サボり審神者の刀剣乱舞①
©2015 EXNOA LLC/NITRO PLUS
『刀剣乱舞』というコンテンツを聞いたことのある人も多いでしょう。
ニトロプラスが制作、DMMが運営しているブラウザ・スマホゲームです。
始めて9年目のエンジョイ勢が、私だけの思い出せる限りのできごとを残しておきます。
『刀剣乱舞』とは
『刀剣乱舞』は、プレイヤーが『審神者』という神と人との連絡役になって、人の姿をした刀剣の付喪神・刀剣男士(×男子)を率いて戦うゲームです。
作中の西暦2205年に『時の政府』が『時間遡行軍』の歴史修正(歴史を変えて、その後の世の中に影響を及ぼすこと。歴史修正主義とは別の意味)を防ぐために、刀剣男士を顕現させて戦うよう審神者に命じるところからスタートします。
2015年にリリースされて来年で10周年を迎え、今ではゲームの枠を飛び越えてさまざまな業界に影響を与えています。
代表的なのが舞台化やミュージカル化で、『2.5次元』の演劇作品を増やす助けにもなりました(刀剣男士として紅白歌合戦に出たこともあります)。
また、ゲームに登場した刀剣とゆかりのある美術館や博物館がゲームとコラボした展覧会を開き、地元の人が予想しないほどの来訪者を集めたケースも多くありました。
プレイのきっかけ
私が刀剣乱舞を始めたのは、2015年1月のリリース直後。まだそこまで話題になっていなかった頃でした。
ちょうどDMMの別のゲームをやっていて、『刀剣をモチーフにした男性キャラで戦える!』という広告が目に入りました。
本多忠勝の愛槍・蜻蛉切がいるのを確認し、「人間無骨も来るに違いない!」と一気に盛り上がりました。
森長可と人間無骨
人間無骨は森長可の愛槍。
長可は織田信長の家臣で、
橋や門を守る番人を複数回殺す
敵が籠城している建物の屋根に上って瓦をはがし、真下へ鉄砲を撃つ
寺を焼き討ちし本尊だけ外に運び出して燃える寺を見せる
などのバーサーカーとしての逸話が残されています。
有名人の得物だからすぐに実装されるじゃろ……と思っていたのですが。
どうやら長可が有名なのはネットに巣食う一部の歴史オタクの間だけであって、一般的には『森蘭丸の兄』という程度にしか知られていないらしい……と、2022年12月に人間無骨が実装されるまで思い知らされることになりました。
始まりの五振り
ともあれ、人間無骨の実装に備えて早速登録。
ゲーム開始時に、『始まりの五振り』と呼ばれる刀剣男士の中から一振りを初期の相棒として選びます。
そのメンバーは、以下の五振りになります。
①加州清光
加州清光は沖田総司の佩刀です。
1864年(元治元年)に新選組が不逞浪士を一網打尽にした『池田屋事件』での乱闘中に折れ、そのまま失われたとされています。
ゲームでは、土方歳三の洋装に似たコスチュームを身にまとっていて、「もし沖田総司が函館へ向かっていたら」というifを感じさせるキャラクターデザインです。
②陸奥守吉行
陸奥守吉行は坂本龍馬の佩刀です。
もともと坂本家の家宝で、1867年(慶応3年)の龍馬の暗殺を見届けた後、北海道釧路市へ移住した坂本家に戻されます。
1913年(大正2年)に『釧路の大火』に見舞われて刀身が変形して研ぎ直され、今の京都国立博物館に寄贈されました。
幕末時代の記録と姿が違っていたため、長らく『「伝」坂本龍馬佩刀』とされてきましたが、最新技術と研究により焼ける前の姿がわかり、記録と照合できて正真正銘の龍馬の愛刀と確認されました。
ゲームでは龍や波をモチーフとし、ワイルドで豪快な風に見せて思慮深さもにじませるキャラクターになっています。
③山姥切国広
