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弱小吹奏楽部を追いかけた軌跡 第31話 最初で最後の定期演奏会




 2月、豪雪地帯に住む我々にとって春は待ち遠しいです。

 個人レッスンに通うこと1年、会場までの道のりは車で1時間。しかしこの時期は雪の影響で1時間半、それ以上の時もあります。

 何度か先生に『遅れるかも🙏』連絡をしましたが、先生側も事情を配慮してくださり、何とか冬の厳しい環境をしのぎきりました。

 3月、雪は落ち着いてきましたが、いよいよ新一年生の入学、4月の定期演奏会が迫ってきました。

 新一年生の吹奏楽部員獲得のため、微力ながら定演告知&勧誘動画を作らせてもらうつもりでいました。

 この動画は定期演奏会の告知も兼ねています。今年はなるべくショート動画でインパクト重視の内容で作成することに決めます。

 定期演奏会は4月末の土日に行う予定のはずですが、事前準備や相談などの打診はなかなかありません。

 娘に聞いても、本当に開催するのかすら伝えられていないようでした。

 4月、まもなく半ばになろうかというタイミング。ようやく保護者会長さんより打合せの案内が回ってきます。

 ポスター制作や告知など、数多くのお客様にご来場して頂くことを考えると、明らかに案内が遅すぎると思いました。

 そして打合せの日がきました。会議室で約束時間を待ちます。半数も集まりません。いつものように1週間前の案内ですから・・・

 打合せが始まりましたが、普通の全校生徒向けの演奏に毛が生えた程度の構想内容です。
 コロナ禍の影響で、定期演奏会の開催は久しぶりです。娘は3年生になってようやく初めての経験です。今回が中学時代の最初で最後の定期演奏会になるわけです。

 私にはこの雰囲気が耐えられませんでした。
 何年か前の資料を持ち出して、同じような方向で開催したいという旨の説明が続きます。
 全く主体性がありません。保護者会長さんが問いかけました。
 『何か質問はありませんか?』

 私の想いは最高潮に達し、そのあとは何を話したのかよく覚えてはいないです・・
 とにかく開催まで残り約2週間。入場者数の目処とパイプ椅子の数&配置方法、呼び込みの方法、告知の仕方、駐車場の確保、朝の集合時間と各役割、学区内のコミュニティに対する対応、他にも確認事項もろもろ・・・

 ほとんどの質問に会長さんは答えられませんでした。無理もありません。弱小吹奏楽部が今後も存在するための会長さんでした。
 直接お会いして話合いをしたかったのですが、忙しいという理由で全てお断りをされました。

 藤重佳久先生の本を読んだことがあります。その中には子供達が上達するための、ある意味で燃料となるのはお客様の拍手であると書かれていました。
 娘が人前で演奏する機会が多いと演奏能力が向上する気がする、と私に言ったことがあります。我々保護者はそのための機会を多く設定し、1人でも多くのお客様を呼び込むことが使命だと勝手に思い込んでおりました。

 ゴールデンウィーク初日の定期演奏会。それを約二週間前から告知するわけです。すでに旅行や外出の予定を組んでいる家族も大勢いるでしょう。

 若い人を足止めさせるため告知動画を作り、YouTubeで公開することを提案しました。
 SNSアレルギーを持つ先生から猛烈に反対されましたが、子供達の顔出しをしない・限定公開という条件で許可してもらいます。ポスターに動画のQRコードを貼ります。
 すぐに撮影の日取りを決め、部活動の時間を少し活用させてもらうことになりました。

 会場周辺の装飾などは2年生の保護者中心に作成。駐車場管理は3年生保護者、地域のコミュニティ向けの告知は保護者会長などなど、大枠で色々と具体的に決まりました。

 後日、告知動画の撮影を行いました。顔出しはNGです。子供達に楽器を持って歩いてもらったり、円陣を組んでもらったり、黒板に字を書いてもらうシーンを早送りで編集したり・・

 結果的にある程度満足のいく動画ができあがりました。URLをSNSアレルギーの先生へ送って、ひとまず完了です。

 この時点で定期演奏会の開催まで約10日。もう毎日が必死でした。

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