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優しいひと #半分ろうそく

優しいひと

私は海辺を彷徨っていた 青年が声をかけた へえ、奇遇だなあ、僕もそうなんです。失恋と失業のダブルは応えます。彼の嘘に慰められた私は3度目の恋に落ちた

夏が終わればこの恋は了ると分かっていた 別れの日、彼はあるレストランに私を誘った そこからは、私たちが何度も歩いた渚が見えた
客は私たちだけだった
蝋燭にいたしましょうか 若いギャルソンは言った
半分で 彼は微笑みながら言った
電気は消え、私たちは蝋燭の灯のもとで静かな別れの食事をとった

それからの私はそれなりのまあまあの人生を送った 二人の息子も独り立ちし、夫の3回忌もおえた 
30年ぶりにあのレストランに行った
蝋燭が半分残っておりますが あの時のギャルソンが言った

A様から貴方がいらっしゃた時にと
Aさんは?
あのひと月後、赴任地で戦死されました 
任地は紛争地帯だった それで彼は結婚の話しを避けていたのだった
老いたギャルソンは残りの蝋燭を灯した
彼の顔が微笑んでいた 優しく哀しい微笑みだった

#短編小説 #毎週ショートショートnote   #ショートショート
#半分ろうそく #紛争 #レストラン

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