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聖アンデレ(1-A):聖アンデレ

聖アンデレのプロフィール

生没年は分かりません。

出身は、ベツサイダ(Bethsaida)という都市です。ガリラヤ地方の中にあり、ローマ皇帝アウグストゥスの娘ユリアにちなんでベツサイザ・ユリアスと言われた都市です。現在は、イスラエル共和国にある古都エッテルとして知られています。同郷には、12弟子では、ペテロと聖フィリポがいます(ヨハネ福音書1:44)。

聖アンデレとペテロは一緒に漁師をしていました。また、バプテスマのヨハネという高名な宗教家の弟子でもありました(マルコ福音書1:16、ヨハネ福音書1:35以下)。

そして、聖アンデレは、ヨハネにイエスが優れていると聞き、イエスの宿に一晩泊まって語り明かし、イエスの最初の弟子になった人でもあります(ヨハネ福音書1:35以下)。

イエスが亡くなった後は(時代は分かりませんが)、北方の布教に努めました。歴史家のエウセビオスは、伝承として、聖アンデレは小アジア(今のトルコ)とスキタイ(黒海周辺)で伝道し、ロシアのヴォルガ川まで行ったと伝えています。

例えば、ロシア原初年代記という1846年にロシア皇帝ニコライ1世の勅命によって編纂された年代記がありますが、この第1巻にロシアの起源が書かれており、冒頭、地理的な説明の直後に聖アンデレによるキエフの丘の祝福のエピソードが書かれています。

ドネプル川はポントス海(黒海)に河口を通って流れ込んでいるが、この黒海は「ルシ(ロシア)の海」と言われ、その海のほとりでペテロの兄弟聖アンデレが布教していた。
 
人々が語ったところによれば、シノピア(シノぺ、スィノプ。黒海南岸のヘレニズム都市。造船と商業の町として繁栄)で聖アンデレが布教をしていた。
 
聖アンデレがケルソネス(コルスニ。クリミア半島の南端にある古代ポリス)に来た。聖アンデレは、ケルソネスの近くにドネプル川の河口があることを知り、ローマへ向かうためにドネプル川の河口にやって来た。そこから彼はドネプル川を通って上流へ向かった。
 
ある山のふもとに至って留まった。翌朝彼は起きて、彼と共にいた弟子たちに「これらの山々が見えるか。これらの山々の上に神の恩寵を輝いているのを。ここに大きな町が興り、神が多くの教会を建立されるであろう」と語った。聖アンデレは、山に登ってこの地を祝福し、十字架を建てて神に祈った。そこには、後に、大都市キエフが興った。 (中略)
 
聖アンデレはローマに滞在した後、シノピアに戻った。
(『ロシア原初年代記』第7節~第9節)

『ロシア原初年代記』第7節~第9節

こういった背景があるため、聖アンデレはルーマニアやロシアの守護聖人とされています。また、他にも聖アンデレはビザンティウムの最初の司教(初代のコンスタンティノープル総主教)とされています。
 
聖アンデレが亡くなったのは、ギリシアのパトラスです。ギリシア共和国第三の都市パトラのことで、南イタリアの(アッピア街道の南の終点の)都市ブリンディシ(ブルンディシウム)との間に船便が通っています。古代ギリシアのヘレニズム都市でもあり、ローマ時代は東地中海世界の国際都市・港湾都市として繁栄した場所です。聖アンデレは、ここで、邪教(キリスト教)布教という罪のために、処刑されました。

処刑されるにあたっては、イエスと同じ形の十字架は畏れ多いという聖アンデレの主張が通り「X」型の十字架にかけられました。「X」の形を「聖アンデレの十字架(聖アンデレ・クロス)」というのは、そのためです。しかし、今では聖アンデレはギリシアの守護聖人でもあります。

聖アンデレという名前がギリシア系だという指摘があります。ローマ法王ベネディクト16世の講話でも「アンデレについてのまず印象的な特徴は、その名前です。アンデレという名前は、予想に反してヘブライ語ではなく、ギリシア語です。それはアンデレの家族がある意味で文化に開かれていたことを示す、無視できないしるしです。ガリラヤでは、ギリシア語とギリシア文化が豊かなしかたで存在していました」と指摘されています(ローマ法王ベネディクト16世『使徒』(ペトロ文庫)p.84)。
 
聖アンデレはまた、スコットランドの守護聖人でもあります。伝説では8世紀に、レギュラスという修道士が、天使から啓示を受け、聖アンデレの遺骨の一部をもってスコットランドにやってきたそうです。その時、ちょうどスコットランドはイングランドと交戦中でしたが、スコットランド王ハンガスの夢の中に聖アンデレが現れ、勝利を約束したそうです。戦闘中に突然、聖アンデレの十字架(X)の形をした白雲が青空に浮かび上がり、スコットランド軍が勢いづいて、イングランド軍を撃破。それ以来、聖アンデレはスコットランドの守護聖人になりました。スコットランドの旗も、青空に浮かぶX型の白雲を描いています。(イギリスの国旗の中に含まれている白いXは、聖アンデレの十字架を著しています。)
 
ローマ教会と東方教会では11月30日を聖アンデレの日としていますが、これはスコットランドのナショナル・デーでもあります。


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