てくてく北へ #6 「信越の旅」(森山智仁)
【この連載について】
フリーライター・森山智仁さんが、2023年4月から半年間、鹿児島の開聞岳から北海道の羅臼岳まで、各地の山に登りながら、ほぼ徒歩で日本縦断する旅「#日本縦走」。このチャレンジを「食」の観点から綴るフォトエッセイです。今回は、乗鞍岳から松本に下り、美ヶ原を経由して長野へ至る信越の旅。キャンプ料理を楽しみ、フォロワーさん情報の美味しいお店に立ち寄ります。森山さんの旅の様子は、Twitterやyoutubeから、リアルタイムで発信中です。
(前回の記事はこちら)
乗鞍岳(3026m)から下りてきて、乗鞍高原のペンション「るぴなす」に宿泊。朝ごはんは何種類かのパンをオーブンで好きに焼いていいシステムでした。1個目はとろけるチーズとマヨネーズをたっぷり乗せたパワー系トースト。そして2個目は……
クロワッサンに手づくりジャムをつけて食べていたら、いつの間にか3個目も消えていました。デザートのメロンは今まで食べてきた中で最高に瑞々しく、ウォーターメロンかと思ったほどです。
おいしい食事と、とんでもなく解放的な源泉かけ流しの露天風呂、ご夫婦のお人柄。推せる宿がまた一つ増えたのですが……
乗鞍高原は「脱炭素先行地域」に指定されており、脱炭素のための改修工事にかなりの助成金が出るのだけれど、後継者の問題はお金ではどうにもならない――という、難しい話も聞いてしまいました。同じ問題を抱えている宿は日本にたくさんあるはず。旅に行きたいなと思っている皆さん、ぜひお早めに!
さて、乗鞍高原から、ガードレールのないトンネルをいくつもくぐって、松本市の中心地へ。次は東の美ヶ原(2034m)を目指します。
6月28日、松本市美術館で草間彌生ワールドを体験し、コンビニで食糧を調達。郊外へ出て一気にお店が減った中、たまたま軌道上にあったのが……
にぼしの香りが良い! 麺がつやっつや。ボリュームもあって、きっとみんな大好きなつけ麺です。閑静な住宅地で不意においしい店と出会うの良いですよね。
晴れたり照ったりの厄介な空の下、標高差1000m近い車道を登って、美ヶ原の登山口の近くにあるキャンプ場「漁樵カオス」に到着。毎度インスタント麺では味気ないので、今回はコンビニ食材のキャンプ料理に挑戦です。
豆乳をクッカーに開けて温め、沸騰する手前で、海苔を剥がした明太おにぎりをイン。くずしながら煮て、とろけるチーズをちぎって溶かし、最後に海苔を散らせば完成。
参考にしたサイトはこちら。
https://funq.jp/peaks/article/782935/
「キャンプ コンビニ」で検索すると色々出てくるのですが、現在主流であろう「車を使った一泊のキャンプ」と違い、余分なものを持てないので、調味料なしで成立するレシピを選択。参考サイトではコショウを使っていますが、チーズを1枚から2枚にすることで不足を補いました。
余ったチーズはそのまんま食べて、翌朝もクッキング。
溶けたクーリッシュにパンを浸して焼くだけ。超簡単!
参考サイト
https://kaelife.hondaaccess.jp/entry/20210625_01
レシピでは「あんバターブレッド」を使っていますが、入ったセブンに置いていませんでした。デニッシュブレッドでも十分おいしかったです。
美ヶ原高原を西から東へ横断したら、一路北へ。3泊で長野駅前に到着。Twitterのフォロワーさんがおすすめのお店を教えてくれて、ちょうど軌道上だったので行ってみました。
路地をちょっと入ったところにある隠れ家的なお店です。人気らしい「極楽セット」を注文。
実を言うと今まで「そば」ってそんなに惹かれるものではありませんでした。いや、おいしいよ? おいしいけど、そんな千円とか出さずに駅の立ち食いで良くない? と……
そんな僕が、まず出てきた「巣ごもり」に度肝を抜かれます。打ちたてのそばのあんかけ! パリパリの麺に海鮮だしの効いたあんがよく合います。そばにこんな食べ方があったとは知りませんでした。
後半のせいろでまたビックリ。うまい! そばの喉越しなんて何でも爽やかじゃねと思っていましたが、格が違いました。麺の「ほぐれ」が抜群に良くて、食感はもはや飲み物に近いです。大根おろしや七味で味変しつつ、そばなんてみんな同じという認識を改めたのでした。
余談ですが、この時、月曜の昼。隣の席で「そば屋で一杯」をやっている人がいて良かったです。
7月5日、妙高山(2454m)に登って、高谷池ヒュッテでテント泊。池のほとりにはたくさんのハクサンコザクラが咲いていて、空・緑・花の調和が見事でした。
あんま最新のスマホとか興味なかったんですけど、iPhone14の望遠カメラはとても良いですね。足では近寄れない花にグッと近寄れるので、散策の奥行きが広がります。山から別の山を眺める時も双眼鏡代わりになりますし、成り行きで手に取ったギアが新しい世界を教えてくれました。
翌日、テントをたたんで、燕温泉に下山。
「花文」は昔ながらの温泉旅館でした。近頃は「お夕飯の間にオフトゥンを敷いてくれるやつ」をあまり見かけなくなりましたが、こちらでは健在。館内がやたら入り組んでいて迷うのもノスタルジック。お夕飯はまずお膳が置いてあり……
あとから何品か運んできて、それが何か説明してくれるのですが、おっちゃんの滑舌がちょっとアレで聞き取れない……! でも聞き返すのも何だし、聞き取れないのもある意味エモいなと思いながらおいしくいただきました。
お風呂は浴室の「中心」に浴槽がある、シンプルながらもユニークな造り。連日の長距離移動で疲れた足をじっくり回復。浴室の窓からも、燕が忙しく子育てしている姿が見られました。
この次は、新潟・長野・群馬ののたうつ県境を辿るように山間部を歩き、苗場山・平標山・谷川岳を縦走。さらに、バリエーションルート(一般登山道ではない特殊ルート)で尾瀬に入って、至仏山・燧ヶ岳・会津駒ケ岳に登ります。旅はまだ中盤!
【北海道上陸まで残り53日・車道最短距離で621km】
文・写真:森山智仁
Twitter:https://twitter.com/bacoyama
blog:https://moriyamatomohito.hatenablog.com/
●森山智仁のyoutubeチャンネル「東京登山」
https://www.youtube.com/channel/UC0HDQAfdJHYJtPpHgJUds1Q
Twitter:https://twitter.com/yamako_yamalove