世の罪悪の製造行程を見てしまった、朝の出来事
なんなんだこのめちゃくちゃひどい渋滞は!
日常的に、朝夕のラッシュ時には混む場所ではあるがそれにしても酷すぎる。
いつも並び始める交差点の二つくらい手前からすでに並んでいるではないか。
ノロノロ動いては止まり、動いては止まり、ちっとも前へ進めない。
私はそれほど急いでいた訳でもないので構わないのだが、遅刻しそうだとか、イライラして気が気でない人も多かっただろう。
この先には大きな工場の出入り口の門があり、そこへ入るらしき車が左に寄ってズラッと並んでいるのが見える。ちょくちょく通る道なのでたまに数台並んでいるのは見かけたことがあったのだが、こんなにもたくさん並んでいるのは初めて見る。
その車列の右側を、その工場には用の無い車が追い抜かしていくのだが、大型トラックや巨大なクレーン車までが並んでいるのでそう易々とは前へ出られない。
この工場のせいなのだな。
ほんの数百メートルの距離を、何分もかけて進み、ようやく左側に並んでいる車列の最後尾までたどり着いた私は、その工場には何の用も無いので対向車が切れるのを待ってその列を抜かすことにした。
それにしてもかなり長く列ができて、しかも普通ならノロノロと進む筈の入場待ちの車列が全く動いていない。これではなかなか右車線へ出るタイミングがない。
対向車が一瞬途切れたその隙に右車線にはみ出して走る。
そうしてその門のすぐ手前まで来たときに、入場待ちで並んでいる車列の先頭らしき中型のトラックの運転席が目に留まった。
目が点になった。
カーテンが引いてある。
こいつ寝とるやないか!
おそらく前の晩から納品待ちか何かのために適当な場所にトラックを停めて仮眠していたのだろう。
その後ろの車がそうとは気付かずに並んでしまい、そこへ他の車も続いて並んでこの大渋滞を引き起こしていたのだ。
呆れるやら腹が立つやら、後ろの方で何も知らずに並んでいる人たちが気の毒になるやら。
先頭になっているトラックの運転手本人は悪気はないのだろうが、状況をみる力が少し欠けていたのか。
すぐ後ろに並んでしまった人も、もちろん悪気はないのだろうが、判断力、或いは観察力が欠けていたのか。
そしてそこへ続いて並んでしまった人達。
こんなにも酷い渋滞を引き起こしているのは、そんな罪の意識の無い人々だったのだ。
世にはびこる罪悪などというものは、もちろん悪意のもとに作られるものもあるだろうが、こんなふうにしてして勘違いや浅慮、理解の無さ、判断力や観察力の無さ、軽はずみな行動などの積み重ねによって、悪意など無いまま出来上がってしまうものも多いのかも知れない。
とはいえ悪意があろうとなかろうと罪は罪である。
無知が罪になることもあるのだ。
せめて自分がその一端を担わないようしっかりと目を見開いて世の中を見、心の目を開いて考え、判断していきたいものだ。