ホットカーラー
私は幼い頃から素直な子だった。
3つ上の姉がいる。
彼女は、学校の勉強は良くできて親には自慢の子だったようだが、弟にはなんだか意地悪で私はよくいじめられていた。
生来の素直さからなのか、はじめはいじめられているということにさえ気付かずにいる私だったが、何かの拍子にはっと気付くとホウキを持って泣きながら追いかけ回すということがよくあったらしい。
あれは姉が高校、私が中学校に上がった頃の、母の日だったか母の誕生日だっただろうか、姉は私に、二人でお金を出しあって母にプレゼントを買おうと持ちかけてきた。
中学生になっても素直な私はすぐに同意して何にしようかと相談し始めたのだが、私の提案するものはことごとく却下され、気がつけばその頃流行っていたらしい「ホットカーラー」とかいう髪の毛をくるくる巻く電化製品に決まっていた。
二人で折半するにしても当時の私にとってはけっこうな金額だったが、「お母さんが喜ぶから」と言われると納得せざるを得なかった。
実際プレゼントすると母は随分と喜び、二人を、特にこのプレゼント企画を主導した姉を褒め称えた。
一月ほど経ってからだった、私が気付いたのは。
母には「ちょっと貸してね🎵」
と言いながら、姉は自分の欲しかった「ホットカーラー」をほぼ占有状態にし、つまり弟に負担させて半額で手に入れ、ついでに親からの称賛も手に入れていたのだった。
私は、さすがにホウキを持って追いかけ回すことはしなかったが。
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