先週は豚ブロックの煮込み、今週はクリームシチュー


先日、ものすごく腹が立つことがあった。
仕事の絡みである。これまで私が積み上げてきたものを踏みにじり、嘲笑うかのような振る舞いを受けた。
私は「馬鹿にされている」と感じると情緒に火がつく人間であるため、猛烈に怒った。

帰路に着くも胸のむかつきは全く晴れず、まるでたった今人を殺してきたかのような目つきで電車に揺られていた。
昨今、気晴らしに1人安居酒屋で酒を煽ることも時勢が許してくれない。
だがこの気持ちを明日に引きずるわけにもいかぬ。なぜなら私はもう「いい大人」なのである。
悶々と釈然としない私はそのままの足でスーパーへと向かい、5分後にはシチューの材料でいっぱいになったビニール袋を提げて、店を出た。

感情が大きく昂った時、私は大量の食事を作りたくなるタチである。
調理の過程は短く、かつ細かい作業(皮むきや、微塵切りなど)が多ければ多いほど良い。無心で、ただ作業に没頭できる。きんぴらにんじんが得意料理なのはそのためである。

また、大量に調理をするのは、量が多ければ多いほど達成感も多いからだ。
1時間前まではただの野菜、あるいは肉だったものがなんらかの形をなしている様子を見るのは、きちんと1つ何かをやり遂げた気持ちになれる。

そんなわけで、先日の私は帰宅するなり座りもせず、ただ淡々と玉ねぎ、にんじん、ジャガイモ、白菜、しめじ、ベーコンに刃を振るい、ものの1時間ほどで10人前のシチューを作り上げた。
昂った感情はいつの間にか落ち着き、後に残ったのは数日分のシチュー。素晴らしい成果である。

また、先日の私は大変落ち込んでいた。
その日はプライベートが全く行かない日であった。

そんな日は、大概長風呂に浸かりたくなる。
有ればバスエッセンス、なければ日本酒と塩を湯船に適当に追加する。体が温まって、汗がたくさん出る。
そのままたっぷり1時間ほど、音楽を聴いたり、本を読むなどすると、なんだか体にいいことをしている気になれる。考えなければならない問題に正面から向き合うことができる。

この、大量調理と長風呂で自分のバランスを保っていると気づいたのはわりと最近のことである。
というより、「この無意識にやりたくなることやしていることと、その日の気分の因果関係に気づいたのが最近のことである」と言う方が、おそらく正しい。

憂鬱な時勢である。これまでの生活から変わることを余儀なくされ、人と気軽に会うこともできなくなり、我慢の多い日々である。

腹が立ったら大量調理、落ち込んだら湯船に浸かる。これに気づいてから、少しだけ生き易くなったように感じる。
これにもっと早く気づいていたら、きっと私が休職することはなかっただろう。

いい大人の嗜みとして、自分の機嫌は自分で取る。よく聞く言葉ではあるが、きちんと実践して、対処できて、わたしエラい!となった。
腹立たしい日の終わりの話だ。

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