第3話 親たちの思い
中学から高校へ進学することによって、今までの様々なルーティンが変化した。
中学時代と違い月曜日が部活動の日となった。そのため2年前から続けてきた毎週月曜の個人レッスンはしばらく行けていない。
先生には月曜日のレッスンをしばらく休むと連絡を入れてあり、レッスン代も止めてもらっている。
部活動は原則日曜日が休み。日曜日にレッスンをお願いした場合、先生が指定した場所での個人レッスンとなるのだが、私は土日勤務で送迎できない。妻は義父の体調不良から看病が優先であり、自由が効かない。
毎回祖父母に頼むのも気が引ける・・・。
それでも高校へ入学した4月、そして5月と月一回のペースでレッスンを受けさせてもらった。送迎はあの手この手で乗り切る。
5月、初めての保護者会を居酒屋さんで開催。例の感染症も下火になってきたとはいえ、まだまだ夜の街は活気を取り戻しきれていない。
保護者会の参加者数もそれに比例し、12名に顧問の先生が2名の14名。部員数は48名である。少数参加の会ではあったが、他の保護者との情報交換や、普段の活動の様子などを教えてもらい、有意義な時間を過ごすことができた。
保護者会では一つ上の2年生クラリネット奏者のお父さん(Tさん)と知り合えたのが良かった。Tさんの娘さんは、常に県代表として支部大会出場常連の中学出身だ。私と娘は弱小吹奏楽部と共に歩んできた身であり、Tさんとは見てきた景色が違いすぎる💦
それなりに盛り上がった宴会はお開きとなり、場所を移して二次会へ突入。私を含めて5人だけが残った。ここまで来るとよほどの酒好きか、熱心な保護者か、である。
会話の内容は表面的ではなく、本音を交えた深い話が多くなってきた。
例のTさんも良い感じに酔ってきて、本音を語り始めた。
Tさん『この高校の吹奏楽は全体的に冷めているように感じる』
私と娘の中学時代の経験から、ある程度の強豪校は先生・生徒・保護者が一体となって盛り上がっているイメージを持っている。
部員数の割に今回の保護者の参加者が少ないなとは思っていたけど・・。
娘と同級生クラリネットN君は、兄弟がこの高校吹奏楽の出身である。ちょうど名のある指導者が転任してきて、強豪校へ変貌を遂げる直前に入学した。そのお父さんも本音で語り出す。
Nさん『当時は挨拶の仕方や廊下の歩き方に至るまで事細かく部内で取り決めがあった。上位大会へ進むために変化を起こす雰囲気があったが、今はどうなのか・・』
私は新参者なので『へえ〜そうなんですか〜、そういうもんなんですね〜』しか言えない。
現状を色々と解説してもらい、今後の活動の課題をイメージする。今までの中学3年間の環境とはまるで違う状態。
昨年まで県代表を三年連続で務め、支部大会へ進んできた吹奏楽部。
娘の入部早々、今までの実績はあてにならない実態を知った。
中学では何年も最初の地区予選で敗退し続けてきたバンドに入部したし、もはやなんでも来いといった心境ではあった。
高校生ともなれば中学生と違い、多くの分野に主体的に関わるようになる。
あまり首を突っ込みすぎず、様々な選択肢を提供できるようにしよう。
生々しい宴会は夜遅くまで続いた。