見出し画像

群馬のアニキが釈放されていた件ほか/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.5.2-21.5.8)

世の中の「潮目」ってあるじゃないですか。オリンピック開催反対の潮目、とか。技能実習制度には改善すべき点が多数あるが、我が国の労働力不足解決のためには目をつぶるのもやむなし。みたいな報道が主流だったんですが、今週、そっち側の総本山ともいうべき日経新聞が「特定技能のほうがイイじゃん」って言い出した記事を掲載、おお、これで潮目が変わるのかもよ。と思ったんです。

技能実習制度が日本で学んだ技能や技術を母国で生かしてもらう「国際協力の推進」を目的とするのに対し、特定技能制度は人手不足が深刻な産業分野での外国人材受け入れを狙いとしている。
最長5年の技能実習に対し、長く日本で働けるのが特定技能の特徴だ。一部業種は1号(5年間)を終えて2号に移行すれば何度でも更新可能で、家族帯同もできる。技能実習は原則として転職できず、劣悪な環境などによる失踪が問題化した。特定技能は同じ業務なら他社に転職できる。

制度が始まった2019年4月から2年が経ってようやくねえ、という感慨。
なお、毎週紹介してる気がする信濃毎日新聞の連載(無料登録で読めます)も、同じ文脈での具体例もりだくさん。

■群馬のアニキ

逮捕当時はあんなにワイドショー的な関心を集めていたのに、もはや継続ウォッチしているのは上記ライター氏(と俺)ぐらいでは。というところですが、これまでのあらすじをまとめると
・北関東で果物や家畜の窃盗事件が相次ぐ
・ベトナム人犯罪集団が暗躍している、という印象が形成される
・65%ぐらい(=適当)は合ってるけど残りの犯人は日本人ですよ
・というかすぐに「組織」って言っちゃうおまえはコナンの見過ぎだ
・そんななか、ベトナム人犯罪組織の大立者としてスケープゴートにされたのが群馬のアニキ
・ただのお調子者くさいよ、とはニュースを追っていれば分かることでしたが、逆にいうと丁寧にニュースの中身まで追っていなければイメージが肥大してしまうのも仕方がないぐらい、表層的な報道が繰り返されていた(そのころ書いた私のnoteはこのあたり。だいたい報道姿勢に文句いってます)

それでね、豚とか盗んでないし。って群馬のアニキが主張していることを文春オンラインの今回の記事が伝えるなか、一般的な関心はどうやら「そんなことより強制送還されないの?」というところにあるようで。
帰国便が手配されるまでの間の仮放免扱いじゃない? と個人的には思うんですけど、うがった見方をすれば、この期間で何か微罪でもいいからアニキが犯してくれれば入管法改正の必要性を喚起できるのに。という体制側の暗い願望を背負わされたスケープゴート予備軍じゃないのか、と危ぶんでいます。

■その入管法改正案、行方は予断を許さないままですが、さすがに各メディアがいろんな形で問題点を可視化しつつあるので、風向きが変わってきたような印象はあります。まだ「潮目が変わった」とは呼べないまでも。

東京五輪を控え、15年以降から仮放免の運用が厳格化された。それまで仮放免者の就労は実質的には黙認状態だったが、入国管理局長名で出された仮放免者への「動静監視の強化」の通達の下に、入管職員が突然自宅を訪問するなど監視が強化され、就労が発覚して収容される人が増えたという。

■それでね、いまの入管の在り方のまま、その権力をさらに強めるような改正案は受け入れられない。という主旨の報道を読んでいたつもりが、違うところで「え」ってなった記事がありました。これ。

コロナ禍に、入管施設が収容者を「仮放免」した例も増えている。
「外国の人が公園で野宿しているという情報がありました。東京都内の公園にいた60代の男性は、殴られて頭蓋骨を骨折していました。病院に運ばれたのですが、その人が仮放免中の外国人だと知った病院は、彼を車椅子に乗せて公園に連れて行き、そのまま放置しました」
(反貧困ネットワーク事務局・瀬戸大作さん)

それ入管ドイヒーというより病院または最初に襲った人間の酷薄さを示すエピソードじゃないですか。そもそも本当なの? 本当にそんなことが?
って発言者のサイトを確認したら、2021年4月22日にもうちょっと詳しい記述がありました。
参議院議員会館で開催された「入管法改悪反対! 緊急院内集会 ~移民・難民の排除ではなく共生を~」に、反貧困ネットワークを代表して出席し、こんな話をしてきた、という文脈。

私からは、反貧困ネットワークのシェルターで暮らしているPさんの事に触れた。
「昨年5月に、家賃が払えなくなり家から追い出されて公園で寝泊まりしていた中国人の仮放免者Pさんは、背後から鈍器で頭を殴られて気を失い、救急車で病院に運ばれた。翌日、意識が戻ると、頭がい骨が陥没し、右足が麻痺していた。しかし病院は、仮放免で医療費が払えないとわかると、動けないPさんを車椅子に乗せて、病院の車で、野宿していたもとの公園に連れていき、ベンチに放置した。その後Pさんは、数日間、近所の人がくれる食べ物で空腹をしのぎながら、自分で足をマッサージして何とか歩けるようになり、その後、反貧困ネットワークのシェルターに入所した」
仮放免者は医療も受けれず、重篤な病状にも関わらず、医療も受けれず放置される実状、生存権すら保障されない。
「おいでよ。一緒に暮らそう」
私たちのような小さな民間団体が支えるしかない。Pさんは働く事が許されない。Pさんの住まいと生活費をずっと払い続けなければならない。

Pさんが話を盛ってるかもしれませんけどね、入管の「仮放免=働くな病院に行くなおまえたちはお情けで居るだけだ」って方針を難じるにおいて、説得力がある話に思いました。
それと同時に、日本社会で起きた事である以上、無関係の顔で聞き流していい話ではない、とも思ったのです。

■病院が医療費を請求できないから公園に放り出した、という流れで思い出した2021年1月29日付、上毛新聞の記事

就労や健康保険の加入が認められず困窮する仮放免の外国人が、医療機関で受診を拒まれるケースが群馬県内で出ている。コロナ禍で経営難となっている医療機関側は、無保険で診察料などが未払いとなる恐れが強い外国人患者の受け入れには二の足を踏む。「人道的に受け入れる」とする病院も多いが、支援団体は「誰もが平等に医療を受けられる仕組みが必要」と指摘している

政治の仕事だろうなあ、それも国政の。って感想を持ったのですが

外国人の未払い医療費の対策として群馬県は、未払い分の一部を県が補填する「外国人未払医療費対策事業」を1993年から実施。2002年度の25医療機関への計約2100万円をピークに、19年度は15医療機関の計約600万円と減少した。同事業は本年度限りで廃止の方針だったが、関係団体から再検討の要望も出ており、県は「再設置も含め、検討している」とする。

って1月の記事で言われていた件、結局どうなった。
群馬県の今年度予算を見に行きました。

私が確認したPDFはこちらです。

いいなと思ったら応援しよう!