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線と影


線、輪郭。

立体の現実物を紙という二次元に落とし込むのが絵。奥行きあるものを平面に表すのは難しい。その難題を実現するのが描ける人だ。

あの線。キャラとかモノを描いた線。色で表現する作品もあるが、ブツには境界がつきもので、それはたいてい線の姿で表現されてる。線って、いったいなんだろう。

名前は忘れたが、昔、知り合いに美大出のひとがいた。唯一の絵の師匠てことになるか。

あれは影だ。とその人は言った。

線は影?
意味わからん。

黒歴史になるが、デザイン科を受けて落ちたことがある。面接の先生が、これはモノにならないって、俺の絵を指摘した。10人枠に11人が受験。一人を落とす口実とおもった。ポスターカラービンのデッサン一枚で、俺の絵の何がわかるかって。不合格通知を破り捨てた。

50歳のある時。突然、輪郭が見えた。影というものを、前触れもなく理解できたのだ。

これな! これが影?

あーなるほど。こりゃ落とされて当然だって、悟ったよ。でももう50。遅すぎた理解だ。描かなくなって30年。ベンのにぎり方も忘れてしまってる。

指摘されてわかるヤツ。言われなくとも見えてるヤツ。そいつらペンを握ってなくても基本描ける。

絵に興味ないやつで、見えてるヤツもいる。中学の同級生にそのタイプがいた。
線は影。デッサンの教科書にも載ってたかも。ただの知識と受け流したようだ。

読んでも言われても気づけないヤツは、いくら描き続けても、上手くならない。いるよな。上手だけどこれは違う感な絵を描く人って。あれが俺だ。

文章にもあるんだろうか。線が。
これかっ!って。見えることで入り口に立てる境界線は、あるんだろうか。


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