山姥切国広は、名工堀川国広が同じく名工長船長義の傑作『本作長義』の『写し』として打った刀です。
『写し』とは偽物ではなく、高い技術で作られた名品を見本として作られた作品のことを言います。
個人蔵でしたが刀剣乱舞の人気をきっかけに注目が集まり、ゆかりの足利市がクラウドファンディングで資金を募って、2024年3月に取得しました。
ゲームでは当初『写し』であることの劣等感から布をかぶって卑屈さを見せていましたが、修行イベントを経て凛々しく生まれ変わりました。
④蜂須賀虎徹
蜂須賀虎徹は、徳島藩の大名・蜂須賀家が代々所有していた刀です。
虎徹の刀は贋作(こちらは偽物のこと)がたいへん多いことで知られていて(その代表が近藤勇の虎徹)、真作だった蜂須賀家の虎徹はとても珍重されました。
明治維新後、蜂須賀家のコレクションは散逸してしまい、虎徹も競売にかけられます。
持ち主が転々と変わった結果、蜂須賀虎徹は2024年時点では『個人蔵』とされているものの、『個人』が誰だかわからない状態になってしまっています。
ゲームでは真作の誇りを表すせいか、黄金聖闘士と呼ばれる金色の鎧をまとって、近藤勇の長曽祢虎徹を悪く言いつつ縁を感じて歩み寄ろうとしています。
そんな四振りを横目で見つつ、すでに誰を選ぶかは決まっていました。
⑤歌仙兼定
細川忠興の逸話
歌仙兼定は、二代目和泉守兼定(通称之定)によって打たれた、戦国大名・細川忠興の愛刀です。現在は東京都文京区の永青文庫が所蔵しています。
忠興は細川ガラシャの夫で、ガラシャの父・明智光秀が本能寺の変を起こしても理由をつけて幽閉して、離縁しなかったことから愛妻家とされています。
戦国武将としても文化に造詣の深い数奇者でありながら特別血の気の多い方で、秀吉の朝鮮侵略では現地の兵から猛将と恐れられていました。
ガラシャに見とれた庭師を斬って捨てた、なんていう苛烈な逸話も残されている人物です。
歌仙兼定の『歌仙』という名前には、「忠興がこの刀で36人を手討ちにしたことから、三十六歌仙にちなんで名づけられた」という、忠興の風流さと凶暴性が強く出た言い伝えがあります。
本当に36人も斬ったかどうかはさておき(いくら大名でも、平時にそれだけの数の民間人を殺したら責められないはずがありません)、元主の「あいつならやりかねない」という印象の強い逸話が残されている歌仙兼定は、始まりの五振りとしてうってつけの存在だったかもしれません。
歌仙さんを選んだ理由
最初に歌仙さんを選んだのは、山田芳裕先生『へうげもの』の影響でした。
『へうげもの』の忠興は史実通りの数奇者で、千利休の高弟として主人公の古田織部と肩を並べる存在であると同時に、すぐに激しい感情をあらわにする瞬間湯沸かし器でもあります。
愛読者としては、「細川の刀! 選ぶしか!」という選択肢しかありませんでした。
果たしてゲームの歌仙さんは文系名刀を名乗り、衣装も表地や裏地のあちこちに花柄をあしらっていて優雅の極み。
ゆったりした衣装にカモフラージュされていますが、いわゆる『脱いだらすごい』隠れマッチョ。
非戦闘時は風流に書や歌をたしなみますが、いざ戦いになると血を見ることも厭わず、自分を害した敵の首を取りに行きます。
最終的には「文系だから理系の計算は苦手、力押しする」なんて、私立文系受験生のようなことを言い出します。
細川忠興の愛刀としてのキャラクターは百点満点です。
次回へ続く
歌仙さんを従えていざ歴史修正阻止! と気合いを入れていましたが、道のりはなかなか順調ではなく……すったもんだの道中はまた今度お話できればと思います。
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