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いつメン/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.7.4-21.7.10)

日本で暮らす外国人にまつわるトピックを集めていると(今号で97週目です)ニュースに登場する顔ぶれが固定しがちなことに、否応なく気付きます。
入管でしょ、技能実習制度でしょ、ベトナムやスリランカなど、そのときどきで1週間で多く耳にする国名に波はあるけど、そうした固有名詞。
全体の傾向がそんな感じなだけに、珍しい話題があると、少なくとも私は色めき立ってしまう。そして、おおむね良いニュースではないため、もれなく「一瞬盛り上がってしまった自分に対する嫌悪が後から来る」までがセット。我ながら変な習慣。

■共同通信の記事を配信したのが日刊スポーツだけ、という事象とともにご紹介します

近所の公園で長女(3)を遊ばせていた際、園内にいた男性から、息子が長女に突き飛ばされたとして「外人」「在留カード出せ」などと詰め寄られた。男性の通報で警視庁の警察官6人が駆け付け、日本語が不自由な女性に「おまえ本当に日本語しゃべれねえのか」などと発言。その後女性と長女のみ最寄りの警察署で約2時間半、任意聴取された。
女性と長女は突き飛ばしたことを否定。だが警察官に暴行を認めるよう言われ、男性側に連絡先の電話番号を伝えることに同意するまで帰してもらえなかった。警察側は後日、民事訴訟を起こすとする男性に女性と長女の氏名や年齢、住所などの個人情報を伝達。女性が長女を監督できていなかったとして児童相談所に通報した

これだけで十分わけが分からないのですが、苦情申出書を提出した弁護士によると

担当警官は、途中で彼女に部屋を出て行くように指示し、わずか3歳の娘さんを母親から引き離し、複数の警官で取り囲みました。

3歳児を! 警察官が複数で! お母さんをヨソへ行かせたうえで! 取り囲む!
そんな国なんですか、私たちが住んでいる国は。嘘だと言ってくれ。
あと、この件についての情報が少ないのは何なんですかね。
「在留カードを出せ」なんてセリフが出てくるのが異様だし、通報で警官が6人駆けつけるのも異様だし、みたいなことから憶測が捗るのも致し方なしと私も感じました。注目せざるをえない。

■なお、嘘だと言っておくれよ的な感想自体はいつメン

■非道を非道として正面から指摘する必要があるのは、現状追認をいつまでも続けてきたからこんな国になってしまった。と信じるから

憲法が定める法の下の平等は、国籍や在留資格に関わりなく保障が及ぶべきものだ。ところが、最高裁は78年の判決で、外国人の人権の保障は在留制度の枠内で与えられるにすぎないと断じた。
差別を正当化するその論理を、いつまでもまかり通らせていいのか。個の尊厳や人権を在留管理の枠に閉じ込め、入管を憲法の「例外地帯」にしてはならない。
当事者である外国人は選挙権を持たない。その声を受けとめ、政治を動かして入管制度や収容政策のあり方を変えるのは、この国の主権者である私たちの責任だ。

■人の心の奥底にある「知らないものは怖い」って感情を増幅したのがゼノフォビアだと思うんですけど、そういう感情を囃し立てるような書きぶりはもはや「悪」の範疇ではないか、と言いたい

この記事も、テロ対策の文脈にAIを導入しますよ。って話なら特筆すべき要素は無いものを、わざわざ「不法残留しそうな奴を事前に検知して入国させねえ」って外国人嫌悪をアオる文脈を書き加えているところが悪質。
そりゃこの媒体だから、って媒体のせいにするのは簡単なんですけど、こっちの記事はどうですか。

これも書き方ひとつでは。「日本人より1週間遅く発送」が事実だとして、じゃあ日本人向けの発送を1週間遅らせればよかった?
最初から国籍で仕分けせず全対象者向けの作業を一斉にやればよかった、ってshould have +過去分詞構文で感想を述べるのは楽ですけどね。
そもそもこういう書き方が世の中の分断を促進することになりはしないか、ってところまで考えたうえで記事は完成したのか。

さらにワンランク面倒な話が今週はありまして。

これ、執筆者を含む関係各位の行動は善意なんです。だと思うんです。
昨夏、農作業中に落雷で亡くなった外国人労働者がふたりいて、いずれの方も非正規滞在だったせいで本来あってしかるべき対応がなされていない、そういう話だと理解しているので。

ちなみに第一報当時の私の書きぶりはこんな感じ。

何が言いたいか。
人を死なせてしまったことで責められるのは仕方ないとして、非正規滞在の外国人を使い捨てする極悪非道、って抽象度をあげた存在になっていませんか。そこには憎しみをふりそそいでいいんだよ、ってけしかけてませんかね。
その構造がキモチイイのは分かるんだよ、だけど。って一拍おくことがどんどん難しくなる世の中じゃないですか。
(冒頭でとりあげた3歳児を取り囲む警察官の図、を想像するだけで私のハラワタが煮えるのも、世間的に盛り上がっていないからせめて自分は、って構図で、業が深い)

■どこかで関連していると思う話

新聞社が奨学生制度と称して配達要員を確保している、だが彼らの大半は残業代をもらえず重労働にあえいでいる。
という話はさんざん指摘されているのですが、新聞業界あげて黙殺し続けているわけですよ。
そんななか、正面からいまさら新聞配達礼賛の記事が公開されるとか、こりゃまた……挨拶に困るね。という感想でした。ええと、穏健にそのあたりを指摘している記事(2019年6月)を参考までに。

良きにつけ悪しきにつけ、世間の状況を知るにはメディアに拠らざるをえない我々、しかしメディアにはメディアの懐事情というものがあるから、彼らがいつも「正しく報道する」とは限らない。
過剰に恐れず、過剰に嫌いもせず、って距離感が大事。
97週間ニュースクリップを続けてきたマン、そう思います。

■というわけで、身内じゃない視点でものごとを捉えることができる機会にみんなが飛びついたのがこちら

とにかくボリュームある文書だから、ほとんどのひとがメディアが概要を報じる以上のところまでは知らないうちに忘れてしまう話ですよね。だからこそ、日本語に訳出した労は賛辞に値すると思います。
(という流れで自分のテキストも宣伝しておく)

■技能実習制度関連、今週の主なニュース

なんか似たような話を見たか聞いたかした気がするなあ、ってお思いですか。合ってます。でもまたそれとは違うニュースが今週も、たぶん来週も、ある。

■って流れでも看過できなかったのが、農業における技能実習制度についての見解をまとめた次の記事でした

・技能実習制度にはそもそも日本で学んだ技能を母国に移転するという建前があります
・それが建前にすぎないことはアメリカ国務省も10年前から指摘してきたぐらいで、みんな知ってる
・ただ、それでも建前って大事なのは、抑止力として機能することもあるから。「人手が足りないから技能実習生って名前で労働力を海外から安く買ってくるんだよ」ってそんな非人道的な言い分は国際社会で受け入れられない、だからこそ「日本で学んだナントカを」って言ってきたわけです
・ところが上掲記事本文にいわく、

母国の企業を辞め応募してきた技能実習生の多くは元の職場に戻る例が多いが、農業のように自営業出身者は必ずしも研修し学んだ技術に直結する職場に戻るとは限らない。自営業に関わる就業機会が少ないからであり、日本で得た日本語や労働の仕組みや規律などの経験を生かし、日本語関連や日系企業に就職するものも多い。これらも研修の成果と位置付けてよいであろう。

は? 農業ではなくて日本語使う仕事なら技能移転。って書いてるけど、さすがにそれ、都合よすぎると思いませんか。

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