『水曜独りメシ』こぼれ話「思い出の味、かりーてーる」

 以前のこぼれ話で、
洋食にはビールか熱燗、
ということを書いたが、
これには明確な理由というか、原因がある。
子供の頃の原体験によるものだ。

 子供のころ、私は母の実家にいることが多かった。
母の実家は世田谷にあり、子供のころの記憶は
世田谷をはじめ、都内の風景が多い。
味覚についても同様で、このころに根ざすものが多い。

 中でも、一番印象に残っているのは、
千歳船橋駅前にあった洋食屋、
「かりーてーる」だ。
ここは祖父母と一緒によく通った。
今はもう無くなってしまったが、
千歳船橋駅がまだ地上にあるころ、
小田急線の改札を出てすぐを右に曲がって
2〜3軒目に2階に上る急で狭い階段の先に
その店はあった。
階段を上り切った右手に、
自動ドアの入り口があり、
入ると厨房スペースの先に
テーブルがいくつかある
こじんまりした店構えだった。
優しい雰囲気のご主人と奥さん、
何人いたかは定かではないが、
数名の厨房スタッフがいた。

 そのころ、外食と言えばここで、
祖父にしてみれば、
子供のうちにテーブルマナーを
しっかりと身につけさせたい、
ということだったと思う。
 確かに、ここでカトラリーの使い方や
食べる順番、振る舞いなど、
その年齢で覚えることができるテーブルマナーは
全て叩き込まれた。
(というほど厳しかったわけではないが)

 その時に祖父が注文していたのが、
ミックスフライと熱燗だった。
熱燗は菊正宗だったか。
子供ながらに、
「大人はライスを食べないんだな」
と思ったことを覚えている。
 ちなみに、私の定番は、
コーンポタージュとオムライスだった。

「かりーてーる」は今は無くなってしまったが、
その記憶はいまだに鮮明に残っている。

ごちそうさまでした。

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