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週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(20.10.25-20.10.31)

今週はもう、群馬県太田市のことで頭がいっぱいですよ。おかげで横山秀夫D県警シリーズを自宅本棚から探す旅に出かけることになったり(見つかりません)上毛新聞ウェブサイトのクリック回数がこの1週間でうなぎのぼったり。

■第一報はこれかな。見出しの「19人」は住んでた人数で、この時点の逮捕者は「2人」。10/26 12:44(共同通信)

で、13人逮捕というアップデートが翌日付の日本農業新聞に。

「11人が不法残留、2人が旅券不携帯」
「11人は容疑を認め、2人が否認」
「13人のうち10人が技能実習生として2016年以降に来日」(以上は朝日新聞の記事から)。
ちなみにこの時点で彼ら13人が問われているのはあくまで出入国管理法違反の容疑であることに、留意されたし。
豚や牛や果物を盗んだ、とはケーサツもメディアもひとことも言っていない、だけどいんたーねっつではそういうコンセンサスが形成されている。
いいですか、ここ、テストに出ますよ。

■まぎらわしい書き方をさせてしまってゴメンな。

最後の方に「太田市で逮捕されたベトナム人グループとの関連は分かっていない」って書かれている通り、ぜんぜん別件だと思うんですけど、このタイミングで「ベトナム男」って言われちゃうとね、あーあのニュースでしょ。ってなるわな。

■これも別の話

別の話なのに「埼玉県や群馬県の住宅で覚醒剤と合成麻薬のMDMAを隠し持っていたとして、ベトナム人の男女10人が逮捕されました」ってここでも群馬が暗躍していて(してない)、どうした、この急なベトナム&群馬ペアキャンペーン週間。

■そして「と畜場法違反容疑」で4人逮捕。10/28 15:58(共同通信)

冒頭で紹介した「13人が出入国管理法違反容疑で逮捕」案件と混ぜてください、といわんばかりの重複キーワードのオンパレード。
ベトナム人、豚、逮捕、群馬県太田市。
そら読売新聞が勇んでなんか書きたくなる気持ちも……わかる?

4人は車を所有しておらず、県警は家畜の「運搬役」などほかに仲間がいたとみて調べている。
県警は家畜窃盗への関与が疑われる同市の別のベトナム人グループ13人を入管難民法違反(不法残留など)の疑いで26日に逮捕。県警幹部によると、グループのメンバーが使っていたSNSに、4人のアパートと焼いた豚肉を収めた写真が投稿されており、県警が関係を調べている

ちなみにこの「車も持ってないのにどうやって持ち込んだんだ!」という話は

その後の調べに対し、複数の容疑者が「ベトナム人のコミュニティーのSNSを通じて豚を購入した。豚は解体して食べた」という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材でわかりました

Facebook経由ショッピングでした、というオチみたいで、謝ったほうがいいと思うよ、読売新聞。ただ、読売だけではなく、たとえば毎日新聞も、こんな感じで伝えているんですよ。

県警は28日午前、解体が行われていたとみられるアパートをと畜場法違反容疑で家宅捜索した。県警によると、カオ容疑者らは、7月前後の数カ月間にわたって、自宅アパートで豚の解体作業をしていたとみられる。
一連の事件に絡み、県警は26日にも別のベトナム人グループの男女13人を入管法違反(不法残留)などの疑いで逮捕している

「一連の事件に絡み」。Oh、完膚なきまでのワンセット扱い。
予断をもって報道されているかもしれない、って疑いながら読むことが、今の時代のニュースの受け取り方に必要なスキルね。あーはいはい。知ってた。

■さてここで問題です。次のニュースは
「出入国管理法違反容疑13人」
「と畜場法違反容疑4人」
どっちを伝えるものでしょうか。

■みんなが豚と果物に気を奪われすぎるなか、こんなニュースもあった。

8月に誤認があったことを、ようやく10月下旬になって警視庁が白状したのは、真犯人と思われる「別のベトナム人の男を24日、窃盗の疑いで」逮捕したから。

■これなんて何年前からやってる話なのか。さかのぼってムカムカしてしまう。

平成三十年三月六日、日本経済新聞は、「技能実習生として来日したベトナム人男性が、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染作業に従事していた」ことを報じている。この男性は平成二十七年九月に来日し、実習先である岩手県の建設会社と契約した業務内容は、「建設機械・解体・土木」であったことが報じられている。
このベトナム人男性と契約した建設会社の社長は、日本経済新聞の取材に対し、このベトナム人男性が除染作業に従事していたことを認め、「日本人がしている仕事をやらせただけ」であり、「『実習』というのは建前で、外国人側は稼げればいいというのが本音だろう」、「除染に実習生を使っている会社はほかにもある」と回答したことも報じられている。他方、ベトナム人男性は「除染作業との説明はなかった」と回答している。

■ほかにも連綿と続くあれやこれや。

■申し遅れましたがサムネイル写真は「出入国管理法違反容疑13人」主犯格とみなされている人物のfacebookカバー写真の一部です。
ベトナムの人が写真に付けるコメントは、事件発覚後こそ非難の声であふれるものの(「ベトナムのイメージを落とす以外の何の役にも立ってない、もうそういうの、うんざりなんだよ」「マジひどいさっさと刑務所に行って」)、実はアップ直後(2019年12月)は純粋な「いいね」がそこそこの数、付いていまして。
日本在住かベトナム在住かにかかわらず、ベトナムの人が抱えているフラストレーションがそういう形で垣間見えること、ちょっとは覚えておいていいと思うのです。

もうお忘れかとも思うのですが「前橋市富士見町皆沢のホテルで9月10日朝、経営者の女性=当時(71)=が刺殺され現金が奪われた事件」

捜査関係者によると、男と交流のあった複数のベトナム人が、逮捕される前の男から頼まれて金を貸したと証言している。男は当時、知人に「金に困っている」などと打ち明けていたという。
男は2018年10月22日に来日。奈良県の金属加工会社の技能実習生として働いていたが、その後行方不明になった。今年6月ごろにベトナム人コミュニティーを頼って群馬県を訪れ、大泉町や前橋市を中心に生活していたとみられている

貧しい国から出稼ぎにやって来る外国人がやらかす犯罪に、いつ自分も巻き込まれるか分からないのだから、外国人の動向には目を配っておくべき。
という言い方であればすんなり耳に入るひとのほうが、まだ多い気がしますけどね、個人的には、そうじゃなくて
海外からの労働力を織り込まなければ国として立ち行かなくなりつつあり日本でこれからの時代を生きていくということは、異なる文化との共生が必須条件になるってことで、であれば、どんな悩みを持って/どういうことに幸せを感じて暮らしているのか。隣人に関心を持ちたいと思いませんか(すっげえハードルを下げた言い方)。そんな感じ。

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