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ぶらり独身男性4人旅 ~牛丼の代償 編~ 前編  


イメージ図

店の前にできた長蛇の列。それは最果てへと通じる道の様に果てしなく長い。


さて、果たしてあなたはその列の先に、まだ食したことのない絶品の牛丼があるとしたら、その列に並び待ち続けるだろうか?
その代償として、親友を1人失ったとしたとしても・・・。
今回はそんなお話。

〇旅の発端

事の始まりは私が学生時代からの親友(いずれもむさっとした独身男性)に言った、関西旅行に行こう!、との発言からであった。今思えばごくごく軽い気持ちであった。出来心というかなんというか・・・。

勿論、旅に出る理由など、軽いものであって差し支えない。そもそも多人数で行く旅行など、親睦を深める以上に深い意味などないことが多いからだ。大抵、温泉と宿泊先だけ抑えていれば何とかなる。しかし私が旅に出たいという理由はそれとは違った。

ではなぜ私が旅に出ようなどと提案したのかというと、それはたまたまTVで「20代最後の旅」という言葉を聞いたからであった。その言葉は私の強いあこがれを惹起した。なぜなら、私はこの3月にいよいよ30代を迎える。私は失った青春時代を取り戻したいと願う老人かの様に、衝動を抑えられなかったのだ。いってしまえば青春コンプがくすぐられたのである

しかしその話を私の親友3人に持ち掛けた時、すでにそのうちの2人は30代を迎えていた。今思えば、そもそもこういった所から私たちの旅行はどこか歯車がかみ合っていなかった。

〇「しまった、もう2人、おっさんじゃん」


ちなみに私は20代と30代の間には大きな壁があるものだと堅く信じている。それはローランド風に言えば「おっさんか、それ以外か」という違いである。

著作権法上の理由により
わざわざ画像を作りました


確かに世間には「アラサー」という言葉がある。それに従えば「おいおい、29歳もおっさんでしょ?」と言えなくもない。しかし私は思う。そんなあいまいな年齢区分があるような国だから、日本は他国との競争に負け、ついにはインドにGDPを抜かれる始末になったのではないか?と。
私は、はっきりすることははっきりしなければならないと思うのである。

失礼、ちょっと脱線したが、それほど私にとっては「おっさんか否か」ということは大きいのだ。つまり私は旅に出る目的を変えなければならなかったのだ。そこで急遽私はあんまりパッとしない言葉を使うしか方法がなかった。
その一言と言うのはずばり
「ぶらり独身男性4人旅」だ。

どうだろう、この響き。大いに敗北感に満ちていないだろうか?私はこの世に「独身男性」以上にみじめな四文字熟語を知らない。

〇あやまち

だからと言っては変であるが、私は苦し紛れに行きたい先リストをこしらえた。本当にたまたま目についたものをかき集めたぐらいのリスト。しかしその中にあったのが、今回紹介する日本一の牛丼屋との呼び声高い「広重」という店であった。

牛丼屋「広重」については以下のノートに書いたのでぜひ参照してほしい。

まぁ上記ノートの繰り返しになるが、牛丼屋「広重」の特長を端的に表すと

「めちゃくちゃうまい、安くはない、遅い」

といった、要はうまさ至上主義の牛丼屋なのである。
前評判では、待ち時間は1~4時間、値段は3000円付近といずれもまぁまぁする。

しかし、それを始めて親友に提案した時、彼らの反応は上々だった。何せ日本一の牛丼である。
「おぉ面白そうじゃん!」
彼らは大いに膝を叩きながら私の提案に賛同した。


しかしこの提案をした時、彼らの目は焦点が合わず、ややもつれた口調であり、天狗のような赤ら顔であった(そしてちょっと禁断症状もでていたような気もする)。つまり酒に酔っていたのだ。勿論そんな奴が正常な判断を加えられるはずもない。

私は確かに彼らに対し「その牛丼屋は結構待たないと入れないよ」と言ったはずであった。

しかしそんな私の一言はの仲間の1人、およそこのグループの中でややタプタプ(想像に任せよう)しているナカジマ君(仮称)が放ったこんな言葉にかき消された。
「まぁ俺らならヨユーっしょ」
他のメンバーもそれに同調するようなそぶりを見せた。

今思えばその一言が私たちを、不和、決裂、仲たがい、および不信へと招いたのだから、大いに罪深い一言だったと言える。ボタンはここから掛け違うことになった・・。

〇はしゃぐ独身男性たち

しかしそうはいっても記念的な旅行であることは変わらなかった。いくら冴えない独身男性4人組と言えど、お酒が入り、旅情も入る。ましてや高校生以来の友人だから若干のなつかしさがあらゆる時間の隅々までいきわたっていた。それはまるで青春映画の回顧的なシーンかと思えるほど。

映画『青春18×2 君へと続く道』より
あくまでイメージ
(*なお今回の旅は冴えない男性4人組が始終ニヤニヤしてる様な感じです)


そして色々と兵庫観光を楽しんだ末、あっという間に時刻は夕食時となった。私は仲間に話す。

「このまま明石焼きをここで食べてもいいけど、どうする?
 せっかくだから最高の牛丼を食べたいと思わないかァ?


私の声は知らず知らずのうちに観客を煽るバンドマンのように響いた。それはサンボマスターの山口くんをしのぐほどの煽りであった。

(*参考資料「サンボマスター 花束(Live)」 3分20秒あたりのMC)

勿論、みんなの反応は上々。中でもナカジマ君の反応はひと際大きかった。

「今の俺たちならヨユーだぜぇ!」

そう言いながら、ナカジマ君の首元のタプタプがタプタプしているのを私は確かにこの目で確認した。

他の2人もヘッドバンカーの様に首を縦に振った。私たちは盛り上がってきていた。

しかしその時、私は若干気になってもいた。
中だるみのようなテンションがそこには無いか?ということを。そして高揚感でかき消されている疲労が次第に呼び起こされはしないか、ということを。
ただ、私はそれらを直視することをやめた。これは旅なのである。多少のおおらかさがあってこそ旅は成り立つのだ、と。そして私たちは三宮の「広重」へ赴くことになる。

〇ここでちょっとした説明とクエスチョン


しかしここでこれをご覧の読者に説明を入れなければならない。
と言うのも私が丁度、サンボマスター山口くんの様に声を挙げた時、時刻はすでに午後の5時ごろであり、一日のスケジュールはすでに終盤へと差し掛かってきていた。
しかもその日のそれまでのスケジュールはこんな感じ。

姫路城入城(階段の上り下りがキツイ) ⇒ 
淡路島へフェリーで移動(波が荒れててちょっと酔った) ⇒ 
淡路島観光(標高が高く、寒かった)

そうスケジュールをちょっと詰め込み過ぎていたのだ。(ちなみに私たちは全員ゆとり世代である)

加えて一つの事実が私たちを襲ってもいた。
それは私たちの膝はすでに若さを失いつつある、ということだ。私たち4人は学生時代よりはるかに運動をしていないし、何なら全員腹回りというか体の部位どこかしらがタプタプしてきている。

さて、ここで簡単なクエスチョンだ。
はたしてそんな満身創痍な私たちが長蛇の列を並びきる事は可能であろうか?
答えは火を見るより明らかだと思うが、どうか続きを読んでほしい。。。

~前半以上~


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