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2年前、廃案になったときと何が違ったか/週刊「移民国家ニッポン」ニュースまとめ(23.4.23-23.4.29)

定点観測の価値はこういうときにこそ発揮されるので、2年前の報道がどんな感じだったか、当欄バックナンバーで振り返ってみましょう。

入管法改正案の衆院採決に関して、5/15の朝日新聞に「自民党が野党側に歩み寄りの姿勢を見せた背景には、日増しに大きくなる、改正案への世論の反発があった。ある与党幹部の事務所には抗議のファクスが何十枚も届き、別の事務所には電話が相次いだ」って記述に、なるほど。……ファックス。
って私もなったんですけど、めまぐるしい1週間ではありましたね

記憶しておきたいのは「民意」が改悪をストップした。って言うけど最初からそんな空気があったわけではなく、露悪的な表現をあえてするなら「ウィシュマさんが亡くなっていなければ」静かに通過していた、ってことです。つまり、浮かれていられる要素、どこにもないよね?

ちなみに1年前。

私個人は入管という組織が右手で出入国管理を、左手で(人道的判断の必要な)難民保護を、というジョブディスクリプションにそもそも無理があると思っています。ことばを換えれば、入管は機械的処理だけを担当し、判断をともなう事例については第三者機関がおこなう体制に変える。そうしなければ特高警察時代から続く「全能感」は断ち切れない。野党の改正案は、そうした「あるべき姿」に近づけるための第一歩であってほしいんですよね。

■そこで問う、2年前は廃案になったものがなぜ、今年、衆院法委を通過してしまったのか

問う、と書いた直後に恐縮ですが、一応の解は用意してあります。
・ウィシュマさんが亡くなった3月に潮目が変わった
・というか2月時点では世間的にはほとんど無風だったので、ひとりの女性が社会に与えたインパクト、大きかったんですね
・COVID-19の状況、2年前がどんなだったかはNHKの特設サイトが見やすいです。下記は2021年5月

そして今年。感染者数も1週間平均も今年のほうが多いんだけど、世間的にはもう無風。

話を戻して、2021年5月の入管法改正案が引っ込められた理由
・ウィシュマさん没後すぐの「空気」
・コロナ禍の猛威に由来する内閣支持率の低下
・選挙(7月都議選、10月衆院選)だった

比べて今回
・ウィシュマさん収容中監視カメラ映像の全貌をなんだかんだ理由をつけて見せないことで、入管という組織で何がおこなわれているか、ブラックボックスの内側に留めることに成功
・低水準ながら特記事項として目立つほどではない内閣支持率
・選挙終わった

なるほど。2年間何をやってきたんだ俺たち改正案否定派。
いわゆる改正案の何がダメなのか、その本質を訴えることが出来ていなかったからこそ、強行する空気をここで押し返すことができなかった。

とはいえ、下記にもある通り、まだ衆院法務委員会を通過したところであって、このあと衆院本会議、参院法務委員会、参院本会議、と止めるチャンスは残っているので。

■その意味、これまで着目してこなかったポイントを衝く手法は正しいと思っています。

が。
ウィシュマさんの死というものすごくアイコニックな事象がなければ、われわれの社会は理に合わないことでも看過できてしまうことがあらわになった以上、上記のような理屈っぽいプレゼンは届かない、まずそこを自覚しないとね。

■1億総白痴化(初出1957)社会に訴求する「コンテンツ」とは、たとえば

こういうのなあ。って納得いかないのは私もですが「こういう記事」に反応する勢を巻き込めなければ、どんな悪法であろうと成立しちゃうわけで。

■しつこいようですが、今回のプロセスで最もしょーもなかったのは

立憲民主党は反対を決めた。与党が立民に示した難民認定の第三者機関設置の検討を付則に記す別の修正案は白紙となる

せっかく譲歩案を出したのに、反対するんだ。じゃあやらない。
……ってこの一幕です。法の改正ってそんな感情論の応酬なんですか。
子どもたちにこういう姿を晒して恥ずかしくないですか。

■先々週ぐらいからのトピック、技能実習制度廃止云々その後

なお就活生用にまとめたサイトがコンパクトで良かったので共有

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■サムネイルは法務大臣が「勝手に編集し公開された」とオカンムリだった動画から

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