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Photo by
kajimotojiro
Sentimentalism な下人の面皰Ⅰ面皰《にきび》
マスクをしていて汗ばんでるせいか鼻の横にできものができた。
夕食時に
「こんなトコに面皰ができてもて」
と言うと、
「面皰と言うんは若い人にできるもんやからそれは違うやろ。それはおできや」
「今、国語で芥川龍之介【羅生門】の読み解きしとるんや」
「顔にできた面皰を気にしてる下人がいるんやけど、この人はまだ若いんとちゃうかって。Ⅰ面皰《にきび》と呼べるのは若い人だけやて」
「蟋蟀というのは今のコオロギでな、やから夏やのうて秋の終わりなんやで」
次女が国語の教科書を引っ張り出してきて自慢気に語り出した。
と思ったら黙り込んで、ぶつぶつ言い出した。
「サンチ… マンタル… イズム… なんだこりゃ」
「これがわからへん」
「Sentimentalism ?」
「センチメンタルっちゅうことやんか。ん?センチメンタルって知らんか?」
「何?センチメンタルって?」
「センチメンタルって普通に使うやろ?感傷的とかそんな意味かなぁ」
「そんなん使わん。聞いたこともない。」
「日常ではあんま使わんかもしれんけど、ほら歌でもあったやん♬センチメンタルジャーニー♪って、ヒロミの嫁の伊代ちゃん!」
「ヒロミは知っとるけど嫁とか知らん」
「ドラマなんかでも(おセンチになっちゃって)とか言って使うやろ」
「知らん」
「じゃあ今はなんて言うんや?センチメンタルの事を?」
二人の会話を聞いていた妻が
「今は(病むわぁ)とか(病んでるー)とかやな」
「センチメンタルは使わん。それは昭和の言葉や」
「Ⅰ面皰《にきび》も若もんだけや」
私には、もう2度とⅠ面皰《にきび》ができることはないのかと思うと、少しおセンチになってしまう。
しかし、「病んでる」わけではないと思う。