げることができますし、toCで流行るかは極限までMVPにして2ヶ月2000万でリリースすることで不確実性を下げれるかもしれません。
大切なことは試して計測して生存シミュレーションの確度を高めていく作業なのではないでしょうか。
選択を正解にする力技
プランAが悲観的なシミュレーションになったとしても用意しておいたプランB、プランCで力技で正解にもっていくのもCTOの責務かなと思います。
この辺はまた別の機会に
ケーススタディ:ワンキャリアのビジネスモデル
リクナビ・マイナビが寡占化している市場で新卒口コミサイトとしてワンキャリアは市場参入しています。通過したESや面接内容などが蓄積されいているので就活生からすると大手サイトよりも有益な情報源として就活生側のシェアが上がっていきます。
採用企業を集めるのは時間もコストもかかるため、鶏卵問題でいうと鶏が就活生で卵が採用企業で最初は収益性が高いとは言えませんが着実に鶏を集めています。2018年以降はCAGR40%+の成長を実現しているのは、一定数の就活生が集まったことで採用企業へのマネタイズがうまくいき始めたためです。ここでコロナが外部環境の変化として起きて、オンライン企業説明会を市場投入して就活生・採用企業の両サイドの獲得をさらに進め順調に収益を拡大していくことに成功しています。
新卒だけでなく中途採用のプロダクトを投入し、企業の採用を管理するSaaSを投入していくことでキャリアデータを獲得できるようになりキャリアデータを使ったビジネスモデルを構築できるようになります。
という具合に、ワンキャリアは大きなビジネスモデルの変化はしてませんが、市場投入時のビジネスモデルは収益性の面で優れてるとは言えませんが参入方法としては適切だったと思います。ビジネスモデルが変化させながら参入し生存させ成長させるエンジニアリングは素晴らしいと思います。
今のフェーズは採用企業の獲得もそうですが、SaaS型のプロダクトの導入を進めていくことで企業の採用業務内のシェアを獲得していくことで採用データを獲得していき競争力を高める複雑な戦略かと思います。ビジネスモデルをより競争力のあるものに進化させる取り組みだと思います。
ケーススタディ:ツクルバ(カウカモ)
ツクルバが提供しているカウカモは中古リノベ済みマンションのプラットフォームです。GMV*テイクレート=売上で、競合にはリノベるがいます。
カウカモの商品在庫はオシャレな買取再販業者の中古リノベ済みマンションだったので、ユーザー獲得はめちゃくちゃうまくいきました。ただ、課題は成約しないと売上にはならないので量をこなす必要があります。一方で在庫は多くなくほとんどがリノベしてない中古マンションの取引が中心です。
一方でリノベるは在庫は中古マンション市場全体で、お客様が買い付けたマンションをリノベーションするサービスだったので在庫の問題がなく件数ベースだと数倍差をつけてリノベるの方が成長しているという状況になっていました。
カウカモが投入してきたプロダクトは定額リノベーションサービスとウルカモの2つです。
定額リノベーションは在庫がなくても通常の中古マンションの在庫を使ってオシャレなリノベが実現できるので顧客ニーズはそのままに別の商品を販売して大きく進捗することになりました。
またウルカモでリノベ済みマンションの購入者を売主にする独自ルートを開拓することに一定成功しました。
CTOとしてはこういった判断がデータに基づいてできるように、ビジネスにおいてもオブザーバビリティを担保しにいくことを視点として持つのが良いと思います。
ビジネスのオブザーバビリティ
つまるところオブザーバビリティ(データで判断するための土壌)がCTOの責務の1つだと思います。それは顧客・競合・自社製品(3C)をCTOがDXしなければいけないという意味に近いです。
https://cyber-synapse.com/dictionary/en-all/3c-analysis.html
歴史的にはオブザーバビリティを高めてきたのが経営管理の人です。2023年現在タッチポイントがデジタル化した社会だと経営管理+ITのスキルがオブザーバビリティには必要になり、それがスキルセットとして持っているのがCTOやCIOといった役員あるはチームを組成する必要が出てきています。
こういった視点でビジネスモデルを見てみると、なんだかモノリシックなコードベースをリファクタリングしている気持ちになるので結局やってることはエンジニアリングで変わらないなと思うわけです。