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関数男物語〜さまよえるやばいフォルダ05〜

島倉の協力を得て、フォルダ作成は順調に進んだ。自治体の共通ルールに準じる形でフォルダ構成を作成する。次年度のことを視野に入れ、元となるフォルダを作成した上で、今年度の分のフォルダを仕上げたのだ。
 島倉の話によると、この文書分類番号が大幅に変更されることは稀らしい。仮に変更されたとしても、3桁の数字で対応できる範囲なので元フォルダを少しいじれば良いだろう。


しかし、フォルダ作成を進めていく際、数男はある事に気づいた。それは、自分の担当分掌であったために気づいたのだが、「運動会」の分類であった。市内の文書分類によると、「運動会」は、「健康・安全に関する行事」に分類される。しかし、数男自身は、「体育」の分類だと思って仕事を行っていた。
 恐らく同様のことが起こっているだろうと推測し、教務主任の高木に尋ねてみた。

「高木先生、入学式実施計画って、どこに分類していましたか?」
「教務関係のフォルダに入れていたな。」

 と高木は、当たり前のように答えた。実は、後になって明らかになるのだが、高木は整理整頓が得意ではなかった。事実、職員室の机を2台占有し、1台は書類の山になっていた。しかし、数男はこれまでの経験上、教務主任の仕事量とはそういうものだと思っていたし、一緒に勤務した教務主任は誰も似たようなものだった。

「実は、入学式は、儀式的行事に分類するのが正しいようなんです。」

数男が、伝えると、高木は、

「確かに。そうだな。作成したデータは、教務関係に保存しているが、印刷したものは、行事のファイルに閉じているよ。」


 つまり、ここでも捻れが生じているのである。これは、文書分類番号という考え方が職員に定着していないからである。一方で、分類番号で仕事をすると、必要なデータにアクセスしづらいという状況が生まれるの事実である。
 例えば、体育主任の業務の中には、純粋に教科としての体育に関する業務の他に、「運動会実施計画」という本来は行事に分類される仕事も存在する。文書分類番号に従うと、体育主任は複数のフォルダを行き来しなければならなくなる。
 体育主任なのだから、「体育」というフォルダだけにアクセスしたいというのが、正直なところである。この点について、解決策を考えておかなければならない。数男は、そっと心に誓った。

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