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発達障害者雇用④オタクは身を助ける

 前回は、まともに就職活動を始める前に職が決まってしまった話をしました。

 今回は、奇跡的なマッチングの話です。


ただ2人の幸せを考えて


 ところで、私はオタクです。

 令和に生きる方々には想像もできないと思いますが、80年代末に起きた連続女児殺人事件の犯人がオタクとされたせいで、90年代のオタクはひどい差別を受けていました。
 私も、「アニメキャラと交際したいと思っている」といった偏見にさらされながら、「2次元は現実と違って裏切らない」と思って生きてきました。
(2次元の人は私を蔑まないじゃないですか)

 私はBLが好きで、公式では親友である2人や、友達のライバル程度の距離感な2人に脳内で恋愛感情を芽生えさせ、幸せにさせるよう画策していました。
(好みの問題で、強くて険悪な感情をぶつけ合う『ケンカップル』にはほとんど興味を持ちませんでした)

 2人の幸福を実現するために同人誌を出し、Webサイトを作りました。
 Wordで用紙をA5サイズに設定して、本文を2段組にして、行間を調節してルビを振る。
 素材の写真やフリーのイラストを探して大きさを調整し、Photoshopで文字を入れる。
 アップロード時ファイルに日本語の名前をつけるとエラーが発生するため、半角英数のファイル名をつけ、オンラインで原稿を入稿する。

 ブログも何もなかった頃、契約したプロバイダーとの契約に付帯していたサーバーや、Yahoo!が提供していた無料サーバー・ジオシティーズなどにFTPソフトでHTMLファイルを上げる。ホームページビルダーなどのソフトや、『とほほのWWW入門』さんなどの指南サイトの力を借りながらソースを書き、同じジャンルのサイトのバナーを取得してリンクを張る。HTMLだけでは見栄えのよくないサイトを、CSSで調整する。

 これらのスキルが、雇用側と私の両方がびっくりするほど役に立ちました。

役に立っている業務一覧

  • HTMLを使い、WordpressなどのWebサイト制作システム上でページの修正・更新をする

  • お客さんのホテルのサイトに載せるため、近辺の観光地の情報を調べ、文章にまとめる。

  • デザイナーさんから来たWebサイトデザイン案のPDFからIllustratorで素材を切り取って保存する。

  • タイピングが早い。

  • Wordはもちろん、昔働いていたおかげでExcelも最低限使える

  • コピペもCtrl+xとCtrl+cとCtrl+vで素早くできる。

 たぶん会社は、何年も単純作業しかしていなかった精神障害者ということで、たいした期待をしていなかったと思います。
 私自身『誰にでもできる仕事』だと思っていたのですが、どうやら『誰にでも』はできないようです。

 オタクスキルだけでなく、二次障害の過剰適応で手に入れた(?)とにかく怒られないように必死に取りつくろう力で、とても高い評価をいただいています。
 勤め始めて三年になりますが、人生でこんなに褒められた経験は今までありません。
 特に直属の上司が有能な方で、AIのように指示のコツがいる私を的確に使っていただいています。

「北川さんがいないと仕事が回らなくなる、同じ条件で北川さんと同じくらい仕事のできる人を見つけられるとは思えない」
 とまで言っていただけています。
 ここで調子に乗るのが私の幼さではあるのですが、自分を過信しないようにと肝に銘じて働いています。

次回は

 就職を通して考えたこと、これから障害者雇用にチャレンジする方にお伝えしたいことを書いて話の締めにしようと思います。


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北川
いただいたチップは心身の栄養維持にさせていただければと存じます。