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娘と同世代ぐらいの女性を「姐さん」と呼んでしまう件(全仏2021開幕前の大坂なおみ)

どっちかというと自分の娘に近い年代なんですけどね、大坂なおみ。と呼び捨てにするより、なおみ……ねえさん! と続けるほうが、個人的にはしっくりきます。テニスプレイヤーとして以上に、「自分のことばで考えたことを語るひと」としての彼女が好きなので。
今やひとかどの「世代の代弁者」ですけど、ちょっと前の、内気な少女時代のことを思い出せるからなおさら応援したい。(というnoteを書いたことがある)

彼女の情報は本業であるテニスの試合があろうがなかろうが、自動的に入ってくる環境を構築しているので、第一報は本人インスタグラムで知りました。
以下、テニス界、スポーツ界を飛び越える話題となった、彼女の「全仏オープンの記者会見やりません宣言」について、姐さん親衛隊としての私見を申し上げたく。

最初に「記者会見をボイコットする」表層が耳に入ったとき、え、何で? となったのは私も同じです。彼女の記者会見が、いくつかの例外を除くときわめて友好的に推移してきたことは下記noteを書いたときにあらためて調べたから、知ってるんだ。

では、姐さんの真意は何処にありや。
そこであらためて注目すべきは、彼女のインスタメッセージからリンクが貼られている動画だろうな、と察することになります。

今回日本のメディアが圧倒的にダメだったのは、自分たちがかろうじて理解できるSNS、ツイッターだけを取り上げて事足れりとしたところです。
姐さんの主たる発言の場はインスタグラムなんです。そこをまずは認識していただきたい。

よろしいか。
試合後のプレスカンファレンスには参加しません。たとえ罰金が科せられても。って発言が取り沙汰された彼女のアナウンスには、実はふたつの動画がセットで付いていた。

そのことに逸早く気付いた海外のニュースメディアでは、ぽつりぽつり、意義を考察するひとが出ます。日本の媒体が
「金持ちだから言えることだ」
「プロなら負けたときの記者会見までがセット」
「ラケットを叩きつけて破壊したことを追求されたくないんじゃないか」
「スポンサー商品を身に着ける広告塔としてのアイデンティティと矛盾してるだろう」
みたいな素人くさいことを言ってる間もね!

メンタルヘルスに耳目を集める意味で、大坂なおみのメディアボイコットが重要な一歩である理由

インドのスポーツ系ポータルサイトに載った、ハレシュ・ラムチャンダリという人のコラム。
タイトル以上のことは特に書かれていないのですが、ジョン・ヴェルトハイムという著名スポーツ編集者のツイートを引用していたのが目に留まりました。
「今回の件は私たちに現行モデルの再考、改善を促す契機になるのかもしれない」そう書いたヴェルトハイム、自らのツイートにぶら下げていわく。

個人的には選手につながる機会は増えるべき派だけど、興味深いのは「メンタルヘルス成分」という観点。これは
「俺は会見に出たから罰金を払う必要は無い」という話ではなく、
「この会見は自分の精神を腐食させ、結果的にパフォーマンスにも悪影響を及ぼす」って話なんだよな。

ここに来て、ナオミ姐さんのインスタ3画面中の3番目の意味が腑に落ちました。
「俺は会見に出たから罰金を払う必要ない」。
2015年スーパーボウル・メディアデーにおいて、シアトル・シーホークスのランニングバックだったマーショーン・リンチが29回繰り返したことばだそうですが(=調べて知ったマン)、つまり「罰金を払わなくて済ませるためだけに記者会見に出席することだって可能」なシステムだけど、それはおかしくないですか?
それこそが、なおみ姐さんのメッセージの一部であろう、と。

大坂なおみが記者会見を拒んだことで関心が喚起された、アスリートのメンタルヘルス

(旧称スポーツブログズ・ネイション)SBNATIONというサイトに、元女子プロバスケットボールプレイヤーという経歴の書き手、シドニー・ウメリが寄稿した記事。
なおみ姐さんのインスタに付けられていた動画について、丁寧に解釈をほどこしています。
14歳のヴィーナス・ウィリアムズの取材で、しつこい記者にヴィーナス父がキレる。という主旨で知られる(インスタで2番目に取り上げていた)動画について、この質問者に問題があることは自明ながら-とウメリは自問自答します。
「ヴィーナスの最初の答えを聞いたうえでなお、同じ質問を記者が繰り返したのは何故か」。
それは、取材側が聞きたい答えに近づけようとする作業なのでは。
意識しているか否かにかぎらず、こう答えてもらいたい、という意志を持つ取材陣の前にアスリートが座らなければならないのは、控えめにいって消耗する、そう彼女は書いています。

Media is required, but knowing that, Naomi decided that she would much rather pay the fine. That begs the questions, if media wasn’t required, how many athletes would willingly opt to participate? How many are doing it so that they don’t get fined?
(会見出席が必須条件と分かったうえで、大坂なおみは会見より罰金を選ぶという。ではもし出席が必須でない場合、喜んで会見に臨む選手は何人いるだろう。罰金を払わないために参加している選手は何人いるだろう)

メンタルヘルス月間でもある5月、心の健康状態を気にかけなければならないのは誰しも当然である。そのことを今回の大坂なおみの提起は示している。という解釈に深くうなずく私。

そもそも-2020年全米オープンにおけるBLMアプローチが典型ですけど-自分の言動が世界に与える影響に自覚せざるをえなくなって、もう2年が経つんですよ、なおみ姐さん。
我が身かわいさだけなら、それこそルーティンとして記者に対応していればいいだけなのに、あえてcontroversialなトピックをぶっこんで来たんだから、何かしらのメッセージがあるに違いない、って思うべきだろうが!
大坂なおみ個人のワガママで記者会見を拒否している、と思っているひとが一定数、居るのは仕方がないとは思うものの、せめてね、スポーツメディアに携わっているひとたちはカネの取れる仕事をしてくれ。
そう思っていらいらしていたところ、ようやく出てきた日本語テキストがこちら。

大坂なおみの取材拒否宣言について、全仏会場に居て思うこと

Yahoo!ニュース個人における、内田暁の記事。

今回の行動も、彼女の友人や仲間の選手たちを代表しての行動ではないだろうか? 自ら旗幟を鮮明にすることで、記者会見やインタビューの在り方について、話し合いを促進しようとしているのかもしれない。それぞれの立場の者が意見交換しあい、膿を出し、良い関係性やシステムを構築することを望んで。

それな!

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